陸拾肆話.試験(下)
「くそっ、シャーノ、今どこから撃たれてる!?」
「右斜め後ろ、5時の方向......?」
「そこで疑問系にならないでくれ!」
「だってさっきとけいっていうの知ったばかりなんだよ!」
俺とシャーノは今、ある作戦をしようと準備をしていたのだが、少し時間がかかる作業のため囲まれて攻撃を受けそうになってしまった。
だが、そのおかげで分かったことがある。
1つ、相手の3人は覆面をつけていてしかも全く同じ服を着ているので攻撃されるまで見分けがつかない。
2つ、相手の3人の攻撃手段は、魔法、弓と投擲、剣と小さい盾の3種類。
3つ、回復薬のようなものを使われている。
まず、3つ目の回復薬は完全に頭から抜けていた。確かにダメとは言われてないが......まさかおーけーだとは。
そして、2つ目に関しては脅威度にランクをつけさせてもらった。
剣と小さい盾は☆1、ほとんど気にする必要はない。相手は接近するまで俺に攻撃できないが、俺とシャーノにとってはそれを見破るぐらい容易い。
魔法は☆2、少し気をつけなければならない。魔法の人の攻撃は大きく3種類に分けられる。1つ目は本人の攻撃力や体力、移動速度を上げて素手で近づいてくる、もしくは魔法で作った剣を奮ってくる場合。これは剣と小さい盾と同じ理由で気にする必要はない。2つ目は俺に火の球や水の球を飛ばしてくる場合。これも飛んでくるスピードはさほど速くないので避けられるし、連続して飛んでこないことから用意に時間がかかるようだ。3つ目、これが一番厄介だ。それは俺の攻撃力や体力、移動速度を下げてくる場合。これはある程度離れていても使えるようで、最初にかけられた時はかなり驚いた。
そして、最後に弓と投擲が☆3、つまり一番厄介だ。魔法より弱そうに思うが、飛んでくる矢や石のスピードが半端じゃない。魔法に移動速度を下げられたりしていると最悪だ。まず、避けられない。しかも飛んでくる矢には毒が塗ってあることもあるらしく、近くの地面が腐ったりしたのを何回も見た。......本当に殺す気だ。
幸い、俺のしている作業は走り回ることが主な内容なので、追いかけ回されながらもなんとか行えている。そして、もうすぐ、その作業も終わる。
「シャーノ、あと何個だ?」
「4つなんだよ!」
「りょーかいっと。」
あと4つ、魔石を走りながら置いていく。
「これで全部か?」
「そうなんだよ!」
「わかった!じゃあとりあえず、一旦隠れよう。」
「うん!」
俺は水を霧のようにばら撒き、視覚を悪くする。そして、走っていた足を少しずつゆっくりにしていき、足音を立てないような移動へシフトした。
次第に弓や魔法の攻撃が止み、後ろの方で熱を感じた。おそらくだが、霧を晴らそうとしているのだろう。じゃあ、霧が晴れる前に終わらせようかな。
「シャーノ、結界をよろしく!」
「了解なんだよ!」
シャーノは僕の周りに結界を作った。これで、ちょっとやそっとでは僕は安全だな。よし、始めよう。
俺はこのイマージナリーフィールドの隅々にだいたい1メートル感覚で小さい魔石を置いてまわった。魔石にはある特性がある。それは近くの魔力を少しだけ引き寄せるというものだ。それがこのフィールド全体に存在している。ということは、これは魔力を通す導線の働きをする。
結界を張ってもらったのは俺自身が巻き込まれないようにするため。つまり、今の状況なら......思いっきり魔法が使える。
俺は炎を起こすだけの小さな魔法を放った。それだけで、いろんなところから火の手が上がる。しかも、ここは森をモチーフにしたイマージナリーフィールドなので、もちろん周りの木にも燃え移る。
「さて、これで終わりかな。」
結界ごしに熱が伝わってくる。外を見回すと、動く影は見えないが、一応念のためという言葉がある。しばらくここで待とう。
『試験合格です。おめでとうございます。』
お、終わったらしい。合格か、良かったな。
『では、すぐに元の場所に戻るので少しお待ちください。』
しばらく待っていると、いつのまにか転移した魔方陣の部屋に立っていた。
「試験合格おめでとうございます、なかなかにエグいことおやりになりますね......。」
と、開口一番メイさんに引き気味の声で言われてしまった。
「すいません、あれ以外に勝つ方法が思い浮かばなかったもので......。」
「あ、いいんですよ、むしろ回復アイテム無しで合格出来たことを誇ってください。おそらく、今までで初めての出来事だと思います。」
......それはつまり回復アイテムを持ってこなかった馬鹿は俺だけだ、と。
なんかそう聞くと誇るっていうより恥ずかしいな。
「なんにせよ、試験は合格です。おめでとうございます、こちら特別冒険者の認定証になります。」
「ありがとうございます。」
「そして、こちらが特別冒険者についての説明が書かれた本になります。受け取ってください。」
「はい。」
「では、我々は仕事があるのでこれで......」
「あ、はい、分かりました。」
なんだろう、微妙に避けられているような?
後日、ギルドで女性職員3人を丸焼きにした小さい男の子の噂が広まった。




