伍拾質話.特殊属性
「......。」
「......。」
ゲイルさんの宿に帰って来るまで、俺とシャーノは一言も喋らなかった。
なんとなく、そんな雰囲気になっていた。
「フーカ、助けたいの?」
宿のベッドに腰掛けた俺にシャーノがそう呟いた。
「あぁ。」
「“血の民”があんなに危険な組織だと分かっても?」
「あぁ。」
「メルト......死んじゃうかもしれないんだよ?」
「それでも......。」
「彼女は......メルトが命を賭ける理由になるの?」
「それは......」
それは、答えられない。ただ、同じ異世界人ってだけ。ただ、同じ元実験体ってだけ。共通点なゆてそんなものだ。
「答えられないんだね?」
「......。」
「そう。」
今日はなぜか、シャーノが大人びて見える。それほど、俺が精神的に参ってるということか。
「......メルト!」
その時、シャーノが急に大きな声を出した。
「なんだ?」
「もっと、もっと、強くなろ?」
「強く............?」
「うん、メルトには強くなれる可能性があるんだよ!」
「強くなる可能性?」
強化魔法を片っ端から限界まで使えるようにするとか?
「そうなんだよ!メルトにはまだ......共鳴属性が残ってる。」
そういえば、クローフィーも特殊属性を使っていたな。
「特殊属性を完璧に使えれば、かなりの強さが手に入るんだよ!」
「......どうやったら使えるようになるんだよ。」
確か、前に同じ特殊属性を使える人に教えてもらうとか言ってた気がするな......今から共鳴属性を使える人を探せばいいのか?
「特殊属性を使うようになる手段は2つあるんだよ!1つは同じ特殊属性を使う人に教えてもらう。そして、もう1つは......」
「魔王の書庫に行くこと、だよ!」
どういうことだ。
「魔王の書庫?」
「そうなんだよ!ここにある“解放の書”を使えば、特殊属性を使えるようになる。」
そうは言ったって。魔王って、ゲームだとラスボスだろ?そんなやつの書庫に入る方法なんか、あるのか?
「あ、魔王様は誤解はされやすいけど、いい人なんだよ!魔王城に行けば、書庫にも入らせてくれると思うんだよ!」
「え?」
あれ?魔王ってそんなにフランクなのか?
「魔王城ってどこにあるんだ?」
少し希望が見えてきた。あんな力が使えれば、俺も“血の民”に対抗できるかもしれない。
「ここから5年ぐらい歩いたところなんだよ!」
「は?」
なんだよ、それ。絶対間に合わないじゃないか。
「大丈夫なんだよ!裏技があるんだよ!」
「裏技?」
「ギルドで転移魔法を使わせて貰えばいいんだよ!」
「ギルドの、転移魔法?」
「そうなんだよ!全てのギルドには魔王城近くのギルドに転移できる魔法陣が設置してあるんだよ!それを使えば、すぐに着くんだよ!」
希望が、見えた。
「どうやったらそれが使えるんだ!」
「ギルドの特別冒険者になればいいんだよ!」
「特別冒険者?」
なんだそれ?
「特別冒険者っていうのは、ギルド直轄の冒険者のことなんだよ!報酬は普通の冒険者の半分しかないけどランク制度があって、ランクが上がれば名誉が得られるんだよ!」
名誉?それが?
「名誉があればいい仕事が出来たり、ある程度の融通をギルドが利かせてくれるんだよ!」
なるほど、つまり、弱肉強食の出世道みたいな感じか?
「......わかった、シャーノ。明日、ギルドに行って、その特別冒険者になろう。」
「それは無理なんだよ!」
「なぜだ。」
「試験があるんだよ!今のメルトじゃ、絶対に合格出来ないんだよ!」
また、希望が小さくなった気がした。




