伍拾陸話、もしくは番外編質話.魔王
「死にたいなら相手してあげるけど〜、コノも下手に殺しちゃうとミチビキに怒られちゃうからさ〜、ねぇ〜?」
「くっ!すまないフウカ!」
罪悪感が込み上げる。だが、私はこの子......ココロを死なせるわけにはいかないんだ!
「ここまで、くれば......」
コトノハと名乗る少女は化け物じみている。あの不可視の攻撃、そして体の動き。まるで人を象った兵器のようだ。
「ヨシ......キ............?」
ふと、私のお腹ほどまでしかない少女を抱きしめる。あそこを無事で乗り切れたのは、良かった。
本当に良かったのか?
乗り切れたんじゃない。このために犠牲になった子を忘れたわけじゃないだろう?
「それでも......私は......!」
そうだ、犠牲があったからこそ。犠牲を出してしまったからこそ。私はココロを正しく導かなければならないんだ。
「......歩くか。」
私はココロを抱き抱えて歩く。今は、どこかの街を目指そう。
「何者だ。」
「え?」
辺りを見渡す。
「何者だ、と聞いている。」
声は聞こえども、姿は見えない。ココロが私の腕の中で震えている。
「私はヨシキ。訳あって今は何も持っていない。」
盗賊の類ならこれで引いてくれるかもしれない。
「何も......?もしや、迷い人か?」
迷い人......あぁ、そんな風に設定したと聞いたな。
「......そうだ。」
「ふむ、なら仕方あるまい。」
その声と同時に目の前に大柄な男が現れた。
「我は魔王エルメナ。そなたはヨシキと言ったか。その腕におる子の名は?」
「彼女は......」
魔王だと?そんなものを設定したとは聞いてないぞ?ここで過度に情報を明かす訳にもいかないし......
「あぁ、安心してくれていいぞ。我に無抵抗な者を殺す趣味はないのでな。」
「彼女の名前はココロだ。」
「ふむ、ヨシキとココロか。迷い人で間違いないのだな?」
「あぁ。」
エルメナは少し考えるような素振りを見せて、提案した。
「そなたら、我の城へ来ないか?」
「......え?」
「気に入ったのでな。もちろん断ってくれても構わない。」
......考えろ。今は金になるような物はほとんどない。そしてこの状況だ。最悪、魔物に襲われて死んでしまうかもしれない。そうなるくらいなら......
「では、付いて行こう。よろしく頼む、エルメナ。」
「ふふ、我をそんな風に呼ぶのはそなたが初めてだ。歓迎しよう、付いてくるがいい。」




