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魔法使いメルトの物語  作者: 奈々宮 紬
夢再生の魔法使い
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伍拾伍話.惨状

痛い。体のあちこちが痛む。


幸い、思考が出来ないほど重症ではないらしい。


なぜ痛い?

ー戦ったからだ


誰と?

ークローフィー......


そうだ、戦いの途中でクローフィーが俺に触れた瞬間、大爆発が起きたんだ。


そういえば、目が開いていない。早く起きてみんなを助けないと......。


「......っ!」


ゆっくり目を開ける。すると、そこは大惨事としか言えないほど酷い景色が広がっていた。


建物があった場所はただの瓦礫の山となり、庭に生えていた植物は消し飛んでいる。そして、ちらほらと見えるのは......人!早く助けないとっ!


「ぐっ......」


立とうと力を入れると、全身が痛みでいっぱいになった。


「くそっ!」


自分の後ろが壁になっていることに気がつき、それを支えにしながらなんとか立ち上がった。


「無理しないで!」


その時、叫び声が聞こえた。


「メルトが死んじゃったら私は......私は......!」

「シャーノ、か。」


見知った顔と声の正体に気がつき、彼女がいる方へ歩こうとした。だが、痛みで動くこともままならず、また座り込んでしまった。


「本当に無理しないでよ!......っ...」


叫び声に嗚咽も混ざり始めた。


「メルトが死んじゃったら、また独りぼっちなんだよ?独りぼっちは......嫌だよぅ......うぅ......」


シャーノの顔に大粒の涙が流れる。心配だったんだろう。俺に抱きついてきた。


「シャーノ、痛いって。」


笑顔で背中を撫でてみた。


「ご、ごめんなさい。」

「いや、いいんだ。こんな時で悪いが、頼みを聞いてくれないか?」

「何......?」

「俺たちに治癒魔法をかけて欲しい。死んでこそいないが、まともに動けないからな。」

「分かった。」


シャーノが目を瞑ると、体が温かくなって、途端に体が軽くなった。


「一応、応急処置をしたんだよ......でも、まだ本調子じゃないから無理だけはしないで欲しいんだよ。」

「あぁ、分かってる。」


シャーノの魔法との力もあって、屋敷の使用人と伯爵本人、合わせて8人を助けることが出来た。だがそれでも、3人は間に合わなかった。このことを伯爵に伝えると、


「......そうか。」


と、一言返しただけだったが、とても悲しそうな目をした。


「本当にごめんなさい。俺が戦闘なんてしてしまったから......。」

「いいんだ。今回の件は君に少しの非もない。悪いのは“血の民”だけだ。」


伯爵は自分に言い聞かせるように呟いた。


「フーカは助かったか?」

「あぁフーカは......フーカ?え?」


辺りを見渡す。が、生き残った人にも亡くなった人にもそんな子供はいなかったような......


「伯爵、使用人は全員で何人ですか?」

「フーカを合わせて11人のはずだ。」


生き残った人は8人。亡くなったのは3人。合計11人。そこから伯爵本人を引くから......


「1人足りない......」


足りない1人はフーカに間違いない。


「探さないと......ぐっ...。」


また全身に痛みが走る。


「魔法の効果が切れ始めたんだよ!痛みを感じにくくしてたから......」

「シャーノ!もう一回かけてくれ!」

「それは無理なんだよ。この魔法は1日に1回が限度なんだよ。これを守らないと、感覚器官が麻痺して取り返しがつかないことに......。」

「それでもっ!」

「絶対にダメなんだよ。」


くそっ、じゃあどうしたら......


「メルト、今のは......。」

「今のって......あ」


シャーノは他の人には見えないんだっけ......?


「......俺を助けてくれる精霊と話していたんです。」


この際だ。正直に言おう。


「精霊が見えるのか?」

「はい。」


伯爵は少し驚いた顔をしたが、すぐに戻り、


「......そうか。」


また、そう一言だけ呟いた。


そして、俺も少し冷静になった。まず、フーカは何故いないのか、それを考えよう。


爆風で飛ばされたのか?それとも自分で動いた?その他には......連れ去られた?


心臓がドクンと跳ねる。


ちょっと待て。そういえばここにはクローフィーを含めた“血の民”のメンバーもいない。そして、フーカもいない。“血の民”は異世界人に対して研究している。そして、フーカは異世界人だ。


そして、俺の中で最悪の結論が出た。


「もしかして、フーカは“血の民”に......。」

「まさか!」


冷静な顔をしていた伯爵もこの時ばかりは目を見開いた。


「爆発に紛れて連れさられた?クローフィーを上手く利用したということか......?ということはやつらは最初からフーカが異世界人だと分かっていて......。」


伯爵が小さい声で何かを言い続けている。


「メルト、助けてもらって悪いが今日は帰ってくれないか?」

「え......?」

「大丈夫だ。幸い、私は立てる程度には軽傷で済んだ。後処理も自警団に依頼する。」

「でも......。」

「私を信用してくれ。」

「......はい、分かりました。」


ここで伯爵のいうことを聞かないということは伯爵が信用できないということと同義だ。一旦、言うことを聞こう。


「今日は迷惑をかけた。すまなかったな......。」

「こちらこそ、ご迷惑をおかけしました。」


俺とシャーノは伯爵に一礼して、伯爵の邸宅の跡地を去る。


「あ、これ......。」


伯爵の庭だった場所には“聖光の杖”が落ちていた。あれだけの爆発があったと言うのに、“聖光の杖”は無傷だった。

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