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魔法使いメルトの物語  作者: 奈々宮 紬
夢再生の魔法使い
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肆拾玖話.クローフィー

「どうかな?私の家の食事は。」

「はい、とても美味しいです。」


お世辞ではない。はっきり言って見た目はそれほど豪華そうには見えないんだが、味は逸品だ。


俺は伯爵の家で昼飯を貰っている。フーカに誘われたので伯爵に聞いてみると快く了承してくれた。


「フーカは一緒ではないんですか?」

「うむ。彼女は一応私の使用人だからな。食事を一緒にしていると他の貴族から舐められてしまうんだよ。私としてはみんな一緒の食卓も悪くないと思っているんだがね。」


伯爵は困ったような笑みを浮かべた。なるほど、貴族には色々あるんだな。


「今日は食事まで貰ってしまって、ありがとうございました。」

「いいんだよ。私が見ていた限りではあんなに楽しそうなフーカは今日が初めてなんでな。私としてはそれだけで十分だ。」


楽しい時間ほど早く過ぎ去るというもので。伯爵と少し話をしたと思ったらご飯を食べ終えてしまった。フーカは結局、最初から最後まで俺たちの方を見ていただけだったが、終始笑顔だった。


「では、これで帰ります。」

「うむ。何かあればここに来い。相談ぐらいなら聞いてやる。」

「......!ありがとうございます!」


もしかしたら、僕はとても大きな権力を味方につけたのかもしれない。


最後にもう一度伯爵に礼をした後、俺は屋敷を後にする......しようとした。



「出てきたぞ。」

「了解。」



何か嫌な予感がして俺はしゃがみ込んだ。すると、さっきまで俺の体があった場所に何かが飛んできた。


「ふん、これを躱されるか。どうも情報よりめんどくさいらしい。」

「誰だっ!」


現れたのは猟銃のようなものを持った筋肉がムキムキで大柄な......銃よりハンマーとかを使いそうな男。


「教えてやる義理もないな。」

「くっ!」


俺は男の足元に炎の球を3つほど飛ばす。


「おっと、危ねぇ。なかなかなもんだな。」


男が体勢を崩した瞬間、緩めず強風を発生させた。足元の火は風に煽られ......男に火がつく。


「あっつ、ってマジか、お前、化け物だな。どんな能力を貰ったんだか。」


男は体に火が付いているというのにとても冷静だった。


「化け物には化け物に限るな。おい、36番!出番だ!」


男は火をつけたまま、何か叫んだ。もちろんこちらも待ってやるつもりはない。容赦なく火の球を男に飛ばす。


その時。


「......消えた?」

「呼応属性魔法だよ。特殊属性を見るのは初めて?」


男の後ろからゆっくり歩いてきたのは黒い髪を腰ほどまで伸ばした、俺と同じくらいの歳で着物を着た女の子。


「なぜあいつの味方をする?」

「んー、その方が後々便利だから?」


は?


「どういうことだ。」

「教える義理はないってやつだよ。」


身長は俺と同じくらいなのに、隙が無さすぎる。誰なんだ、こいつは......。


「君の名前はメルト、で合ってるよね?」

「......名乗るなら自分からじゃないか?」

「あ、それもそうだねー、私の名前はクローフィー。君の名前は?」

「メルトだ。」

「ふふっ、やっぱり合ってた♪」


この女、何がしたいんだ?掴み所がないというか......。


「ま、頼まれたし、戦おっか。」

「は?」

「いやいや、戦いの......続きだよっ!」

「くっ!」


クローフィーと名乗った女が一瞬消えたかと思うと、一瞬で俺の前に現れた。なんとか一歩下がって距離を取ったが......このままでは、すぐに負ける......


「メルト!どうした......の............。」

「フーカ、来るな!」


その時、屋敷の扉が開き、さっき別れたばかりのフーカと伯爵が現れた。


「どういうことだ!」

「俺にも分かりません!ですが、危険です、逃げてください!」


伯爵にも呼びかけた。が、伯爵も混乱しているようだ。


「邪魔が入っちゃったかな?」

「くそっ!」


クローフィーは少し首を傾けて考えた後、


「ま、いっか!」


と、一言そう呟いた。


「大丈夫、殺しはしないから。」


大丈夫なようには聞こえないな。


「どうして俺を狙う!」


少しでも、時間を稼いで助けが来るまで耐えないと......!


「そんなの簡単だよ?」


クローフィーは笑顔で答えた。


「メルトが、“異世界人”で、私が“血の民”だから。」

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