肆拾捌話.忍び寄る影
「......。」
「おら!ボケっとすんな!」
「うるさいなぁ。」
前線。それは異世界人を拉致する部隊のこと。そして、血の民の中で最も危険な場所。
「今回の目標はそこの宿にいる“メルト”という小僧だ。ただ、あの宿は......侵入出来ない。だから警戒が手薄になるまで尾行しろ。それがお前に課された命令だ。」
「わかったよ。」
メルト......メルトって言われても顔が分かんないようじゃ捕まえられなくないかな?
「メルトをどう判別すればいいの?」
「......あの宿に寝泊まりしてる小僧はそいつだけだ。あそこから出てきたお前ぐらいの男をつけろよ。俺はバレないように戻るからな。」
「はーい。」
バレないように、というのは嘘だ。要は厄介ごとは新人に押し付けて自分は楽な作業をしよう、というやつだと思う。
そして3時間後。
......小僧......小僧......あ、彼かな?確か少年は彼だけって言ってたし......つけてみよーっと。
「なんでこんなところに......。」
ローシュ邸なんて聞いてないよ。こんな警備が頑丈なところを襲撃なんて無理だよね。
“ローシュ邸に入っていったんだけど”
“もう奴が守っていたか。だが、安心しろ。奴の屋敷の中はもう隅から隅まで調べ尽くしている。そこでしばらく待機しておけ、前線の部隊を連れて行くからな”
まじかぁ。ここを襲撃なんて......頭が悪いのかな?
「よし、これで全員だな。」
前線の部隊の隊員は私を含めて全部で6人。それと隊長。この7人でこの屋敷に侵入するみたい。
「じゃあ、目標が外に出るまで待機だ。分かったな?」
「はーい。」
あ、さすがに建物の中に居るうちは襲撃しないんだ。まぁ、懸命な判断だよね。




