肆拾質話、もしくは番外編伍話.メルトとの会話
「うむ、では私は席を外そう。」
やっとこの時が来た。メルトと会話する機会。この時に聞きたいことがある。
ご主人様が部屋を出てすぐ、私はメルトに話しかける。
「今日は1人なんですね。」
「ん?それはどういう......。」
「シャーノという女の子はご一緒じゃないんですね。」
「あー、シャーノとは今日は別行動だな。」
早速会話が途切れる。今まであんまり人と話したことないからこういう時どうすればいいのか分からない。
「あ、あの!聞きたいことがあるんですが......。」
「ん?何だ?」
年が近そうということもあって相手も完全に敬語をといてくれている。今なら、聞けるよね。
「“ナミ”という名前や“ヨシキ”という名前、“サザナミ”という名前に聞き覚えはありませんか?」
一瞬の沈黙。でも、私にはそれは永遠のように感じられて。
「知らないな。」
期待はずれの返答に落胆するまでは息すらできなかった。
「......そうですか。ちなみにメルトさんはどうやってこの世界に来たんですか?」
「研究所に居たはずなんだが、気づいたらこの世界に居たな。」
研究所!?もしかして......!
「もしかして、実験体、だったんですか?」
「ちょっと待てなんでそんな言葉を知っているんだ!?」
メルトが明らかに動揺し、席を立った。
「私も、そうだったから......。」
「......そうか。」
まだ同じ施設出身と分かった訳でもないし、そもそも同じ世界から来たと分かった訳でもないのに、私は妙な一体感を感じた。
「......。」
再び流れる沈黙。それを破ったのは、メルトだった。
「......前の世界のことじゃなくて、今のフーカの話を聞かせてくれないか?」
今の......私......?
「メイドのお仕事のお話ですか?」
「それも含めて全部、だな。あー、もちろん言いたくなければ言わなくてもいいが......。」
別に言いたくないわけじゃないから、いっか。
「分かりました。まず、私は......。」
それからメルトに私のこの世界での出来事を話した。ヨシキにこの世界へ連れてきてもらった事、ヨシキと一緒に居た女の子とは何者かの攻撃によって離れ離れになってしまった事。ご主人様に拾ってもらった事。そして、今のメイドのお仕事の内容。
「......大変だったんだな。」
私の話を聞き終えると、メルトは一言だけ呟いた。でも、その一言は私の言葉を受け止めていることがよく分かるものだった。
なぜか、涙が零れそうになる。でも、お客様の前で涙を零すわけにはいかない。私は涙と、心の中の何かをグッと堪え、メルトへ話しかける。
「今のメルトも、教えてくれませんか?」
今の私だけじゃなくて、今のメルト。単純に彼が知りたかった。
「あぁ、いいぞ。」
メルトから聞かされた話は興味を惹かれた。シャーノとの出会い、そして、今までの生活。
「まぁ、こんなもんだな。」
「ありがとうございました。」
ふと時計を見ると、もうお昼時だ。
「ご飯、召し上がりますか?」
「いいのか?」
「おそらく大丈夫かと。」
なんとなく、まだ居たいって思った。ただ、それだけだった。




