肆拾弍話、もしくは番外編肆話.物語の鍵
「まず所作のチェックからね。」
「はい。」
「ご主人様を迎える時は?」
「お帰りなさいませ、ご主人様。」
私はそういいながらペコリと深くお辞儀をする。
なぜこんなことをしているか。それは私はここのメイド、使用人として雇われることになったからだ。
「うん、だいたい全部完璧ね。明日から仕事が出来そうだわ。」
「ありがとうございます。」
ミースは私の教育係として1ヶ月、礼儀から家事まで様子を見てくれた。その間の給金は要らないと言ったのだが、ご主人様に教育を受けるのも仕事のうちだと言われて少しながらお金は頂いてしまった。そして、ようやく、明日から正式に使用人として使って頂けることになった。
使用人の朝は早い。
私はまだ子供だからと他の人たちより2時間ほど遅い起床だが、それでも6時だ。
朝起きると、すぐに服に着替えて6時半までに朝食を急いで済ませる。食事はご主人様の後に取るものだと思っていたので意外だった。
食事を終えると、7時にご主人様を起こしに行く前に食堂のテーブルや椅子の掃除をしておく。
7時にご主人様を起こしてだいたい8時ごろまで食堂の家事の手伝い。
8時からメイド長のフランという60歳くらいの女性の指示に従いながら家事をこなす。
昼からもだいたい同じ流れだ。ご主人様より先に手早く食事を済ませ、ご主人様の食事の世話をし、そしてまた家事雑事をこなす。そして、夜の9時に就寝だ。
始めたての頃は何かにミスすることも多かったが、数をこなすにつれて慣れていき__
メイドとして正式に働き始めてから4ヶ月以上経った今ではだいたいのことはそつなくこなせるようになった。
ご主人様の世話から客人対応、資料整理、庭の手入れまで、かなり手早く出来る。ミースやフランからも褒めてもらえた。
そして、ある日。お屋敷の前に不思議な少年と少女を見つけた。
「絶対にこの場所じゃないとダメなのか?離れているが他の場所でも大丈夫とかは......」
「絶対にここじゃないとダメなんだよ!」
なんか分からないけど、ここに入りたいのかな?
「こっそり入る......?」
「いや、それはない。」
やっぱり入りたいみたい。
「あの......?御用でしょうか?」
恐る恐る声をかける。
「いや、何でもない。失礼だったな。」
「メルト!今のは頼み込んでみた方が良かったと思うんだよ!」
「......シャーノは黙ってろ。」
でも入りたそうに見えるけどなぁ。
特に後ろにいる女の子は。
「ま、まぁ、本当に何でもない。ちょっと屋敷の中を覗いてただけだ。」
なんでこの男の子はそんなに頑なに断るんだろう?
「後ろにいる子は入りたそうなのに貴方は入りたくないんですか?」
ふと湧いた疑問を口に出す。
「ちょっと待て、後ろにいる女の子って......」
「私のこと!?」
え、その子以外に誰も居ないよね?
「そう......ですけど......??」
2人は驚いた顔をしている。なんか変なこと言ったかな?
「貴女、私が見えるの!?」
「はい、しっかりと見えてますよ?」
「い、いや、ちょっと待ってくれ、こいつは精霊で俺以外の誰も見ることが出来ないって......」
「そう言われましても、ちゃんと見えてますよ?」
「えーーー!?」
話がよく分からないなぁ?そもそも精霊なんて存在信用出来ないし......。
「何の騒ぎかな?フーカ。」
あ、ちょっとうるさくしたからご主人様が出てきてしまった。
「はい、ご主人様。この2人がお屋敷の中を見たいと申し上げております。」
ちょっと怒られちゃうかな?
「2人?1人しか居ないではないか。」
よかった、怒られはしなさそう。......でも、ご主人様は1人しか見えてない?
「あの、ローシュ伯爵様ですか?」
「うむ、私が国王から伯爵の地位を賜ったローシュだ。」
ご主人様はそういうと、少し笑顔になって
「少年、いい顔をしているな。少し上がっていくといい。フーカ、彼を応接間に案内しなさい。」
と、言った。
「はい、分かりましたご主人様。」
ご主人様がお屋敷の中に戻ったのを確認してから
「お2人をご案内致します。こちらへどうぞ。」
「......入っていいってこと?」
「はい、もちろんです。」
「ありがとうなんだよ!フーカ?」
「はい、フーカであってます。付いてきてください。」
彼らを応接間に案内した。
「では、ここでゆっくりして下さい。じきにご主人様がいらっしゃいます。」
これで、私の仕事は終了。ちょっとあの子たちは気になるけど......あとでご主人様に聞いてみよう。
しばらくして、2人は応接間を後にし、庭へ向かった。そして、部屋に戻ろうとしているご主人様に
「何の話をしていたのですか?」
と聞いてみた。
「どうやらあの少年はフーカと同類らしい。」
「......異世界人ってことですか?」
「そうだ。まぁ、フーカと同じ世界から来たとは限らないがね。」
私たち以外に異世界人がいるなんて思わなかったなぁ。
「今あの少年......メルトはあるアイテムを作ってるらしい。完成した暁には私に見せに来てくれるらしいからその時にフーカも交えてきっちり話をしよう。」
「分かりました。」
私以外の異世界人かぁ......ますます気になるなぁ。後ろの女の子も。




