肆拾壱話.ある男の向かう先
「ここは......」
何もないただの草原。
「そういえば、そうだったな。」
“夢破壊の審判”と名乗る男に言われたこと。
主人公に近しい者を1人、殺せ
そう言われても。主人公が誰なのかさえ分からない現状、どうしようも出来ない。
「まずは街探しからだな。」
立ち上がろうとすると、自分の腰に巾着のようなものが付いていることに気がつく。
「これは......?」
その中を探ると、1つ紙切れが出てきた。
“餞別だ。ただで依頼をこなして貰う訳にもいかないからな。はした金をこの魔法袋__その世界では容量無限の袋に詰めさせてもらった。何をすればいいのか迷うのであれば、まず冒険者ギルドへ行くといい。”
ご丁寧に“夢破壊の審判”さんは手紙までくれたみたいだな......過保護か。
「っていうか魔法袋、すごいな。」
普通に僕たちの世界にも欲しい代物だ。依頼が終わったら“夢破壊の審判”に聞いてみよっと。
「あとお金お金......あ、あった。」
袋の中を更に探ると、金属質の物が入った場所を見つけた。
「......これではした金なのか?」
この世界の通貨価値はよく分からないが、100フィロと書かれた銀貨が100枚ほど。10フィロと書かれた銅貨も100枚ほど。そして1フィロと書かれた鉄貨は200枚ほどあった。銀貨って結構価値があるものじゃないかな......。
まぁ、それは置いといて、ギルドに行ってみようかな。......いやその前に街を探さないと。さて、どうやって探そうかな......って
「あれ?」
ふと見た先には道らしきもの。これは......街かは分からないが少なくとも人がいる場所には繋がっているよな?
「ここを歩くか。」
よくよく考えたら水も食料もないってヤバい状況だから急がないと......!
「案外近かったな。」
歩いて10分。街らしき建物の群が見えてきた。まぁ、僕に仕事を依頼してきた“夢破壊の審判”がそんなに酷い場所に降ろしたりしないだろうって思ってたけど。
街へはすんなり入れた。......こういうのって厳しい身分チェックがあるもんじゃないのかな?まぁ楽に越したことはないけど。
「あ、ギルドってここか。」
分かりやすく冒険者ギルドと書いてある大きくて白い建物を見つけた。入り口には一応門番らしき男が立っていたが特に何も検査などはされず、すんなり通れた。
「受付に買い取り......あれは酒場か。結構イメージ通りだな。」
せっかくだし、冒険者登録でもしてみるか......ってなんでこんな知識が僕にあるんだよ。イメージ通りっていつイメージしたんだ......また誰かに無理やり覚えさせられたかな。まぁ、いっか。慣れっこだし。
「すいません冒険者登録って出来ますか?」
「はい、出来ますよ。年齢を教えてください。」
えっとだいたい10歳から1年くらい経ったから......
「11歳です。」
「なら大丈夫ですね。この紙に必要事項を記入したください。」
名前:
種族:
年齢:
性別:
出身国:
希望職業:
種族?希望職業?......何だそれ。ま、適当に誤魔化すしかないよな......。
名前:フレン
種族:人
年齢:11
性別:男
出身国:日本
希望職業:魔法使い
「承りました。指紋登録を行うのでこのまましばらくお待ちください。」
いや適当に書いたんだけど、通ったな。......やっぱりガバガバセキュリティー、幾らでも詐称出来そう。
「では、ここに人差し指を置いてください。」
受付の女性はカードらしきものを持ってきた。なるほど、ここに手を置いて指紋登録......っとなんかカードが光った?
「ステータスはキチンと記録されました。今から貴方も冒険者の一員です。ギルドの説明は必要ですか?」
「時間かかりますか?」
「30分ほど取らせて頂きます。」
じゃあ要らないかな。
「では必要ないです。」
「了解しました。では、良き旅を。」
良き旅って言われても主人公を探す旅に良いも悪いもないよな。......さて、せっかくもらったカードをじっくり観察しようか。んーと......あ、なんか数値みたいなのが書いてあるな。
名前:フレン
性別:男
種族:人間
属性:無・共鳴
体力:345/360
魔力:218/245
攻撃力:315
防御力:455
......僕のステータスらしいけど強いのか弱いのか分からないな。これはどれくらい強いんだろう......あ、そうだ。依頼か何かを適当に受けて敵を倒してみよう。
「この“ミスリルゴーレム”ってやつでいいか。」
依頼板なるものを探したが見当たらないので、受付に聞きに行くと、今出されている依頼をいくつか見せてくれた。どうやら依頼板はこのギルドにはないようだな。“ミスリルゴーレム”を選んだ理由は50体討伐と書いてあるし、多分結構沢山いそうだから。場所は......ミスリル洞窟っていうところか。ギルドの壁には馬鹿みたいに大きな地図が貼ってあるし、これを見たら多分分かるよね。
「余裕......」
ミスリル洞窟っていうところに来たのはいいけど、“ミスリルゴーレム”の攻撃は当たっても痛くも痒くもないし、叩いたら即死というなんとも言えない弱さだった。......武器ないことに気づいて焦った気持ちを返せ。それでいて、1体倒すごとに何かよく分からない石が手元に残る。おそらく魔石というやつだろう。楽な仕事だな。
50体をすぐに倒し切ってまたギルドへ舞い戻る。こんな余裕で生き抜ける世界で主人公を助ける必要なんかあるか?
「50個確認致しました。買い取り致しまして、200フィロになります。」
「ありがとうございました。」
ギルドに帰ると、さっきとは違う受付嬢が出迎えてくれた。門番の男も変わっていたし......なんというか超ホワイトだな。この職場。
......っていうか、やっぱり魔法袋に入っているお金、大金のような気がするんだけど。水なんか1フィロで買えたよ......。
「さて、これからどうしようかな。」
主人公を探すためにもまず、宿探しからかな。
と、その時、ギルドの奥から出てきた少年と目が合った。
そして、なんというか、気づいた。多分、彼がこの世界の主人公で、横で浮いている少女がヒロインだ。あっちの少年は一瞬目があった僕には再び目を配ることもなく、そのままギルドを出て行った。
......まず、尾行からだな。




