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魔法使いメルトの物語  作者: 奈々宮 紬
夢干渉の精霊
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参拾伍話.とある精霊の想い

「シャーノ、起きろ。」

「ん......。」

「起きろ」

「......ふぁ〜............。」

「いや今一回起きただろ。」

「ん〜......?メルト......?」


休日を堪能した日の翌日。俺は眠りにつく前のシャーノに言われた通り、シャーノを起こした。


「そうだ。シャーノ、明後日に起こせって言っただろ?今日がその明後日だ。」

「......あぁー、思い出したんだよ......。」


シャーノが眠そうにあくびをする。......そんな起きがけの女の子にめんどくさそうな質問するのは本当に申し訳ないのだが......


「シャーノ、なんで倒れたんだ?」


シャーノは確か“精霊の魔石”を俺に渡したあとくらいに倒れた......眠りに落ちたはずだ。つまり、あれを渡したのが問題なのか......?


「あれは“精霊の魔石”を作ったからなんだよ!“精霊の魔石”は1人の精霊が一生に1回しか作れない特別な石で、魔力を余分に使うから作ったら丸1日は気絶しちゃうんだよ!」

「え?あれってそんなに大切なものだったのか......?」


1人の精霊が一生に一度しか作れないってとても貴重なんじゃないのか......?


「まぁ、私はもう二度と作れないから貴重と言えば貴重かもしれないんだよ!」

「......そんなものを俺が貰っていいのか?」


俺とシャーノはまだ出会って半年ほどだ。そんな俺にシャーノは一生に一度しか出来ないことをしようとしてくれているんだ。......シャーノはそれで本当に満足しているのか?


「私は......ちゃんと、メルトに私の魔石をあげたいと思ってるよ?」


いつもの口調から少し外れたシャーノがそう答える。


「なんで、まだ出会って半年しか無い俺に簡単に渡せるんだよ。」


自分の中で受け入れられなかった事実が少し強めの口調で外へ出てしまう。


「だって、精霊にとって、自分に気づいてくれる存在っていうのは、居てくれるだけでそれ以外の何よりも嬉しいんだよ!」


......そういえば、精霊は一部の人にしか見てもらえないんだったっけ?つまり、そういう人に出会えなかったらずっとひとりぼっちってことか......?


「......。」

「納得してくれた?」

「......。」


言葉が出ない。理由も分からないが、とにかく言葉が出なかった。


「そろそろ分かってくれると助かるんだよ!」


シャーノはもう通常運転だ。理由もなく受け入れずにいる俺だけが黙っている。


「メルトー!」


すると、シャーノがそう言って満面の笑顔になる。そして......


「安心して、欲しいな。」


そう、一言呟いた。


「ありがとうな。」


その一言は意固地になって思考をやめた俺の脳にちゃんと響いて、無意識に答えを促すようだった。


「んーん、どーいたしましてなんだよ!」


後になって考えると、元の仲が悪かったわけではないが、この一件で俺とシャーノはもっと分かり合えたような気がする。

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