参拾参話.主人公の休日
目に入るのは市場の活気と、行き来する人々の元気そうな声。魚屋らしきものもあれば怪しげな道具を売っている店もある。
やっぱりこうしてしっかり休日を楽しむのは久しぶりだな。
朝、目がさめる。横で寝ていたシャーノはまだ起きる様子はない。
「たまには休むのもいいかなぁ。」
この頃シャーノの指示で色々なものを集めていたので休息はとってもしっかりと休日を堪能する日はなかった。シャーノもまだ起きそうにないし、少し外の様子を見に行くか。
シャーノは浮いているが、一応ベッドの真ん中に移動させておく。意味がなくても一応。そして、朝食を食べながらゲイルの娘さんのアンナに掃除は必要ないと伝え、俺は宿の外に出る。
そして、今に至る。
目に入る光景は何もかもが新鮮で、興味を惹かれるものも結構ある。......が、生憎手持ちがないので見るだけだ。
そうして少しの間市場の中をうろうろしていると......
「兄ちゃん、ちょっと来てみないかい?」
急に小さな店を構えていた若い女性に声をかけられる。
「私は占い師をしているのだが、一つ、私の占いを受ける気はないだろうか?」
正直言って占いには興味ない。更に手持ちのお金もないので俺は誤魔化しながら、
「生憎手持ちのお金がないので、お断りさせていただきます。」
当たり障りのない答えを返した。
「いーや、金は取らない。どうだ?」
金は取らない?更に胡散臭くなってきた。ただほど高いものはない......っと。
「いえ、お断りさせて......」
「別に減るもんじゃないんだから〜」
......結局押し切られてしまった。まぁ、こうなったら仕方ない。話半分にでも聞いておくか。
「まず、この水晶に触ってくれ。」
「こうか?」
机の上にあった怪しげな水晶に手を触れる。
「ふーむ、なるほど、あんたの魔力は面白いな波だねぇ。」
魔力で占うのか。手相ならぬ魔力相占いといったところか。
「あんたは変わった人生を送ることになるよ。2年以内に大きな変化が訪れるはずさ。」
変化はこの世界に来ただけでもう十分だ。
「どうしてそんなことが分かるんだ?魔力を見ただけだろ?」
うん、やっぱり俺は占い否定派だわ。
「いーや、私の占いは百発百中さ。というか」
「あんたには2年以内に必ず大きな変化が訪れるさ。これは占いの結果ではなく否応ない事実さ。」
占い師は含み笑いを浮かべながらそう呟く。一瞬、体を悪寒が走った。それほどまでに占い師は冷たい声と目つきをしていた。
「......そうか。分かった参考にするよ。」
「あぁ。」
最後まで占い師は薄気味悪い笑みを浮かべたままだった。......全く、本当に気味が悪い。このことはさっさと忘れよう。
それから俺は宿に戻って昼ご飯を食べ、今度は少しばかりお金を持って再度市場へ出かけた。
午後は誰にも邪魔されず、買い食いしながら自分の見たいものをじっくり見られたのでとても満足した。




