参拾弍話、もしくは番外編参話.取り残された女の子
「んじゃ、コノの仕事は終わりかな〜、じゃ〜ね〜!」
「......え」
なんか、コトノハという子にも置いて行かれた......?
辺りの霧は薄くなったと言ってもなかなか遠くまで見通せるほどではない。人っ子一人として見えないし、声も聞こえない。
「怖いよ......。」
素直な気持ちがいつのまにか声に出てしまう。辺りは真っ白、強いて見えるもの言うなら目の前のドラゴンと草。そんなものがある中で安心なんて出来るはずがなかった。
「......っ...。」
自然と涙が溢れる。それが何によるものかは分からない。ただ、現象として涙が頬を伝っていく。
「生存者はいるかっ!おーい!」
「!」
その時、遠くから小さな声が聞こえる。
「ここ、に、います......!」
「そこにいるのか!?ちょっと待っておれよ!」
少し経って霧の中から現れたのは......
「私の名前はローシュだ。一応、貴族をやっている。君の名前は?」
「フ、フウカ、です......。」
「フーカか。助けに来た、もう安心していいぞ。」
そう言われた途端、何かの線がぷっつりと切れて、意識を失う。
「それほど、怖かったということか......。」
遠くからそんな声が聞こえた気がした。
ドクン、ドクン、ドクン
どこか懐かしい音が聞こえる。
ドクン、ドクン、ドクン
そういえば、私、気絶して......
ドクン、ドクン、ドクン
「っ!」
目がさめると、ベッドに横たわっていた。
「あら、起きたのね?」
ベッドの横の椅子に座っていたのは白いメイド服に身を包んだ30歳くらいの女性。
「......?」
「あぁ、私の名前はミース。ローシュ伯爵に雇われているメイドよ。貴女の名前は確かフーカね?」
「......は、はい、そうです。」
「あら、見た目通りの可愛い声をしてるじゃないの。」
「あ、ありがとうございます?」
それからミースさんから質問勢めに遭った。年齢、出身地、両親の名前、その他にも......。もちろん、他の世界から来た私にそんなものを答えることは出来ず......
「うーん、困ったわねぇ......身寄りが分からないんじゃ身元も特定出来ないし......。少しご主人様と話し合って来るわ。待っててね、フーカちゃん。」
と、ミースさんを困らせてしまった挙句、ご主人様__ローシュ伯爵に相談しに行ってしまった。
しばらくすると、ローシュ伯爵だけが部屋に入ってきた。
「あ、すまない。ノックを忘れていたな。」
「いえ......助けて頂きましたし......。」
「そうは言っても女の子に礼儀を欠いていたのは私だ。すまない。」
「だ、大丈夫です。」
ローシュ伯爵、とてもいい人だなぁ。
「あー、いきなりで悪いが、本題に入らせてもらう。」
「はい。」
「君、いや、フーカ。フーカはもしかして異世界から来たのか?」
「......!」
「その様子だと図星か。」
いつかはバレると思っていたけど、まさか、こんなにすぐにバレるとは思ってなかった。
「あーそんなに警戒しなくていい。フーカが異世界人だからと言って別に私が何かどうこうしようという訳ではない。ただ、異世界人を狙う危険な集団......“血の民”という存在がいてな......。」
それからローシュ伯爵さんに“血の民”のことを聞いた。危険な集団であること。危険な思想を持っていること。そして、私、異世界人の敵であること。
「まぁ、そんなわけで、フーカさえ良ければ私が匿おうと思っているんだが、どうだ?」
「......え?」
「もしここでフーカと別れていつのまにか“血の民”に捕まったりしていたら嫌だからな。私の家、ここに住まないか?あぁ、もちろん体目的とかではないぞ。」
......最後の一文は要らなかった。だけど、危険な存在がいるこの世界で私のことを匿ってくれる存在は貴重だろう。私はその誘いに乗ることにした。
「分かりました。私、ここに住まわせて頂きます。」
「うむ、分かった。......それにしてもフーカは運が悪いな。せっかく異世界に来たのに魔力災害に巻き込まれるなんて......まぁそのおかげで私はフーカを知れたから満足だがね。」
「......?」
「あぁ、すまない。魔力災害の被害者は前後の記憶が消えるんだったな。今の発言は忘れてくれていい。」
魔力災害って、私たちがここに来た時の霧のことなのかな......?私、バッチリ覚えてるんだけどなぁ......。




