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魔法使いメルトの物語  作者: 奈々宮 紬
夢干渉の精霊
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参拾壱話.精霊の魔石

「あとは、“精霊の魔石”だけだな。」

「うん!そうなんだよ!」


“命の泉水”を取った日の午後。ゲイルの宿で俺とシャーノは話し合う。

......ちなみにゲイルの宿は今日で168連泊目。毎日寝床とご飯を提供してもらっている。


それだけ連泊したから分かることだが、この宿の客は極端に少なく、また顔ぶれが変わることもほとんどない。

赤毛で左頬に傷があるガタイのいい男、全体的に華奢だが練習を見る限り鉈の名手である女、老人と老婆の2人組、貴族のようないい着物を着た男、そしてこの前から泊まり始めた俺と同い年くらいの女の子、以上だ。少し前まで他に如何にも悪い魔女のような風貌をした老婆がいたのだが、いつのまにか別の場所に移動したらしい。


「......だから......ってメルト!聞いてるの?」

「あ、悪いシャーノ。聞いてなかったな。」

「人の話はちゃんと聞くんだよ!」

「いやシャーノは人じゃなくて精霊だろ。」

「精霊の話もちゃんと聞くんだよ!」


......珍しくシャーノが怒り顔だ。


「悪かった、ごめんなさい。これでいいか?」

「わかったならいいんだよ!」

「で、なんの話だっけ?」

「“精霊の魔石”の取得方法なんだよ!」

「ふむ、で、どうやって取るんだ?」

「“精霊の魔石”はそのまま、精霊が作り出せる魔石なんだよ!」

「ふむふむ......ってあれ?シャーノって精霊だよな?」

「うん!」

「じゃあ、シャーノが作れるってこと?」

「そうなんだよ!」


シャーノはそう言って少し水色がかかっているがほぼ無色透明の石を取り出す。


「......綺麗だな。」


よく見ると魔石の中はなぜか少しだけ明るく、暗闇なら光源として使えそうなレベルだ。


「......自分の作った魔石が綺麗とか言われたら、恥ずかしいんだよ......。」


シャーノは少し顔を赤くして下を向く。......シャーノの照れ顔なんて初めて見たかも。


「ま、まぁ、とりあえず!これで材料は揃ったよな?」

「うん!そうなんだよ!明後日はギルドの工場(こうば)を借りて“聖光の杖”を作るんだよ!」


やっと、材料が集まったのか。“聖光の杖”までもうすぐだな。


「って、なんで明日じゃなくて明後日なんだ?」

「......メルト、明後日になったら起こして欲しいんだよ。」

「って、おい!」


シャーノはそう言うと、急に床に倒れた......というか床すれすれで浮いている。


大丈夫、息はあるな。気絶しているだけだ。......気絶しているのに床すれすれで浮くとか器用なやつだな。


「まぁ、なんか理由があるんだろうな。」


シャーノは少し勝手に走り始める傾向があるが、間違ったことはしないし、俺に心配をかけさせることもほとんどない。シャーノがこうなったのはなにか理由があるんだろう。また、明後日起こして欲しいと言っていたし、明後日にでも聞いてみようか。

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