弍拾伍話.不老樹
「ここに立って魔力を体から出しながら手紙を開くだけでいいのか?」
「うん!それだけなんだよ!」
俺とシャーノは今、ローシュ伯爵の庭で不老樹の元へ向かう準備をしている。
ローシュ伯爵に事情を話すとすぐに理解してくれ、快く庭での不信行動を許してくれた。ただ、その時、
「その“聖光の杖”というものが完成したら私にも少し見せてくれないかな?」
と、目を輝かせながら言ってきたので、そういうところはあざといと思ったな。
......っていうか“聖光の杖”ってそんなに知られてないものなのか?
「さぁ、早くやっちゃお!」
「っていうか、今思ったんだが、俺がこの転移魔法?を使ったらシャーノと離れ離れになるんじゃないか?」
「大丈夫!私はメルトと協力者の契約を結んでいるから一緒に移動できるよ!」
「......ん?ちょっと待てそれ初耳なんだが?」
「......細かいことは後で話し合おう?今は“不老樹の枝”を取りに行かないと!」
......なんか何かしらとても重要なことを誤魔化されたような気がする。が、とりあえず行ってみるか。
「こんな感じで大丈夫か?」
「うん!いい感じに魔力が出てるよ!あとは手紙を開けば......」
その時、目の前が真っ白になる。
しばらくすると、少しずつ視界が元どおりになっていき、目の前にやたらと目立つ大きな木を見つけた。
「これが不老樹なんだよ!」
シャーノに言われて気づく。そうか、これが不老樹......
不老樹は直径が20メートルはあるかという巨大さで、高さに関しては上が生い茂る葉によって見えないので分からない。
「馬鹿みたいに大きいな。」
こんな感想しか出てこなかった。少し落ち着いてきて、不老樹以外の物も視界に入れる。不老樹の周りには小さな木が所狭しと並んでいる。まぁ小さいと言っても高さは50メートルは超えてそうだが。それらの葉のせいであたりは少し暗く、日光があまり届いていない。ここで俺はあることに気づいた。
「なぁ、シャーノ、こんな大きい木の枝なんてどうやって取るんだ?」
不老樹の周りの木は比較的低いところにも枝が見えるが、不老樹は下から見る限りは枝は確認できない。そして、直径が20メートルはあるかという木だ。枝の大きさも馬鹿にならないだろう。そんな枝をどうやって回収するんだ?
......と思ったが、シャーノは少し不思議そうな顔をして、こう言った。
「??下に落ちてる枝を拾うだけなんだよ?」
「......なるほど。」
下に落ちている枝を拾えばいいのか......確かに見落としていた。いやでも......
「それだと、不老樹のものと不老樹以外のものとで区別がつかなくないか?」
不老樹の枝なのか他の周りにある木の枝なのかは枝だけでは区別がつかないのでは......?
「それも単純なんだよ!不老樹の枝に魔力を流すと、黄色く光るんだよ!」
......もうこの頃魔力がただの便利な道具と成り果ててる気がする。いやまぁ便利な分には文句はないが。
「分かった。じゃあ取り敢えず適当に拾って魔力を流せばいいんだな?」
「うん!そうなんだよ!」
ブツブツ考えているよりも作業する方が速いと思い、早速落ちていた枝を手に取る。魔力を流してみると......何も起こらない。
「外れってことか。」
「そういうことなんだよ!」
じゃあ、これは......これも外れだな。次......これも外れか......。これは......外れだな。
「ちなみにシャーノ、どれくらいの確率とか分かるか?」
「タイミングによってバラバラなんだよ!ただ、平均すると0.1%くらいだと思うんだよ!」
「はぁ?」
また始まったよ、運ゲー。こういうの嫌いなんだけどな......。
結局、最初に“不老樹の枝”を見つけたのはだいたい1時間後、何かに使えるかもと2つ目を探して見つけたのはそれからさらに30分後ぐらいだった。
「じゃあ帰ろ?」
「そうだな......ってどうやって帰るんだ?」
「簡単なんだよ!今メルトが持っている“不老樹からの手紙”を破るだけなんだよ!」
あ、そういえばくしゃくしゃっと丸めてポケットに入れたっけ?
「これを破るだけで元の場所に戻るってことか?」
「ちょっと違うんだよ!元の場所から10キロメートル圏内のどこかに戻るんだよ!」
「......え?」
何それめんどくさい。
......と言っても破る以外に帰る方法はないわけで。
「......破るか。」
「うん!」
どうか、変な場所に戻りませんように!
目の前が真っ白になり、恐る恐る目を開けると......
「草原だな。」
「うん!」
モンスターの一匹すらいない、大草原に放り出された。......いや、よかったよ?何もなくて。




