拾玖話.光龍の巣
「あれ......?おかしいな......」
せっかく光龍の巣が見えたと言うのに、シャーノは思案顔をしている。
俺は上にある光龍の巣をじっくり観察してみる。
別段変なところはない。不思議な点といえば、枝葉を掻き集めてできているように見えるこの巣が光龍とかいういかにも大きな生き物を支えることができるのだろうかということだ。
「シャーノ、どうかしたのか?」
「えっとね......」
シャーノにしては歯切れが悪すぎる。光龍の巣は本来こんな感じじゃないのか?
「何かおかしいのか?」
「......いないの。」
「ん?」
いない?
「光龍の巣なのに、光龍がいないんだよ!」
そういえば確かにそうだな。
「別に巣から出ることくらいあるんじゃないのか?食べ物を取りに行ったりもするだろうし。」
「......光龍は巣から出る時には自分の巣を守るために自分の分身体を置いていくんだよ!だから、巣に何もなくなるということは......」
「ということは?」
「光龍が倒されたってことなんだよ......。」
ん?まぁ、光龍は龍ってついてるくらいなんだから強いんだろうけど、絶対倒さないわけでもないんだろ?
「それが何かおかしいのか?こっちとしては、素材が取りやすくなったって話だろ?」
「光龍は私が聖女として生きていた時代からいる四帝龍の一つで、街どころか国を潰すほどの力があるんだよ!そんな化け物を倒すなんて......はっきり言って化け物なんてレベルじゃない......怪物だよ!」
......こいつそんなにやばい龍だったのか。っていうか、
「じゃあどうやってその龍の巣から素材を取るつもりだったんだ?」
そんなやつと戦っても軽く死ぬ。
「光龍は基本的に温厚な性格で何もしなければ襲ってくることもないんだよ!巣は上の方にあるから下の広場に落ちてきた素材を拾うくらいなら攻撃されないんだよ!」
なるほど。確かに戦う必要がないなら安全とも言えるか。
「まぁ、光龍を倒すような怪物の話なんかここでしていても仕方ないだろ。素材を持って帰らないか?」
「う、うん、そうだね......。」
シャーノは光龍に何かされたことがあるのだろうか。聖女だった時に攻撃されたとかか......?やけに光龍に対して恐怖を感じているように思う。......それこそここで悩んでいても仕方ないな。“光龍の巣片”だけ拾って帰るか。
俺は下に落ちていた巣片を拾い集める。......これが案外多い。持っていた袋が満杯になってしまった。......また今度、収納魔法とかないか聞いてみるか。
そして拾い集めた後、俺はあることに気がついた。
「......シャーノ、もしかして、帰る方法って元来た道を戻る以外にないのか......?」
「うん、そうだよ!来た時と同じように壁を壊しながら戻るんだよ!」
マジか......これは......かなり面倒くさいなぁ......。
「ショートカットルートとかないよな?」
「うん!」
いやそんな笑顔で言われましても。地道に戻るしかないか......。
それから約5時間後。
ある山の中腹に息を切らした少年が横たわっていたという。




