拾質話、もしくは番外編壱話.ある世界にて
ドクン、ドクン
ドクン、ドクン、ドクン
......うるさい
ドクン、ドクン、ドクン
気味が悪いくらいずっと鳴り続ける。この音はなんだろう。
ドクン、ドクン、ドクン
そういえば、私は誰だっけ。
ドクン、ドクン、ドクン
目は開かない。瞼がひたすらに重い。
ドクン、ドクン、ドクン
「やっぱりここかー、怪しいって思ってたんだよねー、あいつ。」
ドクン、ドクン、ドクン
声が聞こえた気がする。
ドクン、ドクン、ドクン
「まぁ、今回は僕の管理も甘かったかなぁ。あんなパッと出にクローン研究情報のアクセス権限を渡しちゃったし......うかつだったなぁ。」
ドクン、ドクン、ドクン
何を言っているのか、全く理解できない。
ドクン、ドクン、ドクン
「ヨシキが居なくなってからいっつもこうだよ。シュウくん......じゃないや、フレンくんにもやすやすと侵入されちゃってたし......。あ、でもあの時はまだヨシキ居たっけ?」
ドクン、ドクン、ド......
ピーーー
「あ、これやばいよね!?どうするんだろう?......えっと......あーもー、分かんない!やってることは兎も角、頭は確かだったからなぁ......もう!サザナミ!全くもう......」
ピーーーーー
意識が遠くなっていく。まぁ、でもいい。どうせ、私はさっき目覚めたばっかりだし......。
「あ!これだ!えーと、緊急延命処理っと!」
ピーーーーー......ドクン
「えーと、うんうん、とりあえず持ち直したね!あとはこっちで処理しよっと。培養カプセルを移動させなくちゃ!」
ドクン、ドクン、ドクン
あれからどのくらい経ったんだろう。私の意識はまた戻る。
今度はあの音も聞こえない。静寂に包まれた世界に私だけが存在する。
瞼を開こうと思いきり力を加えると、あっけなく目は開いた。
「ここは......。」
「あれ?目が覚めた?」
辺りには本棚に囲まれており、その中に私がいるベッドと目の前の女性がいる机と椅子だけがある。
「僕の名前はナミ!一応、この研究所の長をしているんだよねー!」
目の前の女性はナミというようだ。背はかなり低いが、研究所の偉い人みたいだ。
「君も災難だねー......勝手に作られて、さ?フレンくんもたいがいだったけど、君も割と酷いよねー。」
「あの......えっと?」
「あー、怖がらなくていいからさ!今はそこでゆっくりしててよ!」
「あ......はい......ありがとうございます......。」
「うんうん、それでいいんだ。で、目が覚めたところ悪いけど、話を聞いてくれる?君の進退に関するとっても大切な話なんだけど......。」
目の前の女性は明るく、人を引き寄せる何かがあるように思える。......なぜだか、安心もできる。
「話、聞きます......。」
「りょーかいっと、まず、ここは僕の研究所内にある、所長室、要は僕の部屋だね!で、今君はここで匿われているわけだけど......ずっとここに居させる訳にはいかないんだよね......。」
それは、分かってる。ずっとここでお世話になるわけにはいかない。
「あー邪魔って訳じゃなくてさ、実は3日後に政府の監査......怖い人たちがいっぱい来るんだよねー......で、その時に君が見つかると、君は殺されるか、連れて行かれるか......まぁ、碌なことにはならないんだよー......だからさー、別の世界に逃げない?」
よく分からないけど、3日後に怖い人たちがいっぱい来て、私が危ないからどこかに逃げるべきってこと......?死ぬか連れて行かれるか、もしくはどこかで生き延びるか。そんなの......
「......逃げたい。死にたくないよ......。」
「うん、そうだよね。分かった。じゃあ、早速準備しよっか。出来るだけ早い方がいいし、ね?」
「う、うん。」
私、どうなっちゃうんだろう......。




