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5th クマリのサリー / レボリューション2


 最近クマリの様子がおかしい。


 日本でのライブ以降、姿をくらましたムトゥ大佐はともかく、クマリは普段通り生活しているのだが、その言動に異変が生じていた。以前からその兆候は見られたのだが、人の心を見抜いたり、本人しか知り得ない情報を口にしたりするのだ。


 そして以前より美しさが際立ち、今日もインドで二人のオジサンが言い争っている。


「クマリは私の母になってくれるかもしれなかった女性だ! 正直オギャリたい!」


「エゴだよそれは! バブみ感じてるんじゃねえよ!」


「せっかく日本に行ったんだ、東京を見物してサムライとかショーグンが見たかった!」


「江戸だよそれは! 大政奉還の前じゃない!」


「ふざけるな! たかが黒船一つ、尊王攘夷で押し出してやる!」


 妙に幕末の日本史に詳しいのはともかく、言ってることは支離滅裂だ。騒ぎを聞きつけ群衆が集まると、当然のように踊り出す。そこにヒロインが現れて、センターに立つのも既定路線。


 クマリを中心に、髭のオジサンが左右に分かれて歌いだす。そこに理由や理屈は無い。



 カンポポ カンポ ポカポポ カンポ

 カンポポ カンポ ポカポポ カンポ


♪「クマリ聞いてくれ、クマリ。私の母になってくれ」


  「冷静になって考えて、自分の年齢考えて」


 「クマリ聞いてくれ、クマリ。コイツより俺はマシさ」


  「二人の違いがつかないの、見た目も心も同じなの」


 カンポポ カンポ ポカポポ カンポ

 カンポポ カンポ ポカカカカカカカ……



 なんだかんだで三人は、仲良く楽しくすごしている。時折タブラの奏者を招いて、ライブなども行っているそうだ。


「パオーン」

「パオーン」


◇◇◇



老街味道 东街店


2026/08訪問 | 1回目

★★★★☆ 4.1 ¥200~¥1,500 / 1人



中国屈指の電脳都市、臨江の下町に、絶品の中国料理店があると聞き、小生はX(旧Twitter)で仲間を募って中国に向かうこととした。しかし人が集まらない。それは誰も本場中国料理に興味がなかったからなのか、フォロワー3人の自分自身に問題があったのか。


ちなみに小生のフォロワー内訳は父と母、そしてペットのミケである。なお、ミケのフォロワーは20万人を超え、日々あざとい写真や動画を投稿しては、その投げ銭による収益で家計を支えている。


せめてお前も餌代は稼げと母に詰められ、小生も同じようにあざとい画像や動画を投稿したが、二度もアカウントがロックされ、心が折れてしまった。なぜネコと同じ行動が人間には許されないのか。どちらも全裸であることに何の違いがあるというのか。


余談が過ぎた、話を戻そう。


数か月の船旅を終え、ようやく中国本土に着いた小生は、中国海警局より厳しい尋問を受けた。確かに密入国だったのは事実だが、航路を間違えマダガスカルで何ヶ月も身動きできなかった事情は汲んで欲しかった。彼らには血も涙もないのか。


日本大使館の協力を得て解放された小生は、本来の目的であった臨江の料理店へ。そこは下町でありながらも衛生的でこざっぱりしていた。それでは噂に聞く「炒飯」を注文するとしよう。教養をひけらかすようで恥ずかしいが、小生は中国語で注文する。


「にいはお。ちゃーはん、ワン、ワンぷりーず、ワンいずのっとドッグ」


「日本語で注文できますよ」


「……炒飯一つください」


翡翠色の髪留めをした女性店員が、小生のオーダーを聞いて厨房に入る。店主は別にいるようだが、彼女自身も鍋を振るうらしい。暫し待つこと数分、小生のテーブルにさきほどの女性店員が湯気の立つ炒飯を置いた。


「久等了、大份炒饭来了!」


何を言ったのかわからないが、澄んだ美しい声だ。おそらく小生へ交際の申し出だとは思うが、いまは国際結婚の手続きよりも炒飯に集中したい。


「いただきます」


違う。一口食べて日本の炒飯と違うのがわかる。白っぽい見た目からして薄味だとは気付いていたが、切れの良い油は軽やかさがあり、味より香りが異文化を示した。花生油なのか?


意外にも雑に盛られた炒飯は、舌の上でも協調性なくバラバラとほどけ自由行動する。それを噛みしめ教育するのが楽しくて止まらない。ダメだ、ゆっくり味わうより、一気呵成にかっこみたい。


要は米だ。米が違う。見れば長粒のインディカ米だ。米と油と塩分が、大陸の香りで小生の舌と胃袋を誘惑する。むしろ日本の炒飯よりも質素な味と具材は、女性店員にも感じた素朴な健康美に溢れている。


美味しかった。これを食べる為だけに中国へ通いたくなった。


食後、日本語が話せる女性店員と話をした。彼女は先日、日本で「Deadly Rave」というバンドとライブを行ったらしい。次の来日時は必ず見に行きたい。そんな思い出も含め、本当に最高の炒飯だった。


え? なんで最高点じゃないかって?


食べ終わって店を出るとき、近隣のチンピラらしき連中が集まり、店を取り囲んだ。その半数は初めから大ケガを負っていた。包帯やギブスが痛々しい。


「琳琳、上次这笔账、今天该算了!」


「兄弟们、一起揍扁你……」


男たちがドスの効いた声で女性店員に声をかける。何を言っているのかは分からないが、手に持つモンキーレンチや鉄パイプを、どう使うかは見ただけでわかる。彼らは店の改装工事に来たのだ。


「中国山陽武術、广岛好焼拳『赤鲤三塁打』」

(グアンダオ ハオシャオチュエン チーリーサンレェダァ)


女性店員が叫び、改装工事が始まった。ずいぶん荒っぽい作業で、男たちは吹っ飛んだり、地面に転がって休憩したりと大騒ぎ。小生は急いで店を出たが、さすがに減点対象とさせて頂いた。


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