↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/50

Act 9 ムトゥ メタるマハラジャ


 मत सोचो……महसूस करो।……


◇◇◇


「ダル、お前の調子はどうだ」


 髭のオジサンが声をかける。


「シム、もちろん絶好調さ」


 髭のオジサンが返事する。


 カカッ。バッバッ。


 インドの元気なオジサンが、二人並べば踊るしかない。歌うしかない。なぜか道行く人々でさえ、示し合わせたかのように踊り出す。一糸乱れぬその動き、そこに理由や理屈は無い。



♪俺たち二人は軍人をやめ 俺たち二人は楽器を弾いた

 素敵な歌姫見つけたのさ 女神のような美しさ


 俺たち二人は彼女を誘い 俺たち三人バンドを組んだ

 素敵な歌姫歌いだすのさ 女神のような歌声さ


 カンポポ カンポ ポカポポ カンポ

 カンポポ カンポ ポカポポ カンポ (タブラを叩く音)


 だけど悪いマハラジャが 彼女をさらって閉じ込めた

 素敵な歌声をひとりじめ 女神は奴に奪われた


 だけど悪いマハラジャは 大きな屋敷に住んでいるぞ

 素敵な歌姫を救い出そう 今から二人で乗り込むぞ!


 カンポポ カンポ ポカポポ カンポ

 カンポポ カンポ ポカポポ カンポ……



◇◇◇


 街はずれの小高い丘にある、マハラジャの豪邸。



 爆発した。



 そこに雪崩れ込むゾウの大群。その先頭を走る二匹の背には、それぞれオジサンが立っていた。


「クマリ、無事か! 助けに来たぞ!」


「クマリ、どこだ! 今すぐ逃げろ!」


 瓦礫の下からズタボロの少女が、ゆっくりと立ち上がった。

 褐色の肌は傷だらけ、エメラルドの瞳は怒りを帯びている。


「ありがとう。危うく爆風に巻き込まれ、ゾウの大群に踏まれるところだったわ」


「パオーン」

「パオーン」


 歌姫クマリの無事を祝ってか、ゾウたちも喜びのおたけびを上げる。彼らの後を追ってきた街の人たちが集まり、なぜかマハラジャまで巻き込んで、誰も彼もが踊り始めた。



 カンポポ カンポ ポカポポ カンポ

 カンポポ カンポ ポカポポ カンポ


♪「クマリ聞いてくれ、クマリ。いい話があるんだ」


  「まあそれはどんな話なの。爆発されずに済む話?」


 「クマリ聞いてくれ、クマリ。俺たち日本でライブする」


  「なんて素敵な話なの。ゾウに踏まれず済みそうね!」


 カンポポ カンポ ポカポポ カンポ

 カンポポ カンポ ポカカカカカカカ……



◇◇◇


 重音山 金属寺。


 本堂で行なわれている護摩焚きの炎に、不動明王が浮かび上がる。


  ノウマク サンマンダ バサラダン センダン

  マカロシャダ ソハタヤ ウン タラタ カンマン


 必死の祈祷を続ける和尚と僧侶たち。だが……


  ノウマク サンマンダ バサラダン セン……

  マカ……ャダ ソ……ヤ ウン ……タ カ……


 僧侶が次々と倒れていく。それでも和尚は祈り続ける。


 炎の中で浮かび上がっていた不動明王の姿は、ハッキングされたようにノイズが走り、徐々にゾウの頭を持つ異形の姿へ変化していく。


  ノウ…… サ…ンダ… パ…パオーン!

  パオーン! パオ―ン! パオーン!


 もうダメだ。完全に侵食された。真言によるファイヤウォールは破られ、阿頼耶識 (アーラヤヴィジュニャーナ) へのディープダイブが始まっている。止められない……


「ムトゥが来るぞ!」

「ムトゥが来るぞ!」


 本堂を離れ、伝令にまわった僧侶が境内を走る。もはや浸食は止められ得ない。ならせめて、この事実を日本のバンドマン達に……。だが境内に舞い散る怪しい譜面が、彼らの視界をふさぐ。やがて正門に辿り着いた彼らを待ち受けていたのは……


「私のジャマをする者は、死あるのみだ!」


 赤い軍服に赤い制帽、そしてマントを身にまとう大男「ムトゥ」。インド陸軍将校であり、情報操作を得意とする男、金属寺が最も警戒していた人物だ。


 ムトゥは寺に入り、本堂で祈る和尚の後ろに立つ。だが和尚は振り向かず祈祷を続ける。ムトゥは和尚に言い放つ。


「もうすぐ世界が私の手中におさまる……ハッハッハッ」


 和尚は振り向かずムトゥに声をかけた。


「どうしても……カプリコーンに復讐するつもりか……」


 ムトゥは答えない。だが和尚の祈祷が途絶えるとき、激しく木魚を叩く音が聞こえたという。


◇◇◇


 関西国際空港のロビーに降り立つ三人のインド人たち。ダル、シム、そしてクマリを待ち受けていたのはムトゥだった。ダルとシムは背筋を伸ばし、元上官だった彼に敬礼をする。そしてクマリが挨拶をする。


「お出迎えのほど恐れ入ります、大佐」


「ムトゥでよい、クマリ」


 ムトゥは三人を引き連れ空港を出る。目指すはライブハウス「ギガ・アミューズメント」。カプリコーンの辻本社長には招待状を送りつけている。送り主を見れば必ず来るだろう。そして「Deadly Rave」とやらを蹴散らし、ぬるい日本の音楽業界に嵐を巻き起こすのだ。


「フハハハハ、サイコパワーに死角なし!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
あー、この流れでシャドるとは!?  インド映画はミュージカル映画なんですかね?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。