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Act 3 獣と共に去りぬ


 ライブハウス「ギガ・アミューズメント」のフロアで、パンヘッドは自分の両手を眺めていた。


 テリーには言えなかった。この手は汚れている。


 やむを得ないとはいえ、多くの命を奪った。俺だけじゃない。パパも、グランド・パパも。俺たちは、拭えない原罪を負った一族なんだ……


 パンヘッドはかぶりを振った。今は忘れよう。今は自分よりワルな「Deadly Rave」のテリーが何を見せてくれるのか。それだけに集中しよう。その後で俺たち「Motul Kompact」のライブを聞かせてやろう。アメリカのバーボンがどんな味か、堪能するがいい。


 ライブハウスのBGMが、SEの曲に切り替わる。Motörhead「Overkill」だ。あえて「Ace of Spades」を選ばなかった心意気にパンヘッドはほくそ笑む。どちらも名曲だが、一番メジャーなやつは外したいという気持ちはわかる。


 照明が落ちる。幕が上がる。そして「Deadly Rave」の夜が始まる。


 あえてバタバタとした生々しいドラムがツインペダルを踏む。ハーレーの鼓動を思わせる味わい深いリズムにかぶさるベースは、低音を完全にカットしたコード弾き。ガリガリ、ギャインギャインと聞き慣れない音は、リッケンバッカーとジョーの指から発生している。


 Killer のギターをかき鳴らすギースは激しいヘッドバンキング。音色はオーバードライブ? いやまさか、アンプだけで歪ませているのか?


 時代を逆行する、豪快な演奏。問答無用の音圧を切り裂く、テリーの絶叫。


 ♪SCREEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEAM!


 パンヘッドは全てを忘れ、全てを思い出した。俺がギターを手にしたとき、感じていたのはこの高揚感だ。あらゆる曲を弾き過ぎて慣れてしまい、刺激を求めて即興に答えを求めた。それは間違いではない。だが、このバカバカしいほどの荒々しい演奏にも……


 先の読めないスリルが、ある。


 パンヘッドは首を振る。テンガロンハットも頭から吹っ飛び、どこかで誰かに踏まれている。いいんだそれで。自分を記号化するアイコンなんて、揉みくちゃにされちまえ。それがロックだ。テリーよ、俺よりワルなお前の詩 (言葉) を聞かせてくれ!



  ────────────────

  ようこそサウスパークへ / どうぶつハンター×ハンター

  作詞:テリー

  作曲:ギース

 (メロディは読者が自由に思い浮かべてください)

  ────────────────



  ♪パンヘッドの故郷テキサス州は

   右も左もハンターハンター

   ホームセンターで銃を買い

   畑を荒らす鹿を狩る


   パンヘッドの地元ロックハート市は

   右も左も人がいない

   繁華街でも信号いらず

   ダウンタウンでも治安よし


    アメリカだからって必ずしも

    犯罪まみれと思うなよ

    郊外に出れば人よりも

    野生動物に気をつけろ


   パンヘッドの故郷テキサス州は

   右も左もイノシシだ

   他にもコヨーテ、アリゲーター

   人間を襲うアニマルだ



「Oh Jesus, forgive me, I am……I am a sinner!Aaaaaagh!」


 パンヘッドは泣いた。人目はばからず泣いた。そうだ俺は罪人だ。愛するどうぶつ達をこの手で……。嫌だったんだ俺は。でも人を襲う以上、どうしようもなかったんだ。俺自身も子どもの頃、コヨーテに噛まれ食われそうになった。だからパパは……


「NO──────!」


 本来はどうぶつ好きのパンヘッド。だが彼の暮らすテキサスの田舎では、野生動物は決して遠い存在ではない。そして人間が、素手で野生動物を相手に戦って勝てるほど、自然は甘くない。


 だからパンヘッドの一族は、銃、それもライフルを手放せなかったのだ。


◇◇◇


 ステージに幕が下り、「Deadly Rave」と「Motul Kompact」のメンバーが入れ替わる。パンヘッドはテリーとすれ違う時に呟いた。


「俺の本性を暴きやがって、お前は本当にワルだぜ」


 SEで流れる曲は「テキサスの黄色いバラ」、テキサスなら誰でも歌える曲だ。やがてSEに生音が重なり、それを大胆にアレンジした「Motul Kompact」の一曲目が始まった。


 ショベルヘッドがドラムを叩き、ナックルヘッドがベースをうねらせる。パンヘッドがギターを弾いて、全員が歌う。



  ────────────────

  テキサスの黄色いバラ (The Yellow Rose of Texas)

  原曲:アメリカ民謡

  翻案:Master of Reality☆黒い安息日

 (1850年代の楽曲を大胆にアレンジ)

  ────────────────


 なんだぁ?

 日本に来てみろよ、黄色い友人がいるぜ

 ワーオ、なんて美形だ


 ♪ミュミュミューミュミュー(ギター)


 そしてワルだ、ワルだ、ワルだ!



 ♪テキサスには黄色いバラ

  俺はお前に会いに行く

  俺を知っているのはお前だけさ


   俺が去ったらお前は

   少しくらい悲しんでくれるだろ

   だから会おうぜ

   またいつの日か


  俺が知る中でお前が

  この世で一番美形さ

  「愛しのメイ」も「ローザ・リー」も敵わない


  I'm talking 'bout the Yellow Rose.


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― 新着の感想 ―
サブタイトル、ああ成る程。コイツぁ、参ったなぁ。全く質のワルい貴族令嬢サマだぜぇ  ^_^
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