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08 俺・おびえていますか


 「ザ・ギャンブルブラザーズ」のメンバー三人と、音楽事務所「R.O.ISHTAR」CEO・神田はスタジオにいた。一時加入する予定の女性ボーカリストを待っているのだが、バンドメンバーの初顔合わせ程度で事務所のCEOが顔を出すことは、通常あり得ない。


 だが、その女性ボーカリストは神田の知人で、聖エスカルゴ女学院在学生なので、今日は立ち会うとのこと。「ザ・ギャンブルブラザーズ」のメンバーが人物像を聞くと、カワイイもの好きで、胸が大きく、アニメ「超時空要塞マクロス」の登場人物にそっくりな女の子だという。


 三人の男たちは期待が高まっている。どんな子だろう。ランカ・リーかな。いや神田社長の知り合いならシェリル・ノームかも。案外ミレーヌ・ジーナスとか。「超時空要塞」とか言ってる時点でリン・ミンメイ一択じゃねえか。彼らはそんなことを話し合っていた。


 ガチャ、ガチャガチャ……


 ドアノブがひねられる。だが、開けるのに苦労しているらしい。確かに分厚く重い防音扉は、少し慣れないと開けにくいかもしれない。やがてドアノブは激しく回され、それでも開かない扉に苛立ちを覚えたのか、今度は力任せに開けようとしているようだ。


 あわてて神田が内側から開けようとするも、時すでに遅し。


 ミリミリミリ……ベリィィィ……ばぎどが───ん!


 100ミリ近い金属製の防音扉は引き千切られ、投げ捨てられた。


「建付けの悪い扉だ。次来る時までに直しておけ」


 2m近い筋肉質の女が言い放つ。「ザ・ギャンブルブラザーズ」のメンバーである三人の男たちは呆然と女を見上げている。


 確かに大胸筋は分厚い。そして「超時空要塞マクロス」に登場する巨人種族(ゼントラーディ)の軍人ブリタイにそっくりだ。右目が前髪で隠れている所も似ている。


「謀ったな、神田ァ!」


 メンバーの一人が声を荒げるも、神田は平然と言い返す。


「アンタたちはいいミュージシャンだけど、素行が悪すぎたのよ、ホホホ……」


 そういう神田もドアの修繕費を考えると笑っている場合では無いのだが、とにかくスタジオに入ってきた巨大な女は、椅子にどっかりと腰掛け名乗りを上げた。 


「私の名は梅香 瑠賀子 (ウメガ・ルガコ) 、貴様ら三人に名乗ることを許可する」


 動揺する三人、だが怖すぎてツッコめない。ひとまず痩せた男が答えた。


「許可って……いやまあ、アタシたちは『ザ・ギャンブルブラザーズ』というバンドでして、アタシがギターのダービー杉本です。好きなギャンブルは……」


「名前が長い! ダービーでよい!」


 即答する梅香。次にぼさぼさ頭のだらしない男が答える。


「俺はベースのパチンカス金子っす。好きな機種は……」


「名前が長い! パチカスでよい!」


 続けて即答する梅香。最後に小太りの男が答えた。


「おいらはジャンキーMEW (ミュー) 好きなヤクは……」


 梅香の顔色が変わり、険しい表情となった。垂れた前髪で隠れた右目が妖しく光る。


「貴様、麻薬中毒者か。よくもぬけぬけと私の前に……」


「違う違う、誤解だよ。おいらが打つのは、麻雀だけさ」


「……なるほど、ヤクとは上がり役のことか。だがジャンキー (雀鬼) と呼ぶのは気に入らんな。ところでMEW (ミュー) とはなんだ、お前の本名ではあるまい」


「おいらが飼ってる猫の名前だよ」


「ガハハハ、気に入った。私はカワイイどうぶつが大好きだ。お前はMEW (ミュー) と名乗るがよい」


 梅香と「ザ・ギャンブルブラザーズ」の顔合わせは終わった。本来はここで音合わせもする予定だったが、引き千切られた防音扉がそれを許さなかった。賭博狂いの男たちと化け物じみた怪力の女、彼らがどんなステージを見せてくれるのか。


◇◇◇


 ♪「バーンナックル!」


 西山ユリのスマホがSMSの着信を告げる。見れば次のライブで、ブッキングする相手が決まったという報告だった。スタジオで練習後の休憩をしていた「Deadly Rave」のメンバーも、ユリのスマホを覗き込む。


「……ふーん、『ザ・ギャンブルブラザーズ』とはまた懐かしいバンドやな」


 なんとも微妙な表情のユリに、ギースが声をかける。


「聞いたことないバンドだけど、ユリは知ってるの?」


「……あんたの世代じゃ知らんか。大昔に一曲だけ、電波ソングで大ヒットを飛ばしたバンドや」


「たいていのバンドは知ってるつもりだけど記憶にないなあ」


「……そらしゃあない、あんたの親世代より上かもしれん。いわゆる一発屋で、後は世に出ることもなかったしな」


「そういうバンドって、どうやって生き残るの」


「……そら色々や。スタジオ経営や音楽事務所、個人レッスンや音楽講師なんか極一部の恵まれた連中のすることで、普通に働いとる人がほとんどや。なまじっか売れたせいで生活が乱れ、転落人生を送る奴も少なくないな」


「世知辛いね」


「……いや、それはどの業界も同じやろ。身の程を超えた栄光は、確実に身を滅ぼす」


 西山ユリはメッセージを読みなおした。彼女にとってはインパクトの大きい「ザ・ギャンブルブラザーズ」の名前で気付けなかったが、バンド名の後ろに見過ごせない追記がされていた。


「……なんやて? 『feat. 梅香 瑠賀子』やと?」


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― 新着の感想 ―
着信音がバーンナッコォ!!(笑) ユリはヒップアタックくらいしか覚えてません…… キングと紅丸の足技と、ラルフの爆発パンチが好きでしたねー
ああ、覚えているとも  ワイのマクロスは劇場版で終わってま  ……思えばヘイワでシアワセなジダイやったでホンマに テレビ版のカムジン&ラプラミズには泣けたなぁ  うむ、クローディアさんは、ワイがアフ…
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