表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/22

EPISODEⅡ – THUNDER IN THE WEST


 ハーレーダビッドソン。


 アメリカを代表するバイクであり、数値としての性能より、造形美やエンジンの鼓動で存在感を示す、アメリカンと呼ばれるジャンルの象徴である。


 しかし近年、極東の日本においてはブランド化が過剰に進み、見栄を張りたい金持ち用のアイテムとなっている感が否めない。その良否についてはともかく、異を唱える者は確かに存在する。


「ヘイ、ブロウ、プレジデント辻本からオファーだぜ」


「そいつはヘヴィだ、キックアス (Kick ass)」


 あえてハーレーを排し、和製アメリカンで揃えたバイクチーム。彼らのバイクは全て国産である。スティード、ビラーゴ、Ninja エンジンのエリミネーター900、V45マグナ、VMAX1200……彼らにとってドラッグスターは新参だ。


 キュカカ。ドルンドルンドルンドルン……


 バイクは明るいガレージを飛び出し、夜のハイウェイへ繰り出していく。羽織られたライダースジャケットは、背中に「N.G.K.重金属楽団 R.C」と書かれている。棺桶を模したギターケースを後部座席にチェーンで巻きつけている者もいる。


 その集団の先頭を走る、飛び抜けて古い二台のバイク「陸王」。


 国産のハーレー。三共内燃機がライセンス生産した車両で、旧帝国陸軍も戦時中に採用している。なお製造元は現在、市販薬を製造・販売している。日本の風邪にはルルが効くらしい。


「ヘイ、ブロウ、相手は容赦なく叩き潰していいらしいぜ」


「ハハ、そいつはクールだ、遠慮と検問は苦手だからな」


 夜明け前には辿り着くだろう。目的地のライブハウス「ギガ・アミューズメント」へ。


◇◇◇


「いやー、間に合って良かったよギース」


 留置所から解放されたばかりのテリーが、迎えに来たギースと並んで歩いている。


「ある意味手遅れだけどね。それよりテリー、喉の調子はどうだい?」


「ばっちりさ」


 制御不能な詩の内容はともかく、生体楽器としての喉が万全なら「Deadly Rave」の演奏はプロも凌駕するレベルに達している。恐れることは何もない、そう思っていた。この時までは。


 ライブハウスに近づくと、ポスターが貼られている。「ギガ・アミューズメント」の広告で、プロレス興行の告知がされていた。ライブハウスでのプロレスは、決して珍しいことではない。


「ねえギース、アマチュアのレスリングとプロレスって、どうしてあんなに違うのかな?」


「さあね、興味ないよ」


「アマレスでも5秒までなら、反則が許されるのかな」


「そんなわけないよ」


 ライブハウスにたどり着いた。しかし周辺は異様な空気が漂っている。まず目に入ったのは、立ち並ぶ多数のバイク。そして黒づくめの集団。さっきポスターで見た悪役レスラーのような連中が、入り口付近でたむろしている。彼らはギースたちを見て囃し立てた。


「こいつギターケース持ってるぜ、『Deadly Rave』のメンバーじゃねえか?」


「たぶんそうだぜ、ハハハ、お手並み拝見だ」


「俺たちのブロウがライブ始めると、ビビって逃げるんじゃねえか?」


「かもな、ハハハハハ」


 怖い。ギースはこういう連中に慣れていない。それでも震える足を止めず、中へ入る。支配人の鈴木が二人を出迎えた。


「やあやあ、待っていたよギースくん。辻本さんからの依頼で、今日は彼らとブッキングだよ」


「怖い人たちですね……」


「まあパッと見そう見えるよね、でもよく考えてごらん」


「何をですか」


「彼らは、君らより先に来てるんだよ」


 ……あ。


 ギースは気付いた。一見柄の悪そうな彼らは、真面目なギースより先に会場入りし、ライブの準備を行っている。見落とすとこだった。辻本社長が見せようとしたのは、こういう所か。ギースは先入観で目がくらんでいた自分を恥じた。


 だが彼はまだ知らない。こんなことは、序の口に過ぎないと……


 テリーはなぜか外に出て、彼らのバイクを熱心に観察していた。自慢のバイクを見られて満更でもないのか、なぜか彼らもテリーと馴染んでいた。


「うわー、ピカピカだね、古そうだけど綺麗なバイクだなー」


「まあな」


「うわー、チェーンとブレーキもピカピカだね、一見綺麗でもこういうとこ錆び錆びで汚いと台無しだもんねー」


「お、おう……」


「あれー、タイヤの端っこもピカピカだねー、おヒゲみたいなのも残ってるねー」


「いやまあ、アメリカンだし……」


「おやー、ブレーキのホースがゴムのままだねー、膨張を考えてメッシュを避けたのかなー」


「あの……バイク屋さんですか?」


 なぜかテリーにペコペコと頭を下げ始める外の連中はともかく、ギースはフロアに入りステージを見た。ガラの悪い連中を率いていたバンド「N.G.K.重金属楽団 R.C」は、リハーサルと音出しを行っている。一曲丸々演奏することはないが、それでもなかなかの腕があることがわかった。


 思ったよりはやる、だが今の「Deadly Rave」程じゃない。


 ステージ脇には……なるほど、あれで観客の度肝を抜こうってわけか。真似は出来ないが、派手な演出だ。まるでプロレスみたいだな、ギースはそう思った。


 ……さあ、ライブの始まりだ。


注釈:キックアス (Kick ass) とは言いつつ、陸王をのぞく「N.G.K.重金属楽団 R.C」メンバーのバイクにはキックペダルがない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
   陸 王 !? こ の 野 郎 !  ヤるぢゃねー喝!!……Kiss my ass♡  wwwwwwwwwwwwwww  ハーレーはよぉ、オラぁバイクにゃぁ乗らねんだがよぉ、ギザギザした思…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ