夜想う
舞台の天井へ星が昇る。段ボール片を黄色く塗った星が昇る。背景は黒幕で覆われて——一杯の星の中へ最後、三日月がぶら下がった。
「月と星の瞬く夜——」
ナレーションと共に、少年と少女が袖から向かい合うように姿を現した。
少年は額に金色の王冠を輝かせ、少女は真っ赤なドレスに身を包む。相対する二人は互いに手を取り合って、観客からさらに向こうを眺めるのだった。
「ほら見て、お星さまがあんなに」
少女が遠く天を指さすと、少年は頷く。
「ああ、そうだね。それに月まで出ている」
「ええ、そうね‥‥‥」
自然と互いの指が絡み、小さな手が繋がる。
「あの星って、温かいのかしら」
「どうだろうね」
「きっと温かいわ。だって、あんなに淡い光をしているんですもの」
「なら、あの星もきっと温かいんじゃないかな」
「そうね——」
少女は楽しげに次の星を指さした。
「あの星はきっと氷のように冷たくて、あの星は炎のように熱いんだわ」
「あの星は、鉄のように硬くて、あの星は水の様にさらさらと滑らかなんだろう」
少年と少女、二人は次々と星に思いを巡らせた。
「あの星は砂糖菓子のように甘くて——」
「あの星は岩のように重い」
そして、輝く四つの瞳が見つめたのは、大きくぶら下がる月だった。
「月は、どうなんでしょうね」
「ああ、どうだろう」
じっと黙って、二人肩を寄せ合う。
「君は、どう思うんだい?」
少年が訊くと、少女はゆっくりと紅い唇を開いた。
「どこか、寂しそう」
「‥‥‥どうして?」
「だって、一人だけあんなに大きくて、一人だけ強く輝いて——」
少女は、軽く目を伏せて続けた。
「夜に浮かぶ」
また、沈黙が訪れた。しばらくして、衣擦れの音がすれば二人は抱き合っていた。
夜空の下、本物を知らない彼らの抱擁がスポットライトに照らされる。
「それでも、月は綺麗だ」
その少年の言葉と共に、劇は幕引きとなった。




