朝日が昇るまで
午前三時、静まり返った街。普段は片手スマホにベッドにいる時分だが、今日はふと外へ出てみた。街灯はまばらで、月明かりのない今日は五歩先が暗闇。偶の自販機は誘蛾灯と化していた。
昼は既に夏の暑さをしているが、この時間となると半袖では肌寒い。けれど、体はまだほてりを保っていて、妙な高揚を促してくる。歩きなれた道も、初めてのような錯覚に陥り、宝物でも探すみたいだ。
散歩が楽しいなんて、生まれて初めて感じた。
あの角を曲がった先には小さい頃よく遊んだ公園がある。手持ちのライト片手にスキップで進んだ。
早まる鼓動、肺を通る空気が甘い。
独り占めの夜道。
公園に立ち寄りブランコに乗った。大きく勢いをつけて、靴を飛ばす。緩く弧を描いて右足の靴は飛んでいった。片足でケンケンをして遠くまで拾いに行く。そのまま次は滑り台へ。少し窮屈ながらも、滑り降りて着地。思ったよりも速く、恐怖を孕む爽快感に煽られ何度も滑った。半分埋まるタイヤを飛び越え、もう一度ブランコで風を浴びる。そして、ジャングルジムのてっぺんまで上りつめれば——山際の空が白み始めていた。
公園の時計を見れば、時刻は四時半を回る頃。朝焼けが次第に足元まで近づいてくる。
眩い太陽に目を細めた。日照りにあつく揺さぶられる。
愉悦だ。愉悦の朝だ。
思わず拳を天に掲げていた。
夜だけではない、この朝も独り占め——。
と、遠くでアスファルトを叩く音が聞こえた。そちらに目を向けると、おじさんがこちらを見て走っていった。
一気に顔から足の先まで全身が熱くなった。汗も噴き出てきて——やはり、夏が近いようだ。
ジャングルジムを半ばで飛び降りる勢いのまま、駆け足に家まで帰った。
既に起きていた母親には「ちょっと、目が覚めちゃったから」と言って朝食の手伝いをした。いつもなら甘い玉子焼きが今日はしょっぱかった。




