さよなら
花屋から出た女が二人、手に一杯の花を抱え車に乗り込んだ。
「次のお店は?」
「あっち」
二人の向かう先は、また花屋だった。茜差す頃まで彼女たちは街中の花屋を訪れ一杯の花を買い漁った。夕暮れの終わり、夜を迎える間際。二人の姿はコンビニの駐車場にあった。車内で一つの小さなショートケーキを笑顔に分け合って食べていた。最後にイチゴを口移しに半分ずつかみちぎって——そして二人は、月下のドライブへと出た。
ルームミラーは白一色を映す。車内は二人座るだけを残して、百合の花で埋まっていた。
海にかかる橋の上を、赤い車が走っていく。夜道、他に車はいない。片側一車線にて、アクセルは一杯に踏まれていた。
エンジンは唸り、円い標識の五十を遥か上回り進む。
二人の手足は半分ずつ麻縄で固く結ばれていた。
長い橋も半ばまで来て、ハンドルが切られた。
ガンッと音を立て、縁石を乗り越えると、車は高く飛び上がった。車体は螺旋を描き、夜空へ上っていく。しかし、次第に勢いを失い、数瞬宙で留まれば——急転直下、海へ落ち行く――。
輝く海面に水飛沫が上がった。車は暗い海の底へと沈んでいった。
車内の二人は唇を重ねたまま、互いの爪は皮膚を裂く。髪を引き抜き、舌を噛む。
そして、二人の身体は解け、替わりに白百合が纏わりつく。
血が海水に溶け出していた。薄ら赤黒く百合の花弁が染まっていた。
底で砂が舞う。その周りを、魚たちが過ぎていった。




