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 さて、馬鹿みたいに明るいデカいライトが現れた事で、ある程度遠くまで見渡せるようになった。

 それまでまったく見えなかった距離……だいたい200mくらい先に、集団の影を発見する。個々を判別できる程ではないが、明確に集団がいるというのがわかった。


「いや、ゴツいなぁ……レーダーの反応で多そうだなとは思ってたけど、ここまでとは……」


 『一号業務』のレーダーは、個別の点ではなく、モヤみたいな形で敵?の反応の強さと方向を示してくれていた。まぁ脳内にそんなイメージが出てくるだけで実際に見えたわけじゃないけど。

 そのモヤが、めちゃくちゃ濃かったのだ。そりゃ数も多いだろうと、そう予想していた。そもそもハヴェンという村一つを丸々取り囲むくらいだったのだ。総数は多いだろうとは思っていた。思っていたが……。


「ここまで多いかぁ……100人余裕で超えてるだろ、あれ」


 向こうも照らされて発見されたというのに気付いたのか、その足は止まっている。さすがに声までは聞こえないが、ざわついているような雰囲気が感じられる。そりゃこの状況で何も考えずに突っ込んできたりはしないか。

 そうして観察していると、奥から馬に乗った人物が前に出てきて、周囲へと指示を飛ばすような動きを見せた。するとゆらゆら揺れてた集団がビシッと止まり、そのまま堂々と行進を再開してこちらへと歩いてくる。


「あれが指揮官か。見つかったからって指揮官先頭で行進してくるとか、こんな状況で見栄を張るなんて何考えてるんだ」


 侵略者で、宣戦布告も無し村を襲い、一般市民を虐殺したくせによ……!

 そんな俺の内心を知ってか知らずか、堂々とした行進で近づいてきた敵が目の前に迫っていた。

 装備を見れば、村を襲った連中と寸分違わぬ革鎧とショートソード。ロングソードを佩いているのもいる。違うのは、弓のようなものを装備しているのがいるくらいか。あの時は野盗っぽいと思っていたが、あれが制式装備のようだ。指揮官だけは妙に立派な鎧で、全身とは言わないが体の大部分を金属で覆っていた。


「よぉ、侵略者さんよ。こんな夜中に何の用だ?」


 声が届くくらいの距離に来たのを確認し、先に質問を投げかける。分かり切ったことを聞くが、これによる反応がどうなるかで、対応も少し変わるというものだ。今まで会った奴らは問答無用で襲い掛かってきたが……。


「ふん。こんな所に珍妙な関を設けているかと思えば、番人が一人とはな。時間稼ぎのつもりか?」


 微妙に聞いたことに答えない指揮官野郎。歳は見た感じで50歳くらいで、偉そうな髭を生やしてる。態度も偉そうでムカつく。ぜってーブッ倒す!


「構わず進め! 町は目の前だ!!」

「ざけんな! 交通規制にご協力を(ここは通行止めだ)!!」


 指揮官の号令で走り出した集団へ向けて吠える。ここは通さないという気迫を込めて。

 すると、カラーコーンとバーを蹴り飛ばして進もうとした敵兵が、見えない壁に弾かれるように吹き飛ばされた。コーンとバーは1mmたりとも動いていない。


「む? 何をふざけている。そんなもの無視して進まぬか!」


 再び突撃する敵兵たちが、またもや弾かれて戻される。蹴り飛ばそうとした者だけでなく、飛び越えようとした者も、誰一人として先には進めずに弾かれるのだ。剣で斬りつけようが、弓矢でコーンを射ようが、コーンとバーは何物も受け付けずにそこに在り続ける。

 思ったよりも強力な効果で、こんな状況だというのに笑ってしまう。


「はっはっは……! 無様だな! 所詮お前らなんざその程度だ! 諦めてさっさと帰んな!!」

「ならば貴様を倒すまでよ! 総員、そいつを狙え!」


 まぁそうなるわな。そりゃどう見ても俺がなんかやってるんだから、俺を排除すればそれで解決だ。排除できれば、な。

 『二号業務』を出してから、頭の中で「何ができるか」「どうすればいいか」というものがぼんやりと浮かんでくる。『三号業務』で牽引用の馬具を作った時と同じだ。それによると、こういう多数に狙われる状況にピッタリの物がある。まぁ『二号業務』で場を展開している時だけっぽいが。

 すなわち。


「車線減少だ! 一台ずつどうぞ(一匹ずつ来いや)!!」


 すると、一番近かった敵兵以外が急に弾かれるように吹き飛んだ。一人だけは変わらず突っ込んでくるが、剣を振りかぶった瞬間、例のスローが発動する。こうなればあとは楽勝だ。敵のゆっくりとした攻撃の軌道を読み、こちらもゆっくりとした動きではあるが避けるように動く。振り切ってがら空きになった敵の胴体へ、このまま誘導灯で……誘導灯で?

 え、待って待ってこれジェ〇イ的なセーバーだったらスパッと……そこまで思い至った時には敵に触れる直前であり、スローであっても止めるのが間に合わないタイミングだった。せめて傷口が焼き切れてくれるといいな、と覚悟を決める。


「ぐぁぁぁぁ!!」


 と思ったら、当たった瞬間にバチバチと音がして、敵兵は痺れたように体を痙攣させ、その場に崩れ落ちた。微妙に焦げ臭さも感じる。某セーバー風スタンロッド……?

 助かった……今さら不殺なんて言うつもりはないけど、そんなスパスパ切れたら返り血とか酷いことになりそうだからな……。触れたらアウトレベルの高火力で敵を痺れさせられるというのなら、それならそれでいい。

 一人倒れたことで次の番だ。一番近くにいた奴が解放され、こちらへと突っ込んできた。他の連中は一度吹き飛ばされた後、一定の距離を空けて、こちらに向かおうとする体勢で止まっていた。なるほど、これが一人ずつ来るわけか。ちなみに弓矢も飛んできてはいるが、これは弾かれている。

 一人前に出ては倒され、倒されては一人だけ前に出る。そんな事を十数人も繰り返した結果、タイマンでは勝てないという認識が生まれたのか、全員の足が止まった。

 スキル特性上こちらから攻め込むわけにもいかないから、崩れ落ちた敵の山を前に、誘導灯を振るって敵を挑発する。


「ほらどうした! たった一人を相手に尻込みすんのか!? あぁ!?」

「吠えるな若造が!!」


 その挑発に真っ先に反応したのは指揮官だった。長剣を抜き、馬を走らせ、こちらに向かってくる。何が来ようが構わない。むしろ指揮官が潰せるなんて願ったり叶ったりだ。

 だが、なんだろう……なんか違和感がある。元々距離が近かったのもあり、もう目の前だ。馬に乗りながらこちらを注視して剣を振りかぶり、狙いを定めて振り下ろそうとして……スローにならない!?


「うぉわぁぁ!?」


 それに気付いた瞬間、敵の体から離れるように飛んで避ける。スローであれば剣筋を読んでギリギリ躱せるが、そうでないならギリギリなんて言ってられない。大きく避けたつもりではあるが、傍目には危ないところだっただろう。冷や汗が止まらなかった。


「なんで発動しなかったんだ……」

「何をブツブツ言っている。貴様を殺せば、この馬鹿げた現象も収まるのだろう? こんなところで止まる訳にはいかぬのだ。手早く終わらせるぞ!」


 馬の鼻先をこちらに向け、再度駆け出す指揮官。

 いつまでも狼狽えていても仕方がない。さっきはスロー頼みに終始し、発動しなくて面食らったが、それならそれでやりようがある。『二号業務』でできることは、戦う相手を制限するだけではないのだ。


「交通整理は通すだけが仕事じゃないんでな! 交互通行にご協力を(テメーの番じゃねぇ)!!


 誘導灯を前に持ち、横にしてストップをかけるジェスチャーをする。ついでにお願いをするように頭も下げといてやろう。

 すると、駆けていた馬が急停止し、乗っていた指揮官が慣性で前に投げ出され、そのままゴロゴロと転がってくる。俺の目の前に。


「停止のご協力、ありがとうございまし、た!」

「ぐぁぁっ!?」


 突然の現象に呆けた表情をしていた指揮官へ、そのまま容赦なく誘導灯を振り下ろして無力化する。

 これで一段落といったところか。あとは雑魚ばっかりだし、向かってくるならそれでよし、引き返すならそれもまたよしだ。

 あれだけ騒いで走って来てて、しかもこんな明かりが出現してる状況だ。町にいる連中が気付かないわけがない。あとはいつ到着するかだけだ。このまま膠着状態で終われば俺的に面倒が無くていいんだがな。

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