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協力の言質を取れた事に満足したのか、とりあえず話は一段落という事で終わりにし、残った料理を食べることに。その後の雑談は当たり障りないもので、比較的穏やかに食事を終えられた。
食事を終えるとエドリック卿が「このまま泊っていきなさい」と言うので、では遠慮なくとお言葉に甘える。泊まるにあたって身綺麗にしようという事になり、俺とライラは入浴を勧められた。
「先ほど聞きそびれたこともあるし、入浴してからまた少し話し合おうではないか」
「わかりました。それでは失礼します」
食堂から出て、使用人に案内されるままに浴室へと移動をする。ライラも抱きかかえてだ。
入浴ねぇ……今まで見てきた感じ、見たまんま中世って感じの技術水準だ。街並みにしろ、料理にしろ、一般市民の服装にしろ、産業革命などほど遠いといった雰囲気だ。そこから考えれば、浴室と言っても、せいぜい水はけが良いように作った部屋に固定されてないバスタブを置いたくらいじゃ……
「こちらでございます」
「なかったわ」
「え?」
「あぁいやこっちの話。気にしないでくれ」
ちゃんとした風呂場だ。風呂場がある。マジかすげぇな!
え、すご。なにこれ。詰めたら四人くらいならギリギリ入れそうな石造りのしっかりした湯船。なんか壁から管みたいなのが湯船に向かって伸びてるし、これもしかして外にボイラーあるのか。湯船自体は床から一段高く造られていて、水抜き用っぽい管も下から突き出ている。部屋自体も専用に造られているような感じで、しっかりとした排水溝みたいなものも隅に見える。
「わぁ……! ケントさん、これがお風呂なんですね!」
「あぁ、そうだな。ライラは風呂は初めてか?」
「はい! いつもは川とかで洗うので……」
そうだよな、今まで見てきた感じだとそうなるよな。ってことはやっぱりこの領主邸が異常なんだな。
なんにしても昨日は風呂に入れていないし、夜通し歩いて汗めちゃくちゃかいてるしで、サッパリしたかったから凄くありがたい。ぶっちゃけ木桶にお湯入れたのを渡されて「これで綺麗にしろ」と言われるかと思ってた。
やっぱり文化的な生活を送っている現代人には、風呂は必須だよなぁ。
「ケント様はお一人で大丈夫ですね。ライラ様、お手伝いいたします」
「そ、そんな、様なんて言われるような身分じゃ……」
「主人が招いた方は、皆さま大事なお客様です。さぁ、綺麗にいたしましょう」
そんなやり取りをしながら、桶と石鹸らしき物とタオルをポンポンと渡される。大事なお客様とは?
っていうか石鹸? 石鹸だよなこれ? 風呂場もそうだけどちゃんとした石鹸があるのすげぇな。有難く使わせてもらおう。
使用人さん(女性)は俺がいるにも関わらず、ライラの服を脱がして丸裸にする。そのまま風呂椅子に座らせ、大き目の木桶に張ったお湯を使ってライラを綺麗にしていく。石鹸のようなものを使って髪の毛を洗っていくが、最初は泡立たなくて困っていた。何回か濯いでようやく泡立つようになり、その泡を利用して髪の毛全体を丁寧にケアするように洗う。泡を流すと、それは見事な金色の髪が現れた。とても艶やかで、照明に輝くようにキラキラとしている。
髪が終わったということで次は身体だ。こちらも洗うと薄汚れた感じがなくなり、ツヤツヤピカピカの肌が露わになった。そうだよな、子供はちょっと洗うだけで肌すごい綺麗になるもんな。
そうして全体を綺麗にされ、手を貸されながら湯船へと入ってくる。ゆっくりと体を沈めていき、全身を包むお湯の感覚に、「ふわぁ……♡」と気持ちよさそうな声を上げるライラ。やめてください死んでしまいます(社会的に)
さっきから実況してるのはなんなんだって?
自分の身体をさっさと洗って湯船につかりながら見てただけだよ。決してロリコンじゃねぇからな。その証拠に「反応」してないし。まぁ綺麗になったライラはめちゃくちゃ可愛いけど。
なんていうかな、親目線というか、守護りたいというか、とにかく可愛いからってどうこうしようという気は起きない。成長してたら危うかった気がするけど。
そんなバスタイムを終え、用意されたゆったりとした服を着て、またもや使用人に案内されて廊下を歩く。もちろんライラは抱えて。服は洗濯しておいてくれるらしい。
案内された先は二階の談話室といった雰囲気の部屋で、ゆったりとしたソファに座ったエアドリック卿が待っていた。
こちらを見た瞬間、若干ではあるが目を見開き、感心したような声を上げた。
「ほぉ……見違えるように綺麗になったね。我が家の風呂は堪能してくれたかな?」
「えぇ、とても。ライラも気に入ったようです」
「ありがとうございました、エアドリック様」
うむうむと頷きながらエアドリック卿が対面のソファを指し示し、座るように促してくる。
座ると同時に、使用人さんがカップを俺とライラの前に置いた。香り的に紅茶っぽいな。一緒にミルクと砂糖っぽいのが置かれているし。
とりあえず一口と思って口をつけると、紅茶のいい香りと旨味、そして強い渋みが脳天に突き抜けた。ちゃんと旨味も感じられるし、これ茶葉自体がめちゃくちゃ渋いタイプだな。基本はミルクを入れて、砂糖をお好みでっていう飲み方をする文化っぽい。
となりを見ると、俺の真似をしてそのまま口にしたライラがビシッと固まっていた。かわいい。
ライラのカップにミルクを入れてやり、かき混ぜた後に砂糖を多めに入れて更にかき混ぜる。出来上がった物を再び飲ませると、今度はとてもいい顔で「ありがとうございます」とお礼を言ってきた。かわいい。
「さて、改めて聞かせてもらおうか。ケント君の起源スキルはいったいどういったものなのだね?」
紅茶で一息ついてから、エアドリック卿がそう口を開いた。
まぁ聞きそびれた事って言ったらそれだよな。とはいえ、だ。
「実は……名称はわかっているのですが、具体的な効果というものが把握できていないのです。体験した効果であればお話しできますが、それ以上の詳細となるとサッパリでして」
「なるほど。そういえば君は、昨日この世界に渡ってきたのだったね。であれば納得だ。文献にも、渡ってきた直後ではスキルは未完成だと記されている」
文献詳しすぎでは??
なんでそんな痒いところに手が届く感じに記録されてるんだよ。
「さすがは渡り人本人が書いたという文献だ。高い買い物であったが、手に入れておいて正解だったな」
アッハイ。そりゃ詳しいわ。
俺もそれあとで読ませてもらおう……文字覚えるのめんどくさいから誰かに読み聞かせてもらう感じで。
「そういう訳だから、今分かっている範囲で構わないから教えてくれ」
「でしたら遠慮なく。今現在、発現しているスキルは四つです」
「ほう、四つもかね!」
「『警備の心得』『一号業務』『三号業務』『四号業務』の四つです」
「……なんだって?」
まぁそうなるよね。




