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「差し当たって、ケント君について詳しく聞かせてもらいたい。渡り人は例外なく、起源スキルが発現しているとの事だ。その如何によって、取れる手も大きく変わるのでな」

「……まずその起源スキルとやらが分からないのですが。普通のスキルとは違うので?」

「ふむ? 文献では起源スキルと呼ばれていたが……」


 起源、起源ねぇ……なんにしても、認識の擦り合わせが必要だな。

 わざわざ起源なんて仰々しいのが付くくらいだから、起源ではないスキルというのもあるんだろう。


「起源スキルというものの説明をしていただいても?」

「うむ。起源スキルとは、渡り人に発現されると言われている物で、名前の通り起源となるスキルだ。渡り人が子を成すと、生まれた子にスキルが発現する事があるが、そちらは継承スキルと呼ばれている。代を重ねるごとに確率は下がるが、血族はみな継承スキルが発現する可能性があるのだ」


 なるほどね、継承に対する起源と。この世界に無数にいるであろう、渡り人の子孫に発現したスキルと、その始祖である渡り人のスキルを区別するために、後の世の人たちがそう呼ぶようになったのだろう。あくまでそう呼んでいるだけで、たぶんステータスウィンドウの表記ではただのスキルなんだろうな。まぁこの世界の人も見ることができるなら、だけど。


「起源スキルの効果は絶大で、戦う能力であれば正に一騎当千と言える能力を発揮したり、それ以外の能力でも他の追随を許さないほどの成果を齎したりと、方向性は様々だがどれも規格外の物であったと伝わっている。対して継承スキルは、起源スキルと似通った性質は持ちつつも効果が限定的で、起源スキル程の影響を及ぼさないのだ。それでも、スキルが有るのと無いのとでは雲泥の差だがね」


 そりゃそうだろうな。例えば俺のスキル、今あるだけでも『警備の心得』『一号業務』『三号業務』『四号業務』あるが、判明している効果が部分的にあるだけでもかなり強いだろう。『三号業務』は戦闘用ではないにしろ、効果が弱かろうとも物流に革命を起こすことは間違いない。数が揃えられれば、だけど。


「起源スキルについて納得してもらえたかな?」

「えぇ、バッチリです。確かに、スキルは発現してます」


 その発言に「おぉ」という声がエドリック卿とジャンの口から聞こえた。どうやらジャンも気になっていたらしい。


「それで、どういった効果なのかね?」

「それは……」


 言ってもいいのだろうか。これを言えば、間違いなく協力を要請されるだろう。いつ始まるとも、いつ終わるとも知れない泥沼の戦争に巻き込まれるのは間違いない。能力を詳細に明かしていない今であれば、戦闘向けではないという言い訳も一応できる。

 ぶっちゃけ俺としてはライラが守れればそれでいい。乗りかかった舟というわけではないが、ライラを護っていきたいという強い思いがある。そのためなら、めんどくさくはあるけど力を振るう事に否やはない。

 だが、それはそれ、これはこれ。降りかかる火の粉は仕方なく払うが、自ら火の元へ近付きたくはないのだ。めんどくさいというのもあるし、近づくだけ危険が増えるというのもある。ライラを置いていくのも嫌だし、連れてくなんてもっての外だ。

 そんな風に考えていると、得心がいったという顔でエドリック卿が数度頷き、口を開いた。


「ふむ。ケント君は中々聡いのだね。であれば、包み隠さずに全てを話そうか」

「……それを聞いたら、もう後戻りできないなんて言いませんよね」

「もちろんだ。先ほどは引き込めたなどと言ったが、こちらはお願いしている立場だからね。仮に拒まれたとしても、まさか敵に与するなどという事はあるまい?」


 ちらりとライラを見てそう言う。まぁそうだな、それだけは間違いがない。

 仮に協力要請を断ったことでこの街を追い出されたとしても、帝国とやらに付くなどという事は絶対にありえない。もし仮にライラを人質にして協力を強制されても……まぁエドリック卿を見る限りそんな事はなさそうだが、その場合でもなんとか助け出して逃げ出すが、それでも帝国を頼るなど御免だ。


「……とりあえず、聞くだけなら」


 なんとかそれだけ絞り出すと、エドリック卿は「よろしい」と頷き話を始めた。


「まず我が領地と帝国の関係だが、昔から帝国が狙っていて、度々ちょっかいをかけられてはいたのだ。さすがに村丸ごと一つを襲われたのは初めてだがね。こちらを狙う理由はいくつかあるが、大きなものとしては二つ。一つは帝国自体が侵略的な体制をとっていて、隙あらば周辺国家の領地を狙っている事。そしてもう一つは、この領内に良質の鉄と石が採れる山があるという事だ」


 なるほど。この地は以前より狙われてはいたが、鉄と石の力でなんとか防衛し続けられていた、と。鉄も石も使って良し売って良しで、装備も設備も金も思いのままというわけだ。領主にとっても資金源だし、国としても手放したくはない地域だろう。そりゃ防衛にも力を入れるというものだ。


「以前から国境の平野部では戦っていたのだがね。まさか少数で侵入して村を襲うなどという恥知らずな事をするとは……」


 つまりこれまでは宣戦布告なりなんなりで準備期間が設けられ、それに合わせて防衛軍を組織して戦っていたが、帝国側で決戦ではなくハラスメントに路線変更するような何かがあったと。


「これが今回だけではなかった場合に備え、他の町や村の防衛も考えなければいけなくなる。そうなれば、はっきりと言って戦力が足りない。国王にも王国軍の派遣を打診するが、いつになるかわからぬしな」


 王国、ね。確かに急に要請されても、すぐには動けないだろうな。王都との距離もわからないし、行軍も時間かかるだろうし、来るのは一週間後か二週間後か……。どちらにせよ、その間に被害が拡大すれば目も当てられない。


「そういった訳で、戦力はあればあるだけいい。それが渡り人で、起源スキルがあるというのならば猶更だ。ケント君には是非とも協力してもらいたい」


 あー、やっぱりそうなるよなー……。

 確かに気の毒だし、心情的には協力してやりたい気持ちも無くはないけど、俺はライラさえ護れれば……と思ってライラを見ると、なんかすごい訴えかけるような目でこちらを見ていた。


「ケントさん……」

「う……」


 そう、だよなぁ……ライラとしてはそんな話聞いたら放っておけないよなぁ……。

 町によく行くとも言ってたし、知り合いもいるだろう。その知り合いが危ないかも、なんて聞かされたら、どうにかしたいと思うのは当然だよなぁ……。ただでさえ優しい子だし。


「……あー、もう、わかった、わかりました! 協力させてもらいます!」


 ヤケクソになってそう答えると、ライラの顔がぱぁっと明るくなり、尊敬の眼差しといった感じでキラキラした目をこちらに向けてきた。かわいい。

 ライラにこんな風に見られるのは悪い気がしないが、めんどくさい事には変わりない。

 なんか暖かい目で見てくるエドリック卿とジャンは無視し、ライラの頭を撫でて気を紛らわすのだった。

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