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絶対鎖国国家エルフの森  作者: 及川 正樹
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 二人は手を洗い終えると再び屋台へと向かった。先程まではお財布の中身と相談しながら何を買おうかと思案していた二人だったが、今は王の様に堂々たる歩みだ。


 二人は気になった食べ物を全部制覇する事にした。まずはシンプルに骨付き肉の屋台へと向かった。二人は骨付き肉を買うと勢いよくかぶりついた。表面は目が覚める位に塩っ辛い。


 香辛料など一切入っていない。男らしすぎる味だ。口の中の塩を中和する為に中の方の肉を食べる。それでもまだしょっぱいがそれは我慢する。


 この半分程度の塩でも満足できる気がするが周りを見ると男達が獣の様に肉を噛みちぎっている。超大陸では標準的な味なのかもしれない。


 腹に肉が入って少し落ち着いて来た二人であったが次に感じたのは塩っ辛さで倍増された喉の渇きだった。二人は周りの男達と同じように獣の目で飲み物を探した。


 やぎの乳にワイン、エール、水、ハーブティー等を見つけたが今の二人は王様気分なのだ。普段食べないようなお高い品を二人は求めている。すると野菜屋台にエルフの森では見かけないような楕円系のすいかを見つけた。


 店員に聞いてみると甘くて美味しいそうだ。王様気分の二人はすいかで喉を潤す事にした。店頭ですいかを切ってもらう。そしてすぐさまかぶり付く。口いっぱいに仄かな甘さと水分が広がった。


 道行く人からの視線が増したが二人はすいかを飲むように完食した。落ち着いた二人は顔を水で流すとすっきりとした心持になった。


 先程までは覇王の様な歩みをしていた二人であるが今では賢王の如き佇まいである。余裕が出てきた腹を撫でてから二人は次の獲物を探した。スープ系の食べ物を売っている屋台が多い。 


 しかしマサモリ達はスープ用のお椀を持っていないので買えなかった。お椀を買っても嵩張るので購入には躊躇してしまう。エルフの森では葉っぱ等でお椀を代用したり気合が入っている所では結界魔法で器を作っている場合もある。


 超大陸ではスープを飲むなら自分のお椀が必要なようである。二人の鼻が汚臭の中でも特徴ある匂いを嗅ぎとった。チーズが焼ける匂いだ。二人は一抱えもあるチーズを焼いている屋台を見つけた。


 周りでは男達が焼いたチーズをパンに挟んで食べている。二人はお互いを見合わせた。次のターゲットはこれだ。二人はチーズを増し増しにして柔らかそうな白パンでサンドした。


 強化魔法を口内にして熱々のチーズをそのまま食べる。この熱さもご馳走なのだ。チーズも塩味が効いている。しかし白パンと一緒なので程良い加減に落ち着いている。


 二人はチーズが冷めない内に懸命にパンを頬張った。隠れて護衛していた忍者エルフにもお金を渡して食べてもらった。二人の中の食欲もすっかりと落ち着いて静かになった。


 二人は辺りをぶらつきながら冷やかした。時折、スリが体当たりをしてきてお金を盗もうとしてくるがお腹が満たされた二人は素早く躱すだけで終わらせた。


 二人がゆったりと歩いていると色とりどりの果物が並べられている屋台に辿り着いた。見た事がない果物を見るとつい食べたくなる。食べ歩きしやすいような小さい果物を中心に買う事にした。


 ブドウ、小さな林檎、ザクロ等を買った。歩きながらチビチビと食べてみるがエルフの森の品種改良している果物に比べると酸味が強い。さっきのすいかもそうだが全体的に甘味が控えめのようだ。


 逆に酸っぱい方が色々と食べられて良いという面もある。甘すぎると糖分を取りすぎた罪悪感を感じてしまう。屋台の食べ物は全部銅貨で買える値段に調整されている。


 高めの物は切り分けられていたり少量にされているので色々な物を食べたかったマサモリ達には大いに助かった。食べ歩きをしながらもマサモリは周囲の話し声を収集した。


 マサモリとシラギクでは酒場等に入るのは難しそうなので市場を回りながら情報を集める。食料の値段も重要だ。足りなければ高くなるし、足りていれば安くなる。


 戦場が近ければ市場に出る食べ物も減ってくるだろう。武器屋や防具屋も見てみたいが子供が行く場所ではないので我慢している。町中を歩いているだけで突然蹴ってくる大人が居たのには驚いた。


 蹴り返して理由を聞いたら餓鬼の癖に生意気だからだそうだ。蹴り返した時に、手加減しなければ簡単に骨を折ってしまうところだった。超大陸は危険すぎるとマサモリは思った。


 夕方になる前にマサモリ達は町を出た。そして北東へ向かった。町を見つける度に情報を集めながら北東へと進んだ。旅費は全て盗賊から稼いだ。


 彼らは町の近くならどこにでも居るので助かる。そもそも町では宿を取らないので食費だけで済むの利点だ。マサモリ達は毎回食べてばっかりいるので次第に食料調達班になった。


 大人達は小食でも気にならないようだがマサモリは腹が減ってしょうがない。なら自分で買えばよい。マサモリは珍しい種を買いつつも町へ行くと最低二食分の食料を買い込んだ。


 主食となるパンが嵩張るのが悩み処だ。パスタは嵩張らないが毎度調理するのは面倒だ。パンを買い込むのが一番楽で良い。超大陸のパンはシンプルな物が多い。


 エルフの森で言うならご飯を炊いただけの状態だ。味付きの物はチーズや干しブドウが入っているのが精々だ。エルフの森の様に総菜パンという形態の物は少ない。


 だからパンを食べる時にはチーズやハムが必要になってくる。エルフの森に比べてパンは硬いが強化魔法を使えば気にならない。時間をかけてゆっくり食べると超大陸のパンの美味しさが分かる。


 食料の腐敗が早いのでどれも味よりも保存性が重視になっているのが残念でならない。どの料理にも死ぬほど塩が使われている。こんなものばっかり食べていたら体が塩漬けになりそうだ。


 塩と共に保存に使わるのは砂糖だ。砂糖は高価で庶民の手には届かない。しかし砂糖漬けは保存性を高めるのでお高いがそれなりに売っている。しかし食べてみるとこれまた砂糖漬けで素材の味が完全に消えていた。


 甘い果物よりもすっぱい果物の方が逆にすっぱ味が残っていて砂糖漬けにあう。エルフの森でも総菜パンはすぐ悪くなってしまうのでわざわざ結界魔法がかけられている場合が多い。


 超大陸ではそんな贅沢は許されていないようで保存性を高める為に結界魔法が使われているのをまだ見ていない。その代わり大量の塩で保存性を補っているようだ。


 それに全ての食べ物が過剰に焼かれ、煮られている。これも保存性を保つ為だろう。揚げたジャガイモや肉、魚が売っていた。しかし油の使い回しが長いようで油の色が悪かった。


 食べてみたいと思ったがもう少し油が綺麗な時にしようと思った。食に対する考え方は火力が正義なのだろう。火の通しが悪いと体に悪いと思っているのかもしれない。


 逆にエルフの森では生は素晴らしいという思想だ。生で食べられるという事は火を通さなくても安全で新鮮だという事になる。安全性に疑いがあるなら火は必須だし、新鮮でなければ火は必須だ。


 超大陸人の根底にあるのは食物に対する不安なのかもしれない。逆にエルフの森では食物に対する安心がある。だから生で食べられる物は尊ばれるのだ。


 マサモリはそこまで考えて卵かけご飯が食べたくなった。超大陸で生卵を食べたらマサモリ以外は腹を壊すだろう。魔法で回復できるだろうが一回腹を壊したら食物に対する不安感を持ってしまう。そうなると何か食べる時に常に気を付けなければならなくなって大変だ。



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