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マサモリは吸魔鉄の剣は使ってみてそれなりに手応えを感じた。魔力を吸うので汎用性が高い。どんな生物、無機物にも効くので何も考えなくても雑に使える。
しかし吸魔鉄の耐久性にはまだ問題があるようだ。かなり丁寧に使わないと壊れてしまう脆さを感じた。同格の相手との戦いになった時には数合斬り合っただけで折れてしまうだろう。
結局、当初の評価と同様になってしまったが魔力を吸収するという事の強さを実感できたのであった。そうなってくると、鋭さよりも硬さを重視した方が実用化までの時間が短縮されるのではないか。
このまま、素材としての吸魔鉄が進歩していけば吸魔鉄の鎧が出来るかもしれない。マサモリは期待に胸を膨らませた。
三人は最下層、いうなれば一階から少しずつ上に登っていった。戦力的には余裕があるが狩場の知識が圧倒的に足りていない。それを埋める為に少しずつ進んでいった。
余裕があるからといって上へ進むと同格もしくは格上の相手が同じような性質を持っていた時に対処できない。今のうちに下積みをしっかりする事で問題解決能力が上がる。問題にぶつかった時に力づくで解決していったらそれしか出来なくなる。それを防ぐのだ。
一階分上に登っただけで敵が実感できる程強くなった。魔ヤドリギは種を撃ってくる範囲が広がり弾速も上がった。同じ攻撃でもその強さによって対処方法が異なってくる。
例えばシラギクのように燃やすのは敵が強くなっても効果的だ。植物系は火に弱いものが多い。逆にタカチヨのように風で吹き飛ばしている場合は次第に本腰を入れて迎撃しなければならない。
マサモリだって吸魔鉄の吸収魔力量をヤドリギが大きく上回ってくると剣で防ぐだけでは不十分になってくる。単純な方法としてはマサモリの場合は水魔法が得意なので凍らせるという手段がある。
ただ、燃やすのに比べると劣る解決方法だ。マサモリは火魔法も問題なく使えるので燃やせば良いが例えば火魔法が使えなかった場合にどうするかという問題を考えておく。
敵の強さが分かったらその先の強さも予測し、対処も一緒に考える。常に一歩先の事を考えているといざという時に対処できるようになる。
『助けてっす!!』
三人が富士霊樹の下層を歩いていると念話が聞こえた。
『状況は?』
『兵隊蜂に囲まれてるっす。場所は下層の上の方、だいたい七階っす』
『すぐ行く!』
三人はゴーレムからコアを取り出して魔力反応がする上へと向かって行った。
『蜂のフェロモンがあるから近づかないようにしてくれっす。あにいが蜘蛛の巣に絡めとられているから巣を焼いてほしいっす』
帰り道に蜂に絡まれそうになったので逃げたのだが運悪く蜘蛛の巣に引っかかってしまったようだ。蜂に見つかってしまい蜘蛛の巣に絡めとられながらも応戦を続けているらしい。登っていくと遠くからでも戦闘をしている魔力を感じた。
三人が辿り着くとそこには無数の蜂の死骸が宙に浮かんでいた。目を強化して見てみると微かに糸のような物が見える。一人のエルフの戦士が空中に下半身を固定されながらも大きな斧を振り回して必死に巨大な蜂と戦っている。
それを援護しながらもう一人のエルフは樹々の間を跳ねて兵隊蜂と戦っている。兵隊蜂はマサモリ達が戦っていた蜂の倍以上の大きさであるが空中を機敏に動き回っている。
しかし大きすぎるせいか捕らわれた男へ同時に攻撃できる数は限られている。それ以外は距離をとって巨大な針を撃ち続けている。
『到着。よくわからないけど燃やすよ!』
シラギクが棍棒に魔力を集めて火を放った。すると火は何もない空中で壁にぶつかったように拡散した。空中には何も見えなかったがしばらくすると火が糸に燃え移って蜘蛛の巣の全容が明らかになった。
マサモリもシラギクよりは外側を狙って火を放った。巨大な巣は耐火性もあるようで中々燃え尽きない。もっと火魔法の威力を上げる事は出来るが富士霊樹を燃やしてしまったら大変な事になる。力はあるのに万全に振るえないのはもどかしいばかりだ。
巣の持ち主の蜘蛛は兵隊蜂の腹部だけを捻じり切って糸で包むとさっさと退散した。
『助かるっす』
タカチヨは風魔法を使った。風魔法は蜘蛛の巣を狙ったものではない。マサモリ達を護るように風の防御膜が展開された。そして何もない虚空へ向かって風弾を放った。
『鎌鼬が小さな風を起こして蜂のフェロモンをこちらに誘導している。魔法は減衰するけどしばらくは我慢して』
『全く気が付かなったっす。どうりでしつこく蜂に狙われると思ったっす』
「ヒヒヒヒ。ヒヒヒヒヒ」
何処からともなく現われた大狒々達がそんなエルフ達を嘲笑っている。マサモリ達へ向かって石や槍が投げられた。しかし風の防御膜はそれらを全て跳ね返した。
すると今度は戦っている二人のエルフへと矛先を変えた。マサモリが二人へ結界魔法をかけるか悩んだ。しかしマヨネーズ兄弟は善戦しているのでこれ以上の手助けは不要のようだった。
『……ず、……ず』
マサモリは、はっとして背嚢からマヨネーズを取り出した。表面には薄い氷が張ってあったがマサモリが握ると砕け散った。急いで蓋を外す。
そしてマサモリは三本のマヨネーズの容器に強化魔法をかけて念動魔法を使って風の防御膜が無い方向へと投げた。
マヨネーズがゆったりと弧をえがきながら捕らわれているエルフ、マヨ兄に向かって行く。そしてマヨ兄のマスクの前と左右に装着されるとくるくると回り、マヨネーズの容器が固定された。
『マヨネーズ装填、吸引!』
一瞬の内に三本のマヨネーズが空になった。すると急にマヨ兄から魔力が溢れ出した。
『うおおおおお、グッドマヨネーーーズ』
燃え盛る蜘蛛の糸を引きちぎってマヨ兄は迫りくる兵隊蜂を回転しながら全て切り払った。
『あにい! もう少し間引いたら撤退するっす。ありがとうっす』
『この前はありがとう! じゃあ移動するね』
『ふ、今度最高のマヨネーズを奢ってやろう』
マサモリは背嚢から残りのマヨネーズを取り出すと凍ったままの状態でマヨ弟へ向かってまとめて投げた。受け取ったマヨ弟は笑顔と共にサムズアップした。マサモリもサムズアップを返した。
マサモリは高みの見学を決め込んでいた大狒々の群れに突っ込んで蹴散らすとすぐに撤退した。下に行けば良いので逃走は容易い。しかし式神を展開して進行方向に飛ばした。
蜘蛛の巣があれほどまでの隠蔽性能があるとは思ってもいなかった。気軽に下に降りると不可視の糸に絡み取られていただろう。ゆっくり丁寧に探索していたのは間違いじゃなかったとマサモリは思った。
『撤退できたっす。マヨネーズもありがとうっす』
『ありがとよー!』
『どういたしましてー』
お礼の念話が飛んできた。以前にハナエが助けられた事があったので早めに借りが返せてマサモリは良かったと思った。それと同時にマヨ兄がマヨネーズを食べた時の魔力の高まりについて思いをはせた。
他のエルフがマヨネーズを飲んでも、ああはならない。特別な体質だ。趣味人の中には趣味を極めて異次元の存在になる者も居るがその例なのだろう。しかし得があれば損もある。
以前もマヨネーズ切れを起こしていたように燃費は相当悪いようだ。特にジェルセ結界に魔力を与えるようになったので顕著なんだろう。大変だなあと思いつつも短期決戦なら便利だろうなとマサモリは思った。




