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『着いたー!』
『富士霊樹だー。こんなに近くで見たのは初めて』
『ついにわらわは解放されるのね』
マサモリ達は喜びひとしおで富士山を下山した。毎日魔力をほとんど空にしただけあってか、短期間で魔力の回復量が上がったのを三人は実感したのだった。
しかし残念ながら魔石は一つも拾えなかった。ゴブリンの角や核で間に合ったので良しとしようとマサモリは思った。
「父さん、課題が終わったよ!」
「おう、おつかれ。早かったな」
「私達に掛かれば楽勝よ。次は富士霊樹に入れるんだよね」
「わらわは早く帰りたいわ」
「おめでとう。と言いたい所だが二人も気が付いているようにハナエはやり直しだ」
「ぼっ、わらわはしっかりしてたわ!」
「解除っ!」
「うわっ!」
ハナエはヒデヤスに解呪魔法をかけられた。するとハナエの像が揺らいで本来の姿が現れた。
そこに現れたのはマサモリが長老族の集まりで見た事のある男子だった。緑髪で中肉中背、中性的な容姿をしている。
「すいませんでしたぁ! 姉に無理やり身代わりにされて姉の代わりに富士山に登っていましたぁ」
「ハナエ弟も大変だね」
「ドンマイドンマイ。ハナエちゃん本人より助かったよ!」
「逃げた姉を捕まえてまた連れてきます!」
「安心しろ。逃げたハナエはちゃんと捕まえて、群馬村に送って鍛え直してもらっている。帰ってきたら富士山まで一人で行ってもらう。タカチヨが良ければ残って二人の修行に付き合って貰えないか?」
「はい! 僕は平エルダー後北条鷹千代。四十八歳です。よろしくお願いします! マサモリ、シラギク、騙しててごめん。出島村の村長の件はありがとう。姉なんかに任せてたら絶対に大変な事になってた」
「タカチヨ、よろしく!」
「よろよろー」
「……二人にもバレていたみたいだね。どうして?」
「朝はハナエに似て魔力が毒々しかったけど昼になると魔力が澄んで綺麗になってたからね。すぐわかったよ」
「そうか、魔力の総量が少なかったから回復魔力分も注意しなくちゃならなかったのか」
「あと、まじめに動いていたから、かな……」
「クズ姉が本当にすいません……」
「修行とは言ったがこれから先は自由行動だ。富士霊樹のダンジョンには十階以上は登ってはならない。それ以上登って死んだりしたら困るからな。現在、水エルフを中心にした部隊が海で星外生物と戦っている。戦況は圧倒的優位だ。ただ海が兎に角広い。海の星外生物を掃討するまでは数か月かかるだろう。超大陸への遠征は状況が動かない限りその後になるだろう。自由行動ではあるが長老族として皆を守る為に力をつけてくれ」
「「はい!」」
「富士霊樹に行こう! と言いたい所だけど一週間位、出島村に戻っていいかな?」
「いいよ」
「何しに行くの?」
「チムニーに設置した資源採取用の筒を回収、再設置しなくちゃならないんだ。プレートが動くからそろそろ行かないと離れすぎて見失っちゃう。他の事は俺が居なくても大丈夫なんだけどチムニーに行くのだけは俺が行かないと。負の魔素が強すぎて結界魔法が使える人じゃないと危ないんだ」
「なるほどー。僕も行っていいかな?」
「もちろん!」
「じゃあ、三人で行こう!」
三人は出島村に送る物資を購入した後に静岡村の転送陣から出島村へ移動した。
「殿! おかえりなさいませ」
「ただいま」
「あっ、初めまして平エルダー後北条鷹千代です。あ、よろしくお願いします」
「私はスッパ霧隠牡丹。忍者エルフです。よろしくお願いします」
「みんなは元気?」
「皆、壮健です」
マサモリが出島村に着くとすぐにボタンが迎えに来てくれた。タカチヨは何故かボタンに対し引き気味だった。そのまま食堂へ向かうと他の村人も集合していた。
お互いに自己紹介をした後に、マサモリは宇宙へ行った時の話しをした。戦いが終わった後に話す時間はあったがとても短かった。ゆっくりと腰を据えて話せるのは戦いが終わってから初めてだ。
「宇宙にはなんか珍しい物はなかったか? 隠しておったらただじゃおかんぞ」
「何もなかったよ。兎に角広くて暗かった。重力が無い事をあんなに恋しく思った事は生まれて初めてだね。それよりも星外生物の殻はどうだった?」
「まだ何もわかっとらん。研究が進めばあ奴らの弱点も分かるかもしれん」
「今回はチムニーに設置した資源回収用の筒を設置しに来たんだ。そろそろ回収時期だよね」
「そうじゃそうじゃ! マサモリにしては気が利くのう。今後も励むように」
「魔鉄の相場が上がっているから今の内に稼ぎたいのもあるんだよね。砂鉄もいっぱい買ってきたよ。後は博士が成果を示してくれると嬉しいなぁ。ねぇ、博士。博士には期待してるんだ」
「任せとけっじゃ! よーし、すぐにでもチムニーへ向かうぞ! 助手ーズ準備開始!」
博士は腕まくりしてスキップしながら準備を始めた。
「シラギクもタカチヨも行こう。蟹やら海老やらワームやらが大量に発生していて採取が大変なんだ。二人が居れば一気に楽になる」
準備が終わった一行はすぐさまチムニーへと向かった。マサモリがタカチヨ以外に呪い耐性に比率を置いた結界を掛けた。
「ここらへんじゃ」
印石を頼りに一行はチムニーに到着した。以前に見たようなキノコ形状になっている。しかし根元が人工的に設置した筒なので取り外しが簡単だ。最初は毎回チムニーをマサモリ一人で伐採していたので大変だった。
「シラギクがチムニーを回収して、俺が新しい筒を設置する。タカチヨは周りにいる蟹やら海老やらを吹き飛ばして」
「おっけー」
「了解」
シラギクが素早く近づいていって筒を両手で抱えてから反時計回りにずらした。すると筒が地面に刺さっている下の部分を残して簡単に取り外せた。
チムニーの上の方から異変を察知した蟹や海老が落ちてきたがタカチヨが風魔法で吹き飛ばした。シラギクもチムニーごと、へばり付いている蟹等を振り回して飛ばした。
マサモリは新しい資源回収用の筒をさっき残った筒の部分にはめ込んだ。とても熱いが三人でやったのであっという間に終わらせられた。
新しい資源回収用の筒は初期のただの大きな煙突みたいな筒とは違っている。その形はまるで樹のように枝分かれしている。
「チムニーには様々な鉱物が含まれている。しかし回収した後にそれを分別するのが面倒なんじゃ。今回の資源回収用の筒は最初から同じ鉱石が集まりやすいように設計されているのじゃ。これから徐々に試行錯誤して最適な形状を作り出すのじゃ」
なるほどなとマサモリは思った。
「つまり地下から噴出する物質によって最適な形状が変化する。設置する筒は全て異なるから絶対に間違ったのを付けるんじゃないぞ。間違ったらやり直しじゃからな」
どうりで樹のような筒の形状が全て違っていた訳だ。だから最高に嵩張って運びづらい。マサモリ一人では筒を持つだけでウニのようになっていたに違いない。二人が居て本当に良かったとマサモリは思った。
移動して枯れたり、プレートと一緒に遠くへ行ってしまうチムニーはしっかりと回収した。次も回収できそうなチムニーには筒を交換していく。
「次からは資源回収用の筒に結界を張る。わしが指示するからしっかりと結界を張るんじゃ」
チムニーに到着すると博士はそう言った。チムニーから漏れ出る熱水を結界で採取して博士が観察する。その情報を元に樹の様な回収筒の要所要所に結界を張っていく。
結界の入出設定はある程度決められるがさすがに元素レベルでは難しい。空気に含まれている元素なら慣れている為になんとかなるが金属元素は無理だ。
普段の生活で見つかける鉄と銅くらいで精一杯だった。博士の言う通りに結界を張って終わった物を設置していく。やっている事はいまいち分からないが試行錯誤するは楽しい。
途中、タカヨチが呪い酔いをしたのでその日はそのまま帰宅した。
後半の作業に時間がかかってチムニー回収には二日かかった。博士は回収したチムニーの分析に二週間引き籠っていたそうだ。
貝から魔鉄を回収するのにもう二日かかった。




