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マサモリは以前ヒデヤスから言われた言葉が喉に刺さった小骨のように気になっていた。というわけでもなかったがボタンは超大陸の事を知っていそうだからとりあえず話しを聞いてみた。
「知れば知る程、殺したくなる。それがドワーフです」
夕食時にマサモリが先日の事を話すとボタンが熱く語りだした。超大陸の人全般の事を聞いたんだけどなとマサモリは思った。
「私も全てを知る前はドワーフなど亜人の一種だと思っていました。あの頃の無知だった自分を絞め殺したい気分でいっぱいです」
ドワーフの性質は背が低く、魔力が低く、頭が良く、手が器用で身体能力が高い。寿命は二百歳位と言われているが空気の綺麗な環境で一生を過ごせばもっと伸びるかもしれない。
ドワーフは種族として総合的に優秀な部類に入る。欠点と言えば魔力の低さくらいだ。背が低いのも欠点だが狭い坑道に入られると欠点は利点に変わる。
そして種族的嗜好が最大の問題になってくる。鉱物、鉱石が大好きで、それを加工するのが大好きだ。ついでに酒も好きだ。探求心が豊富で普通の人が躊躇うな事も簡単に踏み越えていく。
エルフの種族的嗜好は木や緑を好む事や、森で生活したがる程度である。ドワーフはその優れた総合力と種族的嗜好が合わさって最悪の種族となってしまった。
ドワーフは賢い。彼らは技術や経験を蓄えて進化させていく。
ドワーフは器用だ。彼らの手先は様々な物を生み出す。そのうえ新しい物を作るのが大好きだ。
ドワーフは強靭だ。穴倉生活で空気が悪くても日に当たらなくて粗食でも元気いっぱいだ。酒だけ飲んでれば毎日がハッピー。
ドワーフは石が大好きだ。石を見つけたらどんな場所にあっても掘り返す。掘り尽くす。
ドワーフの石に関する嗅覚は肉食獣のそれである。彼らは日夜様々な場所を放浪してお目当ての鉱物を探す。
ドワーフが良い鉱石の埋まっている山を見つける。
ドワーフが群がる。
山を掘り返す。
次第にドワーフが増えてきて村が出来る。
ドワーフは鉱石を手に入れると何か作りたくなっちゃう。
木を切って薪にしたり製鉄する燃料にする。
鉱物を精製したり、有害な物質が出てきたりしてなんか体に悪い水が出ちゃう。
でも大丈夫。
ドワーフは強靭なので酒を飲んでれば大丈夫。
ドンドン木を切っちゃう。
面白そうな事してるじゃん、ドワーフが増える。
山から流れ落ちる水は毒水に変わり、森は禿山になる。
土砂崩れが起きる。そして下流の村や人は死ぬ。
ドワーフはなんか知らないけど空気も悪くなってきたし土地も汚れてきたので別の場所に移動する。
新天地でジャンジャン掘るぜ。
エルフは早い段階で彼らの性質を理解した。木をやたら切るから重要注意人物として見張っていたのだ。だが掘り返しから山崩壊までの期間が長い為、他の種族は理解できなかった。
逆にドワーフからもたらされる商品に目が眩み、五月蠅く言うエルフを疎ましく思う者が多かった。
エルフは木を切るなと何度もドワーフに注意した。しかしドワーフは一向に聞き入れなかった。ドワーフは魔法が得意ではなかったので製鉄する時には木をこれでもかというほど使う。
エルフは諦めてドワーフが伐採した後に木を植え直した。しばらくすると成長した木が伐採された。エルフの腸が煮えくり返った。そしてエルフとドワーフの関係が悪化の一途を辿る。
山で事故が起きたりするとドワーフがエルフのせいにするようになった。エルフのせいにしていく内に本当にそうだと思い込んで怒りをエルフにぶつける輩が出てくる。
ドワーフの中にエルフ排除論が生まれた。ドワーフが原因なのにエルフが原因かの如く言いふらされてエルフの堪忍袋の緒が切れた。そして木を伐りに来たドワーフに向かってエルフの矢が放たれた。
こうしてエルフとドワーフの関係が一触即発のものとなった。ドワーフは何をするにせよ木は必要だったので引くことはできない。
昔エルフがドワーフに木を節約する為に自分で魔法を使えと言った。ドワーフだってしっかり鍛えれば魔法は唱えられる。しかし言われたドワーフは顔を真っ赤にして逆上した。
ドワーフは自分達の魔力が少ない事に大きな劣等感を抱いていたのだ。それを魔力の多いエルフに言われてどうしても許せなかったのだろう。
結局、エルフは森を守る為に弓を取らざるえなかった。
数年、十数年ではわからないが数十年もすると他の亜人もドワーフが居た山は崩壊すると経験則で理解するようになった。しかしそれを理解しているのは少数の知識層と長寿な種族だけだった。
だからといって知識層がエルフを味方するかと言われると絶対しない。知識層は賢いのでドワーフとエルフの諍いに油を注いで自分が得をしようと利用した。
それにドワーフの作り出す物は高品質で先進的なのだ。買わない手はない。
最近では銃がその最もたる例だ。戦えない者でも銃を持てば真面目に修行した戦士と戦える。銃があれば修行してない一般人に戦士並の攻撃力を持たせられる。特に人口が多い普人と相性が良い。
吸魔石の弾丸を使えばどんな種族にも効き目は抜群だ。だが吸魔石は扱いが難しくほとんど使われてこなかった。
そこで魔石弾が作られた。魔石弾は扱いが難しく、取り扱いに失敗すると魔石弾を撃とうとした時に暴発してしまう。威力も高いので銃を撃った本人だけではなく周りにも被害が及ぶ。
その威力は凄まじいもので大型の魔物を狩る時に使われている。しかし高価だ。魔石の保有する魔力に比例して攻撃力と加工の難易度が上がる。魔石弾を使ってもその費用が回収できるのは大型の魔物くらいだろう。
だが争いが絶えない超大陸では急速に魔石弾が広まった。力ない者でも力ある者を倒せる唯一の手段だからだ。すると力ある者も銃を手にした。
銃が大量に生産され、洗練されていく。今現在も銃は進化を続けている。
もし黒船が吸魔石の弾ではなく、魔石弾を使ってきたらどうなっていただろうか。エルフの結界にも、エルフの戦士達にも効かなかっただろう。
今はまだエルフの結界や強化魔法が魔石弾の威力を上回っている。しかし魔石弾が進化していって威力が増したらエルフの強化魔法を打ち砕くだろう。
銃を持っているだけでエルフを傷付けられるようになったら後は超大陸のエルフと同じ末路を辿るのみだ。




