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定期輸送の時間になった。マサモリにとっては慣れた作業で、問題なく白船を宇宙へと打ち上げた。
白船は大気圏輸送結界に沿って宇宙へ飛び出す。マサモリは一瞬の出来事を見逃さない為に強化魔法を最大にして視覚を最大限に強化した。
マサモリは眩い光と共に一瞬だけ目の前に無数の岩が映った。反射的に体がビクリと動く前に白船に衝撃が走った。
結界の中でもその衝撃は凄まじく三人は白船内を跳ね回った。マサモリは強化魔法をしていたお陰で大事には至らなかったが二人の安否を確かめた。
「二人とも大丈夫?」
「私は大丈夫だよ」
「いてて、なんだあれは」
マサモリは外の式神を通して全方位を見た。ジェルセには先程白船にぶつかったと思われる無数の隕石が尾を引いて落ちている。
その範囲は広く、エルフの森の全体に隕石が向かっている。しかしエルフの森から魔法が撃ちあがって隕石は破壊されていった。マサモリは少しほっとした。
宇宙には建造物を基点にして出来たと思われる巨大な結界があった。しかしジェルセの大きさに比べるとほんのわずかな領域しか守れていない。
展開している結界には多くの円錐状の流星が火花を散らしながらぶつかっている。宇宙からの流星を守る為の最小限の範囲の巨大な結界なのだろう。
結界は水玉模様に孔が空けられている。先程の隕石によって空けられたのだろう。少しずつ孔が塞がってすぐ元通りとなった。
遠目には隕石によって破壊された補給物資が宇宙空間に散り散りになっているのが見えた。
一目でエルフが劣勢だと見て取れた。エルフの結界が星外生物の突入を防いでいるが隕石は通してしまった。つまり隕石を止める余裕がなかった事を意味している。
補給のタイミングを読まれて隕石を放たれたと考えた場合、次の補給も邪魔される可能性が高い。
白船は隕石の衝突によって射出される方向が大いにズレた。そして射出された勢いのまま、ジェルセを覆うジェルセ結界の外に飛び出した。
ジェルセ結界は太古の昔からある結界だがほとんど効果が無く、ジェルセの空気を守る為にあると考えられている。
マサモリはすぐさま宇宙からジェルセ結界の中に戻ろうとしたが初めての宇宙空間で船の操作が覚束ない。話しには聞いていたが宇宙空間は重力がないので白船を操作するのが難しかった。
星外生物とは別に隕石が再び放たれた。エルフの結界に阻まれるが大きい隕石は防ぎきる事はできない。結界を突き破って隕石が降ってくる。
マサモリは白船に結界を張った。隕石が白船に衝突する。すると白船はビリヤードの玉の様に隕石とは逆方向に弾き飛ばされた。
重力や大地が無いと船の位置を固定するのも困難だ。マサモリは船の操縦に四苦八苦しながらエルフの結界に近付こうとした。
結界に近づくとマサモリは東京村タワーを探した。東京村タワーは一際大きいのですぐ見つかった。
『……が……し……! ……機……た……!』
広域念話が普段よりか細くて上手く感じ取れない。とにかく合流して話しを聞こうと東京村タワーに向かったが思った以上に距離が離れている。
エルフの結界によって阻まれていた円錐状の流星が一斉に弾き返された。長い鍔迫り合いはエルフ側が勝利したようだ。すると星外生物は徐々に集まり一塊になり始めた。
エルフの結界の中から魔法が放たれて合体を防ごうとするが星外生物の数には敵わない。エルフ達の目の前に星外生物の巨大な集合体が生まれた。まるで星を思わせるそれは再びエルフの結界を破るべく動いた。
マサモリはスケールが大きすぎて東京村タワーに合流した方が良いのか逃げた方が良いのか分からなくなってしまった。サビマルに意見を求めようとするがサビマルの顔を見れば彼もどうすれば良いか分かっていないようだ。
『集合体が来るぞ! なんとかしてあれを防げ!』
ついに白船は念話が聞こえる範囲に到達した。
マサモリ達は状況が全く分からないがとにかく結界まで行って迎撃を手伝う事にした。マサモリとシラギクは甲板に飛び出した。シラギクは船首に建つと吸魔樹の棍棒に魔力を注いだ。マサモリは両手を広げて巨大結界に魔力を注いだ。
吸魔樹の中心部に炎の玉が生み出された。すると吸魔樹から根が生え、炎を支えるように覆った。吸魔樹の根はなおも伸び続けてシラギクの体をしっかりと白船に固定した。
シラギクと吸魔樹は一体となって、巨大な砲台となった。徐々に炎の玉が大きくなってくると、火に炙られるような熱がマサモリ達を襲った。
星のような敵の集合体とエルフの巨大結界がぶつかり合った。各建造物から攻撃魔法が放たれる。一つ一つが敵の流星を破壊するに足る威力を秘めている。
シラギクも同様に棍棒から溜めていた炎を放った。白船が激しい衝撃と共に真後ろに吹き飛んだ。魔法が当たった部分は隕石のような敵集合体に穴を空けられるが暫くすると内部から増援が来て穴を塞がれる。
別の穴が空いた場所に魔法が撃ち込まれて次の瞬間に大爆発を起こした。それでもしばらくすると増援が現われてすぐに穴は塞がれた。集合体の穴の修復速度は下がっているが我慢比べでは敵に一日の長がある。
隕石のような集合体がエルフの巨大結界とぶつかり眩い光、熱、衝撃を放つ。強化魔法をかけていなければ瞼を焼く光は衝突の激しさを物語っている。吸い込まれそうな宇宙の暗闇の中でここだけが生命の輝きに満ち溢れている。しかしエルフの巨大結界は徐々に押され始めた。
敵の集合体も徐々に体積を減らしているが全体的に見れば軽微だ。敵の攻勢は未だ衰えていない。何より数が圧倒的に多い。圧倒的に多い敵の正面からの突撃は様々な策を凝らした攻勢よりも数の少ないエルフ達には効果的だった。
「不味い。サビマルどうすればいいんだ! 結界がもたない」
「私も少ししか役に立ってない気がするよ!」
「わからん! シラギク頑張れ!」
「頑張ってるよー!」
マサモリは初めて死ぬかもしれないと思い始めた。いや、今までのつらい修行の日々で何度も思った事はあったが本当に死にそうなのは初めてだ。しかしマサモリはサビマルを信じた。
「何かできるはずだ! 全然わからないけど!」
「私は考えるのは苦手なのー!」
「活路は必ずある! くそおお!」
エルフの巨大結界と敵集合体の衝突はまだ続いている。不意に後ろの方向からの攻撃を受けた。新手の敵がジェルセの結界で推力を減らしながらも巨大結界を大きく迂回して結界の裏側に攻撃を加えてきた。
それを防ごうと魔法が放たれる。迂回した敵を排除する事は出来た。しかし正面への攻撃が減って、敵集合体は巨大結界に押し込んできた。
巨大結界に亀裂が走った。エルフが焦って結界を守ろうとするが一度傾いた天秤を押し戻す事は出来ない。亀裂が徐々に広がっていき、巨大結界は砕け散った。




