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絶対鎖国国家エルフの森  作者: 及川 正樹
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 二人が目を開けると空気と魔素が出島村とは違っている。二人は転移陣から出て建物の中を見回した。簡易的な地図がある。現在地は東京村の西の山奥の様だ。


「あんまりこっちに来たことがないから方角しかわからない」

「大丈夫だよ。周りを見ながらゆっくり行こう」


 マサモリは偵察用と誘導用の式神を飛ばした。樹海では偵察をボタンやサビマルに任せていたが警戒を忘れてはならない。自宅に行き先を設定している誘導用の紙飛行機型の式神はゆったりと飛んだ。


 二人は強化魔法をかけて木に登ると、木の枝を足場に飛び出した。しばらく木の間を飛び回っていると式神の視界に奇妙な物が映った。


「なんだあれ。蔦が人に絡まっているみたいだぞ」

「助けなきゃ!」


 二人は加速して現場へと向かった。そこには全周囲から伸びる蔦に絡めとられたエルフが居た。蔦に埋もれていて完全に体から力が抜けてぐったりしている。しかし中からは濃い魔力反応がする。


「大丈夫ですか」

「大丈夫ッタ。私は蔦婆ッタ。蔦に絡まれるのが大好きで日差しの良い日は蔦に絡まれながら日向ぼっこするのが趣味ッタ」


 顔に絡まっていた蔦が目と口の部分だけ開いた。魔力からは古めかしい重圧が感じられるが外見は若い。


「この魔力は東京村の若ッタ。出島はどうじゃッタ」

「順調だよ」


「蔦婆、私も蔦に絡まってみたい」

「俺も!」

「わかッタ。楽しむッタ」


 すると周りの蔦が蛇のように動き出した。そしてマサモリとシラギクに絡みついてくる。


「ぐわーっ! く、苦しい」


 シラギクが首を締め付ける蔦を掴んで苦しんだ振りをした。


「た、助けてー」


 マサモリは手足をバタバタと動かした。しばらく楽しむと次は上下前後左右に体を揺らした。蔦は魔法が通されていてかなり弾力があったので強く動いでも解けない。不意打ちで体に纏わりつかれたら厄介だなとマサモリは思った。


 シラギクは単純に遊んでいるがマサモリはこれを訓練だと考えて色々試した。結果、強化魔法を使って無理やり剥がすよりも氷魔法で蔦を凍らせた方が効率が良かった。しかし捕まえられる前なら強化魔法の方が応用力があるので難しい所だ。


 マサモリとシラギクが無邪気に遊ぶ様子を蔦婆は微笑ましそうに眺めていた。


「「ありがとうございました」」

「いいってこッタ。私も楽しませてもらッタ。また来るッタ」


 樹海にも蔦で攻撃してくる樹が居るので思いの外良い経験になった。今度自分で真似て遊んでみよう。


 東へ東へ進んでいくとマサモリは記憶の中にある風景を見つけた。


「ここか。もう少しだよ」

「うん」



「ただいま!」

「お邪魔します!」


 マサモリは寄合所がある枝の少し上の枝にある大きめの家に入った。


「おかえり」

「おー、マサモリ! よう帰った」


 家にはマサモリの祖父母が居た。


「ささっ、お菓子をお食べ」

「シラギクちゃんはめんこいねえ」

 

 お菓子やせんべい、果物の入ったお盆をずずいと渡された二人はすぐに手を伸ばした。


「式神を飛ばしたばっかりなのに早かったわね」

「式神は三通来たけど何通飛ばしたの?」


「三通飛ばしたぞ。遠い割には良く届いたのぉ」

「出島村からも三通飛ばしたよ。いつ来るかなあ」


「出島村の話しを聞かせておくれ」

「いいよ」


 マサモリとシラギクは出島村での出来事を嬉しそうに頷く祖父母に話した。


「「ただいま」」

「「「おかえり」」」


 日が暮れてくると父のヒデヤスと母のアオイが帰って来た。


「マサモリ達も来てたのか」

「あらあら、シラギクちゃんお久しぶりねー」


「久しぶり」

「お久しぶりです」


「シラギクちゃんは若いのに親元を離れて偉いわねぇ。お家には帰るの?」

「遠足で浅間山に行くから帰りに寄ってく」


「どう? 出島村は楽しい?」

「楽しいよー。武者エルフ達と樹海を見て回ったりご飯作ったり。超大陸の人達は弱いけどちょっと怖いねー」


「子供にはやっぱり早すぎたかなー?」

「こっちが優しくしても全然話しを聞かなくて困っちゃったよ。今ではバシバシお仕置きしてるんだ」

「そうか。でも調子に乗りすぎちゃ駄目だぞ」


「うん、武器を持って連携されたら不味いね。近づけさせちゃ駄目だ」

「ふむ……。何か足りない物は無いか? 輸送は難しいから小さい物ならなんか持って行ってもいいぞ。食料は大丈夫か?」

「あらあら、お父さんったらー」


 久しぶりの一家団欒は夜まで続いた。



 遠足の前日、マサモリとシラギクは東京村の小学校を訪れた。同じ班になる小学生と顔合わせをする為だ。


 「おはようございます。私は小学校三年生の教師をやっています、加藤くまです。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

「お二人には彼らと一緒の班になってもらう予定です」


 校庭に案内されるとそこには男子が一人に女子が二人、こちらを興味深そうに眺めていた。


「三人は先輩になりますからしっかりと下の子の面倒を見てくださいね」


 すると赤髪の背の高い男子が歩み出た。


「俺は田中紅太郎。小学三年生の三十二歳だ。エルフ最強の男を目指している。長老族だからって舐めた口聞いたら消し炭にするぞ!」

「田中君、下級生には優しくしなさい」

「ふんっ」


 エルフは二十四歳になると小学校を通う。二十八歳になると小学二年生、これ以降は四年刻みで学年が上がっていく。小学六年生で卒業して次は中学生になる。


 中学を卒業したら高校、高校を卒業したら大学や専門学校、就職と進む。全ての学年は四年刻みになっていて、七十二歳で高校を卒業する。


 マサモリは二十歳、シラギクは二十二歳なので小学三年生のベニタロウとは十歳以上離れている事になる。一般的な樹海のエルフは八十歳程度で身長の伸びる時期が終わる。成長の速度と成長限界には個人差が激しい。


 ベニタロウは成長が早い方で既に身長は百五十センチを超えている。マサモリは素直に小学生ってでかいと思った。


「あたいは泉りつ。小学三年生の三十四歳。よろしくね」


 緑色の髪をした百三十センチ程度の女子だ。握手を差し出してきたので二人は順に握った。


「うちは高橋たえ。小学三年生の三十二歳です。よろしく」


 茶色の髪をしていて先程のりつに比べると少し背が低い。シラギクとりつの間くらいの背の高さだ。


「おい、お前達! 長老族の力をやらを見せてもらおうじゃないか!」

「こらっ。年下をいじめちゃ駄目でしょ」


「別にいいよー。私がボコボコにしてあげるわ」

「ほお、女のくせに言うじゃねーか! 体育館へ行くぞ」


「えっ、いいの?」

「シラギクがいいって言うなら良いと思います」


 先生は少し戸惑っているがシラギクとベニタロウは一直線に体育館へ駆けて行った。二人の女子がそれを追う。マサモリもそれに続いた。


「二人ともやりすぎないようにね。始めっ」


 ベニタロウがシラギクへと詰め寄った。まずは強化魔法無しでするようだ。ベニタロウが速度を乗せた右ストレートを放つ。しかしシラギクはそれを避けながら距離を縮め浅く鳩尾を打つ。


「ちっ」


 ベニタロウは衝撃を逃す為に後ろに飛ぶ。距離を詰めようとするシラギクに向かって腕を伸ばした。高い身長から伸ばされる手に捕まれる事を嫌ってシラギクは前進を止めて手を払った。


 シラギクが距離を詰めようとするがベニタロウは自分の身長を生かしてより離れた間合いを保とうとする。


 しかしベニタロウは慎重なシラギクに我慢できなくなって中段に蹴りを放った。シラギクは左腕で足を受けて右手でその足を殴った。


「くそっ」


 足の痛みをこらえてふらふらとベニタロウは後ずさった。そして強化魔法を使う。シラギクもそれに合わせて強化魔法を使った。


 ベニタロウはシラギクの準備が整う前に体当たりをした。シラギクも同じように体当たりをする。シラギクは潜り込むように下へと体を移動させた。正面から当たるつもりだったベニタロウは虚をつかれた。


 二人がぶつかり合った。先程の足の痛みからベニタロウは踏ん張りが効かずに盛大に転がった。


「いてて」

「ふっふっふ、若いな」


 シラギクがいつもとは違う芝居がかった感じで勝ち誇った。誰かの真似をしたのだろうか。


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