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送り狼  作者: セルビス
21/23

のんびり放浪記21

翌朝。


 薄緑の服は、女将が洗って裏庭に干した。


「今日着る」


「乾いてない」


「…………」


「明日な」


「うん」


 リラは代わりに茶色の古着を着ている。


 気に入っている緑ほど嬉しくはないらしいけど、不満を言うほどでもないらしい。


 朝飯の卵を食べ始めたら、服のことは一旦忘れた。


「おいしい?」


「うん」


「良かったね」


「ウバメ」


「何」


「たべない?」


「食べてる」


「おそい」


「朝から急かすな」


 昨日の夜より、少しだけいつも通りだった。


 それでいい。


 今日は、いつも通りに動くと決めている。


 銀鍋亭を出る時間も同じ。


 通る道も同じ。


 仕事も休まない。


 違うのは、こっちが昨日より少し多く周りを見ていることくらいだ。


     ◇


「衛兵いない」


 市場へ入ったところで、リラが言った。


「いるよ」


「どこ?」


「知らない」


「?」


「私も知らないようにしてるんだって」


 昨夜、衛兵から言われた。


 制服姿で仕事場を囲めば、相手が警戒する。


 だから今日は、私服の衛兵が何人か仕事場とその周辺へ入ることになっている。


 誰なのか全部教えろと言ったら断られた。


『お前、知ってる奴の方ばっかり見るだろ』


 だそうだ。


 ちょっと腹が立つ。


 でも、言ってることは分かる。


「ウバメ」


「何」


「あのひと」


 リラが市場の向こうを見る。


「いつも」


 果物を並べている婆さん。


「いるね」


「こっち」


 今度は荷車を押す男。


「それも昨日いた」


「パン」


「今日はもう覚えた?」


「うん」


 パン屋と果物屋を間違えない。


「偉い」


「うん」


 自分で認めるところは相変わらずだった。


     ◇


 仕事場に着く。


「遅くねぇな」


 親方の最初の言葉がそれだった。


「普通です」


「最近まともに朝からいる方が珍しいだろ」


「いろいろあったの」


「知ってる」


「なら言わないで」


「仕事は仕事だ」


 それも正しい。


「リラは?」


「昨日言った通り、俺の近くだ」


「うん」


「知らねぇ奴についてくなよ」


「うん」


「ウバメが呼んでるって言われても?」


「ウバメ、みるまで、いかない」


「よし」


 親方が木箱を自分の作業場所のすぐ横へ置く。


 針。


 糸。


 破れた麻袋。


「今日は一枚ずつやれ」


「うん」


「終わったら俺に見せる」


「うん」


「勝手に別の袋持ってくんな」


「うん」


 いつもより細かい。


 リラも分かっているらしく、今日は文句を言わなかった。


「日雇いは?」


 小声で聞く。


「昨日の五人のうち、来たのは三人」


「ベイル」


「いねぇ」


「マロ」


「いる」


「もう一人の新しい人」


「いる」


 ベイルだけ来ていない。


「怪しい」


「昨日も言ったろ。決めつけんな」


「分かってるよ」


 分かってる。


 来なかった。


 それだけ。


 今日たまたま別の仕事を取ったのかもしれない。


 腹痛が続いているのかもしれない。


 そもそも、日雇いなんだから毎日ここへ来る理由もない。


 分かってるけど。


 気になるものは気になる。


     ◇


「犬のあんちゃん、南側頼む!」


「犬じゃねぇ!」


 反射で返してから、相手を見る。


 古株。


 昨日もいた。


 その前もいた。


「何だよ」


「いや」


「急に顔見るなよ。怖ぇよ」


「今、皆の顔覚えてる」


「今さら?」


「今さら」


 石を持ち上げる。


 今日は周りを見るだけで手を止めない。


 昨日親方に散々言われたから。


「お、成長したな」


「うるさい」


「褒めてんのに」


 運ぶ。


 置く。


 戻る。


 その途中で、見覚えのある男がいた。


 作業着。


 頭に布。


 古い革袋を肩から下げている。


 昨日まで人足にいた?


「…………」


 見たことはある。


 どこ。


「ウバメ」


 呼ばれる。


 振り向くと、その男がほんの少しだけこちらへ顎を引いた。


「…………あ」


 空き家を調べた時にいた若い衛兵だ。


 今日は完全に人足の格好をしている。


 何でこいつは教えてくれたんだ。


 目が合ったから?


 若い衛兵はすぐに知らない顔へ戻り、別の人足と一緒に石屑を運び始めた。


「下手だな」


 ぼそっと言う。


「何が」


 古株が聞く。


「何でもない」


     ◇


 昼前。


 私は北側で石を運んでいた。


 親方とリラは見える。


 近い。


 大丈夫。


 そう思っていた時だった。


「ウバメ」


 声がした。


 大きくはない。


 でも。


 いつもの呼び方と違った。


 振り返る。


 リラが立っている。


 針は持っていない。


 両手も袋から離していた。


「どうした」


 歩いて戻る。


「そこ」


 リラが麻袋を指した。


 親方も作業を止めている。


「何だ」


「におい」


 足が止まった。


「変な?」


「うん」


「どれ」


 リラが指す。


 まだ手をつけていない麻袋。


 親方が次に直させるつもりで、木箱の横へ置いていたものだった。


「触った?」


「さわってない」


「親方」


「俺が持ってきた」


「どこから」


「あっちの山だ」


 仕事場の端。


 破れた袋や使い終わった袋をまとめて積んである場所。


「誰がそこに置いた?」


「それが分かりゃ苦労しねぇよ。使い終わった奴が戻す」


 私は袋へ近づく。


「触るなよ」


「分かってる」


 親方に止められる前に、手を引っ込める。


 学習してる。


「リラ」


「うん」


「どこが匂う?」


 少し離れたまま聞く。


 リラが袋を見る。


「ここ」


 指したのは、袋の口。


 縫い合わせた布が重なっている辺りだった。


「他は?」


「…………」


 鼻を動かす。


「ここも」


 今度は側面。


 黒ずんだ染みがある。


 煤なのか。


 泥なのか。


 分からない。


「親方」


「待て」


 親方は周囲を見回した。


「おい、お前」


 呼ばれたのは、例の若い衛兵だった。


 変装。


 もう意味ない。


 いや。


 周りにはただの人足に見えるのか。


「何すか」


 演技。


 下手。


「この袋、衛兵んとこ持ってけ」


「親方」


「何だ」


「ばらしていいの?」


「もう嬢ちゃんが気づいた。ここに置いとく方が面倒だ」


 確かに。


 若い衛兵も理解したらしい。


「分かった。……じゃなくて、分かりました」


「下手」


「聞こえてんぞ」


 やっぱり。


     ◇


 袋はすぐに別の場所へ移された。


 触ったのは親方と衛兵だけ。


 私は近づかなかった。


 というより。


 リラから離れなかった。


「大丈夫?」


「うん」


「頭痛いとか」


「ない」


「気持ち悪い?」


「ない」


「疲れた?」


「だいじょうぶ」


「本当に?」


「ウバメ」


「何」


「いっぱい」


「……ごめん」


 聞きすぎた。


 親方が少し離れた場所から言う。


「嬢ちゃんが自分から気づいたんだ。昨日より上等だろ」


「そうだけど」


「なら、それでいい」


「…………」


 リラを見る。


「偉かった?」


「うん」


「うん」


 本人。


 先に答えた。


「じゃあ偉かった」


「うん」


 耳が少し立つ。


     ◇


 昼休み。


 若い衛兵が戻ってきた。


 今度は堂々と。


 でも制服ではない。


「袋、詰所に回した。ガルドにも見せる」


「同じ粉?」


「見た限りじゃ、それっぽいのが縫い目に入ってる」


「じゃあ昨日の服は」


「待て」


「何」


「まだ決めるな」


「…………」


 先に言われた。


「袋から移った可能性はある。だが、その袋がいつ汚れたかは分からん」


「今日?」


「昨日かもしれん。その前かもしれん」


「ずっと前?」


「ガルドが調べるまで分からん」


 親方も隣で聞いている。


「袋の流れ、分かる?」


 聞くと、親方が少し考えた。


「全部は無理だ」


「全部じゃなくていい」


「嬢ちゃんの言ってた袋には、丸がついてた」


「丸?」


 リラが反応する。


「りら」


「お前の?」


「うん」


 思い出した。


 リラが袋を直し始めた頃から、修繕したものには炭で小さな丸を付けている。


 最初は親方が見分けるためだった。


「昨日直したやつ?」


「いや」


 親方が首を振る。


「丸が薄かった。昨日今日じゃねぇ」


「いつ?」


「二、三日前じゃねぇか」


 リラがここで袋を直すようになってから。


 そのどこか。


「じゃあ、その間ずっと使われてる」


「ああ。細かい石入れたり、瓦礫運んだりな」


「誰が使ったか」


「分からん」


「…………」


 難しい。


「でも」


 親方が続けた。


「昨日、あの袋を見た覚えはある」


「どこで」


「南側だ。荷運びに使ってた」


「誰が」


「そこまでは――」


 言いかけて。


 止まる。


「何」


「マロだ」


「…………」


 昨日もいた新顔。


 今日もいる。


「マロが使ってた?」


「ああ。ただ、一人で使ってたわけじゃねぇ。袋に石詰めた奴もいるし、空になった後に戻した奴もいる」


「ベイルは?」


「分からん」


「…………」


「だから決めつけんな」


「分かってるって」


 本当に。


 今度は。


 分かってる。


 マロが使ったからマロ。


 ベイルが休んだからベイル。


 そんな単純じゃない。


「マロ、今日いるよね」


「ああ」


「どこ」


 親方が指す。


 少し離れた壁際。


 水桶を運んでいる男。


 昨日。


 親方から聞いた。


 リラの後ろを通った男。


「…………」


「ウバメ」


「何」


 リラ。


「みる?」


「見る」


「いく?」


「行かない」


 そこまで言うと、親方が少しだけ頷いた。


「それでいい」


     ◇


 午後。


 マロを見る。


 でも。


 追わない。


 普通に仕事する。


 見た目は特に変わらない。


 三十前後。


 痩せ気味。


 髪は短い。


 仕事もする。


 怠けてはいない。


 人足とも普通に話す。


 笑う。


 荷物を持つ。


 水を飲む。


 あまりにも普通。


 だから逆に分からない。


「…………」


「見るならもうちょっと上手く見ろ」


 いつの間にか横にいた古株に言われた。


「何が」


「ずっとマロ見てんぞ」


「…………」


「何。惚れた?」


「違う」


「じゃあ何だ」


「仕事しろ」


「お前が言う?」


「今日はしてる」


「今日は、って言ったな」


 余計なところ聞いてる。


     ◇


 しばらくして。


 マロがこちらへ来た。


「ウバメさん」


「…………」


 名前。


 知ってる。


 仕事場なら。


 普通。


「何」


「親方が、そこの石を北へって」


 見る。


 親方。


 少し離れたところ。


 こっち。


 見てる。


 頷いた。


 本当。


「分かった」


 石へ手を掛ける。


 マロ。


 すぐには去らない。


「何」


「あの」


「何」


「嬢ちゃん、大丈夫ですか」


 身体が止まる。


「何で」


「朝から親方がずっと近くに置いてるし、さっき袋も持ってかれたから」


 普通。


 見てれば分かる。


「大丈夫」


「そうですか」


「何か知ってる?」


 聞く。


 マロが少し驚いた。


「何をです?」


「袋」


「いや」


「昨日使った?」


「どれです?」


「丸ついてるやつ」


「…………」


 考える。


「ああ。使ったかもしれません。何枚もあるから、よく覚えてないです」


「そっか」


「何かあったんですか」


「ちょっと」


 マロはそれ以上聞かなかった。


「じゃあ」


 離れる。


「…………」


 普通。


 本当に。


 普通。


「ウバメ」


 リラが呼ぶ。


「何」


「におい、ない」


「…………」


 聞こえた?


 マロ。


 まだ近い。


 振り向かない。


 そのまま歩いていった。


「今?」


「うん」


「マロから?」


「しない」


「そっか」


 石を持つ。


 運ぶ。


 それだけ。


 何も分からない。


 でも。


 何も分からないっていう情報が、一つ増えた。


     ◇


 夕方。


 仕事が終わる少し前。


 いつもの衛兵が来た。


 今度は制服。


「ちょっといいか」


「何か分かった?」


「まず身元の方」


 親方も近くへ来る。


「マロは?」


「本名らしい」


「本当?」


「少なくとも、その名前で去年も市の荷運びに入ってる。今泊まってる共同宿でも三月前からたまに使ってるそうだ」


「じゃあ白?」


「そうは言ってない」


「…………」


「ただ、昨日今日だけ突然作った身元じゃない」


「ベイル」


「そっちは微妙だ」


「何が」


「帳面に書いてある共同宿には、昨日一晩だけ泊まってる」


「一晩」


「ああ。金は前払い。朝早く出て、そのまま戻ってない」


「偽名?」


「分からん。宿の主人も初めて見た客だと」


「今日来なかった」


「ああ」


 怪しい。


 かなり。


 でも。


「まだ決めつけない」


 自分から言う。


 衛兵が少し驚いた。


「何」


「いや」


「成長したって言うなよ」


「言ってねぇよ」


「顔」


「お前まで顔読むようになったのか」


「いや、今のは分かりやすい」


 親方。


 笑ってる。


 腹立つ。


「袋は?」


 話を戻す。


「ガルドが見た。昨日服に付いてた粉と、ほぼ同じだそうだ」


「…………」


 やっぱり。


「じゃあ、袋から移った?」


「可能性は上がった。ただ、断定は出来ん」


「何で」


「服の粉が袋由来か、同じ物が別々に付いただけか分からんからだ」


「面倒」


「捜査ってのはそういうもんだ」


「私向いてない」


「知ってる」


「即答すんな」


     ◇


「それともう一つ」


 衛兵が声を落とした。


「何」


「あの袋な」


「うん」


「黒い粉だけじゃない」


「…………」


 嫌な予感。


「何があった」


「縫い目の内側に、小さい紙片が入ってた」


「紙?」


「何て書いてあった」


 親方が聞く。


「まだ全部は分からん。濡れて潰れてる」


「じゃあ何で今言うの」


「読めるところが一つだけある」


 衛兵が私を見る。


「何」


「数字だ」


「数字?」


「『三』」


「それだけ?」


「ああ。その横にも何か書いてあるが、今は読めない」


「…………」


 三。


 何の。


 三日?


 三人?


 三番?


「ロイの紙と同じ?」


「紙質は似てるらしい。ガルドが見ただけだから、詳しくは詰所で調べる」


「袋に隠してた?」


「それも分からん。縫い目の裂け目に偶然入り込んだだけかもしれん」


 また。


 分からない。


「でも」


 見る。


 リラが直した袋。


 その袋に。


 黒い粉。


 紙片。


「偶然二つ?」


「だから調べる」


「…………」


 衛兵は言い切らなかった。


 私も。


 今は言い切らない。


 昨日までなら。


 すぐ一つの答えに飛びついていた気がする。


     ◇


 仕事終わり。


「今日は飴なし?」


 聞く。


「何でお前が聞く」


「リラが袋一枚直した」


「途中で騒ぎになっただろ」


「でも最後までやった」


 親方。


 リラ。


 見る。


「見せろ」


 直した袋。


 確認。


 縫い目。


 引っ張る。


「……まぁ、いい」


 飴。


 一個。


「りらの?」


「そうだ」


「ほうしゅう」


「その言葉まだ覚えてたか」


「うん」


「余計なことばっかり覚えるな」


 でも。


 渡す。


 リラが受け取る。


「ありがと」


「おう」


「親方」


「何だ」


「甘いね」


「お前の日当減らすぞ」


「何で!」


     ◇


 帰り道。


 串焼き屋。


 今日は。


 三本。


「また変なの来た?」


「今日は来てねぇ」


「本当?」


「毎日確認すんな」


「大事」


「何かあったのか」


「ちょっと」


「またかよ」


「でも前より進んでる」


「ならいいけどよ」


 三本受け取る。


 歩く。


 リラが隣で飴を持っている。


「食べないの?」


「ふろのあと」


「今日は絶対行く」


「うん」


「何があっても」


「…………」


 リラ。


 私。


 見る。


「何その顔」


「なんか、ある?」


「ない」


「ほんと?」


「言うな」


 嫌なこと想像する。


     ◇


 何もなかった。


 ちゃんと風呂に入れた。


 久しぶり。


 と言っても二日だけ。


 でも。


 長かった。


「生き返る」


 湯船へ沈む。


「ウバメ」


「何」


「おおげさ」


「誰に覚えた」


「おかみ」


「女将か」


 最近。


 どんどん言葉が増える。


「今日、怖かった?」


 聞く。


「ちょっと」


「そっか」


「ウバメは?」


「今日は」


 考える。


「昨日よりちょっとまし」


「なんで?」


「分からないことが増えたから」


「?」


「普通は逆か」


 でも。


 ベイルだけを追えばいいわけじゃない。


 マロが怪しいと決まったわけでもない。


 黒い粉が直接リラへ付けられたとも限らない。


 分からないことが増えた分、勝手に怖がっていた形が少し崩れた。


 代わりに。


 本当に調べないといけないものが見えてきた。


「まぁ」


 湯。


 肩まで。


 沈む。


「一個ずつかな」


「いっこずつ」


「そう」


     ◇


 夜。


 銀鍋亭。


 いつもの確認をする。


 窓。


 糸。


 粉。


 扉。


 櫛。


 異常なし。


 リラの緑の服は、裏庭から取り込まれていた。


 まだ少し湿っている。


「明日」


「うん」


「着れると思う」


「うん」


 嬉しそう。


「リラ」


「何」


「今日、袋の匂い見つけたの」


「うん」


「助かった」


「…………」


 少し。


 固まった。


「何」


「りら?」


「お前」


「たすけた?」


「うん」


 その言葉。


 そんなに珍しい?


 私。


 言わない?


「…………」


 多分。


 あんまり言ってない。


「ありがと」


 言う。


 リラの耳が。


 ゆっくり立つ。


「うん」


 それだけ。


 でも。


 ちょっと嬉しそう。


「ウバメ」


「何」


「りらも」


「何」


「あした、みる」


「無理しなくていい」


「みる」


「疲れたら休め」


「うん」


 ベッドへ入る。


 今日分かったのは。


 黒い粉は、袋にも付いていた。


 袋から服へ移った可能性がある。


 ベイルは来なかった。


 マロは今のところ、ただの日雇いに見える。


 それから。


 袋の縫い目から出てきた。


 小さな紙。


 読めたのは。


『三』


 だけ。


 まだ。


 何の数字かは分からない。


 でも。


 今度は急いで決めない。


 相手が何をしているのか。


 一つずつ。


 見る。


 それが今の私に出来る。


 一番ましなやり方だった。

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