表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/17

森の夜

 もう一人の兵士長は、また眠りに就いた。先程まで起きていたのが、不思議な位である。手当てをしていないので、詳しくは分からないが、バージという男、相当の傷を負っていた。どう考えても、クランツの比ではない。何故、その様な傷を負ったのか。そして、どの様にして、この森まで来たのか、知りたくて堪らなかった。


「すみませんが姫、少し頭を冷やしたいので外に出掛けてきます。」


 クランツは、そう言って扉を開けて出ていった。余程、男が増えることが嫌なのであろう。


「それにしても、本当に驚きましたよ。俺が街から帰ってきたら、知らない兵士さんが血だらけで放置されてるんですから。」


 生憎、私は傷の手当ての術を知らない。クランツの時も、ジグがいたからこそ彼がいる。

 姫はあることに気付いた。


「ジグ…、今、街から帰ってきた、と言いましたか…?」


 一瞬、あっけらかんと目を点にしていたが、直ぐ様答えた。


「あっ、言ってませんでしたっけ?服だけは、街で調達をしてるんですよ?」


「街って、この森の外ですか?!」


 普段は大人しい姫が、この時に限っては生き生きとしていた。その豹変に、ジグも戸惑ってしまった。


「そ、そうですよ。この森を東に抜ければ、アルダナという街に着くんです。って、知らなかったんですか?」


 数ヶ月前にこの森に迷い混んでから、一度もここから抜け出したことが無かった。いや、抜け出せると思っていなかった。

 初めてここで目覚めた時に感じたこの森の不気味さに、ここが何処か違う世界で、もう二度と抜け出せ無いのだと、勝手に考えていた程である。

 ジグの一言に、姫は目を輝かせていた。


「ジグ!私をそのアルダナの街に案内して下さい!」


 生まれてこの方、城を出たことが無かった王女様である。初めての外が、この森の家なのである。街という未知の存在に魅力を感じていた。


「良いですけど、後日にしましょうね。木が邪魔で詳しくは分かりませんが、もう日は既に落ちてますよ。」


「えっ、もうその様な時間なのですか?」


「そろそろ、空腹を感じると思いますよ?今日は色々ありましたからね。あっ、俺晩飯作り始めますね。

 だから、街に行くのは、後日でお願いしますね、姫。」


 その後、一時間たった後、クランツが帰宅し、ジグの手料理が丁度出来たところで、バージを起こし、初めて四人で食卓を囲んだ。






 本来なら月明かりが照す時間に、一人の男が剣の素振りをしていた。体にはまだ、包帯が巻かれている。

 只ひたすら、男の息遣いと剣が空を切る音だけが、辺りに聞こえていた。


「そんなに動かして、体は大丈夫なのかい、バージ君?」


 背後から聞こえる声に、一瞬にして汗が吹き出た。そして、咄嗟に前に飛び込み、対峙する形をとった。


「…、何だ。お前か。確か、ジグと言ったな。」


「そうだよ。それにしても感心だね。その体で鍛練かい?無茶じゃないのかい?」


 随分と舐められたものだ。これでも、先日まで一国の兵士を束ねる長であったのだ。剣に錆を付けることが許される筈がない。それよりもだ。


「悪いことは言わないから、寝てた方がいいと思うよ。」


 この男、何時から俺の背後にいたのだ。かれこれ一時間はここにいた。けれども、俺以外の音を聞いた覚えは無い。それに、気配が一切感じられなかった。


「ふん、俺はあの男とは違うのでな。」


「バージ君とクランツさんは、仲が悪いんだね。」


 やっと分かった、今まで感じていた違和感の意味が。


「なあ、何故お前は俺には尊敬の意を示した話し方ではないんだ。アーネ姫とクランツには、そう話すのに。」


「それは簡単な事だよ。君が、俺よりも年下に見えるからだよ。」


 どう見ても、バージの方が年上に見える。

 それも仕方が無い事なのかも知れない。ジグは、幼すぎる。その雰囲気、話し方、そして笑顔が。ましてや、ここに住む誰も彼の年を知らない。


「俺には、そうは思えんけどな。」


 しかし、先程の背後を取られた失態から学ぶに、有り得ないことでは無いのかもしれない。そう考えもした。


「なら、何故俺をここに住まわす事にした。」


 ジグは、またか、そんな風に言いたげな顔を浮かべた。


「バージ君は、姫を追ってここまで来たんでしょ?」


「そうだな。」


「だからだよ。姫を思う人を拒む必要は、何処にも無いからね。」


 すると、今まで無音であった空間に一陣の風が吹き抜けた。


「バージ君、ドライフラワーって知ってる。」


「ああ…。」


 余りにも、妖しげな顔で聞いてくるものだから、曖昧な回答になってしまった。


「あれはね、綺麗な物をそのままの、本来の美しさを所有したまま、保存出来る方法の一つなんだよ。」


 この時、この男の言っている意味が、兵士長には理解出来なかった。


そろそろ伏線を回収していきたいと思います。

そんなにありませんが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ