もう一人の兵士長
目を覚ますと同時に、全身に激痛が走る。ぼやけた目で見えたのは、木で出来た天井と、床であった。
記憶が定かでない。何故このような場所にいる。
「大丈夫ですか!?目が覚めたのですか!!?」
聞いたことのある声が、右側から聞こえてくる。数秒考える。すると、男は突然勢い良く体を起こした。
「その声は!探したぞ、アーネ姫!!」
勢いが良すぎた為か、又しても激痛が走る。
「そんなに乱暴しては、いけませんよ。先程まで瀕死だったんですよ!」
良く見ると、全身に包帯が巻かれ、止血の処理の後がある。どれも、的確な処置だ。しかし、今はそんなことどうでもいい。
「何という幸運!この時をどれ程願ったことか!!」
男は、アーネ姫の左手を掴むと、ベットから降りようとした。
「無礼者!!!」
その手をクランツが振り払い、男をベットに押し付けた。
余りの勢いに、男は声が出る程だった。
「姫!だからあれ程言ったのですよ!この男を家に入れる必要など無いと!!」
「しかし!あのままでは、この方は…。」
意識の飛びかけていた男が口を挟んで来た。
「何処かで聞いたことある声だと思ったら、お前、ハルベール王国の兵士長様ではありませんか?」
「だったら何だというんだ。」
男は、家をぐるりと見回した後、左の口角を上げて言った。
「これは、どういう事なのですかね?まさかとは思いますが、一国の兵士長様が、国を捨てて、王女様と同棲とは、国の人間が聞いたらどう思うか?ねえ?」
何故この様な事を知っているのか、それはこの男が、あの日ハルベール王国を攻めてきた国の兵士だからである。
「黙れ!黙れ!!」
クランツは余りの怒りに我を忘れたのか、部屋の隅に置いてあった装備品から、自らの剣を取り出し、鞘を抜き、刃を男に向けた。
「お前を生かす意味など、やはり無かったようだな。黙ってここで、くたばれ!!」
ベットに横たわる男に向かって、クランツ剣を振りかざそうとした。しかし、すんでのところで、
「止めて!!クランツ!!!」
その言葉に、兵士長の動きは止まった。
「いいのかい、王女様?俺なんかを生かしておいて。俺がここに来た理由は分かってるんだろ?何かされた後じゃ、文句は言えないぜ?」
「それ位、分かってます。それでも、この森で会った貴方を殺すことなど出来ません。私もここで死にかけ、そして、ここで助けられたのですから。」
そんなことを訴える姫であるが、本心から殺す気が無かったのである。姫からしてみれば、この男は、満身創痍になりながらも自分の事を欲している男なのである。そんな男を殺す意味など、最初から無いのである。
そして、もう一人が扉を開け、家に戻ってきた。
「あっ!もう大丈夫なの?」
この男は、どうも場の雰囲気を考えるということをしないらしい。
「誰だ…?」
包帯を巻かれた男は、疑問でしかなかった。
それもそうだ。姫と兵士長の二人の部屋に連れ込まれたと思っていたら、もう一人、男が増えたのだから。
いつの間にか納刀しているクランツが、答えた。
「お前を救った人だ。そして、俺達の命の恩人だ。」
「あれ、まだ言ってなかったんですか?あっ、さっき起きたばかりでした?」
何処にでもいるような、村の少年。それが男が思った第一印象である。姫や兵士長と同じ素材の服を身に纏い、幼い子供のような男にしか見えない。
気になるのが、左胸の刺繍だ。三人とも同じ刺繍が施された服を着ているが、何の紋章なのだろうか。
「お前が、俺を助けたのか?」
「そうだね。帰ってきたら、君が家の中に転がってたもんだからね。二人は、言い争いをしてましたし。俺が、手当てしなかったら、君、死んでたよ?」
気のせいだろうか、違和感を感じる。
「そうか、それは誠にかたじけない。」
頭の片隅に違和感を置き、素直に礼を述べる。人として腐ってはいなかった。
「で、どうするのですか姫?!こいつは、あの国の兵士ですぞ!」
「あっ、皆さんは知り合いなんですか?」
荷物を机の上に置き終えたジグは、唐突にも話を切り出した。
流石のクランツも目を瞑り、溜め息を吐いた。
「知り合いと言える間柄では無い。御互い、名と顔を知っていた、そんな程度の関係だ。」
片や攻める側の国と、片や攻められる側の国の兵士である。顔ぐらいは知っているものだろう。それに、この男は、只の敵国の兵士ではない。
「そうだな、助けられた恩だ。名を名乗るのは礼儀でもあるだろうからな。
俺の名は、バージ。ラグノワル王国の兵士長だ。」
その言葉に驚いたのは、アーネ姫、只一人だった。城に籠っていた姫には仕方ないことであるが、ジグが驚かないのには些か疑問が生じる。
「へー、君も何処かの国の人なんだ。
あっ、俺はリオールの村で猟師をしてるジグだから。よろしくね、バージ君!」
クランツは、最後の言葉に引っ掛かりを感じた。
「ジグ、何故よろしくということになるんだ?」
嫌な予感はしていた。自分の時がそうであったように、今回もそうなってしまうのではないか。
「え?バージ君も、ここに住むのではないのですか?」
予感は的中した。
「ジグ!俺の話を聞いていたか?!こいつはな、敵国の兵士、それも兵士長なんだぞ!!」
「俺には、国の争いとか興味ないですから。それに、姫は嫌がってるように見えませんよ?」
慌てて振り返り、姫の顔を伺う。気のせいだろうか、寧ろ嬉しそうだ。何故だ。自分が、狙われているという状況で、何故こうも平然といられる。クランツには理解できなかった。
「それに、三人が四人に増えるだけで、問題は無いですよ。その為に、今まで服を調達しに出掛けていたんですから。」
この男は、助けた直後から見ず知らずの人間との生活を考えていたのか。
「姫も、問題無いですよね?」
最初から、彼女は拒んでなどいない。
「何だい、何だい。俺はここに住むのか?」
「あれ、違うの?」
バージからしてみれば、またとない好機である。殺される心配の無くなった今、この家で暮らせれば、いつかアーネ姫を連れ去れる機会が訪れる。断る理由は、この男にも無かった。
「いや、ここに住まわしてもらうか。」
「なら良かった。今日からよろしくね、バージ君。」
一人の元兵士長を除いて、賛成意見多数の為、この森での生活は、四人となった。
話の書き方が下手なってます。申し訳ありません。




