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瀕死の兵士

 朝になると三人で食事をとった。毎度毎度、どこで食材を調達してくるのか不思議である。一度「どこで捕っているのですか?」と聞いたことがあったが、「秘密です。」と笑って誤魔化されたことがある。その為、聞くに聞けないのである。

 朝食をすませると、クランツは薪を割に外に出た。姫は食後のティータイムといったところだった。


「しかし、よくジグは…、あんなにも軽く…薪を割るよな。なかなか難しい…んだけどな。」


 訓練で剣を振ることはあっても、斧で木を切る事はしてこなかった為か、薪割りが思うように出来ない。それでも少しずつ薪を割っていると、家の裏からジグが現れた。


「あれ、ジグ。どこに行くんだ?」


 男二人女一人という生活であるが、この二人は仲が良い。クランツが自分が少し優位な位置にいることも自覚しての事だろう。


「少し、服を調達に行ってくるんです。恐らく、夜までには戻ります。」


「おお、そうか。」


 それだけ言うとジグは森の奥へと消えてしまった。元より暗い森である、直ぐ様消えてしまった。






 暫くたった頃だった。丁度ジグが消えた方向から何かが近付いて来るのが分かった。ジグにしては早すぎる。空が見れないから正確には分からないが、まだ昼前だ。ゆっくり、ゆっくりとそれは近付いてくる。人にしては小さい。では、動物か。今までこの森で動物に出会したことが無い。何だ。少し怖くなったクランツは、持っていた薪割り用の斧を肩の位置で構え、ゆっくりとそれに近付いた。

 目視で確認出来る距離まで近付くと、そこにいたものに驚いた。それは、人だった。遠くからでは小さく見えたが、それもそのはず。この人物、木の枝に体重を載せて、前屈みで歩いているのだ。しかも両手で枝を持っている為、よりいっそう小さく見える。そして、何より驚いたのがこの人物、傷だらけだ。自分がここに来たときの話を聞いてはいるが、どう考えてもそれよりも重症だ。見るところ鎧を着ているため、兵士なのだろうが、鎧を来ているにも関わらず、全身が血だらけだ。立っているのがやっとだろうに、何故歩いているのだろう。助けようと手を伸ばそうとしたその時、彼は力尽きたのかその場に倒れ込んだ。その時あるものを見たが為に、クランツはその手を引っ込めた。倒れた男の鎧には見覚えのある紋章が血に染まって見えた。

 それは、あの日祖国を襲った国の紋章であった。






 昔話で、とある国の事を聞いたことがある。遠く離れたその国は、決して争い事をしなかったという。けれども、そんな国を一つの国がいとも容易く壊してしまったお話。誰も幸せじゃない。とても悲しい、罪の昔話。






 クランツは、見捨てようとした。いや、見捨てた。この倒れた男を助ける意味が無い。何故ここに辿り着いたのかは分からない。けれども目的は一つ、姫様だろう。ならば、ここで息絶えてもらった方が、好都合である。クランツは踵を返し家に戻ろうとした。しかし、間が悪かった。玄関から姫様が丁度出てきてしまった。そして、こちらに気付き近付いてきてしまった。


「いったいどおしたのですか?!」


 この男が、敵国の兵士であることを説明すれば姫様だって分かって下さるはずだ。そう決意し話そうと思った矢先だ。


「クランツ手を貸して!この方を家に運びます。」


 流石に躊躇った。そして、直ぐ様説明した。しかし、


「もし、この場にジグがいたら必ずこの方を助けているわ。だから私も助けるの。」

「しかし姫様!こ奴は、あの国の兵なのですぞ!もし回復して姫様が狙われでもしたら…。」

「その後の事は、助けてから考えるわ。早く手を貸して。」


 とても心穏やかではなかった。何故、よりによってあの国の兵士なのだ。クランツは渋りながらも手を貸して、男を家へと運んだ。

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