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アルダナの街

1話以来の初めての外です。物語が動き出します。

 ここが街なのか。

 初めて目にする本物の街の存在に、違った興奮を感じている。 


 城の部屋に籠っていた頃、そこには沢山の本があった。その中の物語に、何度も何度も出てきた「街」。それは、自分にとっては、空想のものにさえ思えてしまった。部屋からさえ、出られなかったあの頃、今見ている光景は夢にまで見たものなのだ。





 至るところに、店が立ち並んでいる。他の街を見たことが無いから比べられないが、活気のある街である。

 店の並ぶ中央通りは、沢山の人が往き来したり、買い物を楽しんでいるように見える。皆様々な服を身に纏い、とても楽しそうだ。祖国が戦争で滅んだ事が嘘のように思えるほど、平和な街である。


 しかし、肝心な事に気が付いた。ジグとバージと、はぐれたままである。少し慌てたりもしたが、見たところこのアルダナと呼ばれる街は、大きい街には見えない。恐らく、歩いていればいずれ見つかるだろう、そう判断した。


 




 少し歩くと、先程の空腹と疲労感を思い出した。今に至るまで忘れていたのが不思議な位、自分の体は疲れきっていた。何かを口にしたい。目の前には、食べ物を売っている店がある。しかし、自分はお金を持ち合わせていない。

 王女という身分では、お金の存在は必要なかった。常に誰かが自分に、与えてくれていたからである。森に来ても、ジグが食べ物に関しては、全てを与えてくれた。だからこそ、不便を感じなかったが今になって、自分が何も持っていないことに気付いてしまったのだ。


 恨めしそうに、店の果実を見つめる。不意に腹の虫が鳴るのが聞こえた。その音を周囲の人に聞かれ、恥ずかしくなり顔を手で覆い隠した。けれど、そんな事をしても腹の虫はなりやまない。帰りたい。そう思った時、指の間から正面を覗くと、千切られたパンが差し出されているに気付いた。その位置は高くなく、その差し出した本人の顔を見てみると、


「きれいなお姉さん、お腹空いてるんでしょ?これ食べなよ!」


 あろうことか、自分にパンを差し出しているのは、五~六才の少年である。


「良いのですか…?」


 あまりの空腹に、直ぐ様貰って食べてしまいたかった。けれども、王女の名残か礼儀は忘れずにいる。


「いいよ!」

 

 少年はにこりと笑って、パンをくれた。その笑顔は、あの男にどこか似ていた。

 その場で黙ってパンを食べていると、少年は思いがけない質問をしてきた。


「お姉さん、変わった服を着てるけど、どこの人なの?ここの人じゃないよね?」


 まただ。あの男と一緒だ。この少年も、自分の事を知らない。噂は世界中に広まっていたのではないのか。しかし、少年なら知らないのも無理もない。

 姫は、無理やりそう言い聞かせる事にした。


「私はね、ここの人じゃないのよ。」


「だよね!?見たこと無い人だから、びっくりしたよ!」


「私はね、そこの森から来たの。」


 後ろの森を指差して教える。すると、少年はもっと驚いた表情を浮かべた。


「えっ!!お姉さん、あの森から来たの?!すげぇ!」


 自分には理解できないが、少年は異常に興奮している。


「んっ?森から来たってことは…。ちょっとお姉さん一緒に来て!!」


 そう言うと、少年は私の右手を掴んで突如走り出してしまった。右手を掴まれている為、自分も走らざるを得ない。脚が縺れないように注意しながら、少年に連れられて路地裏を走らされた。

 民家の裏に面する道で、少し狭くなっている。少年には丁度良いかもしれないが、自分にとっては少し窮屈な道である。





 暫く走らされた。息も少しあがっている。路地の奥の奥まで来たのか、ここは少し放られた場所になっている。建物の影で、暗く感じるが森の暗さに比べれば明るいものだ。


「爺さん!爺さん!!いるんでしょ、出てきてよ?」


 少年が声をあげた後、奥の暗がりから杖をついた一人の老人が出てきた。


「どうした坊主。何かあったのか?」


 腰が曲がっているせいか、背は高くない。言ってしまうと、少年と同じ位だ。


「爺さん!このお姉さん、あの森から来たんだって!!」


 その言葉を聞いた瞬間、爺さんと呼ばれる老人の左目が大きく見開いた。右目は傷痕の為か、光を感じないのだろう。


「本当か坊主?!」


「本当だよ!このお姉さんが、自分で言ったんだもん!」


「良く見せておくれ…。」


 弱々しい足取りで、こちらに近付いてくる。そして、足元から徐々に体を見てくる。いくら男でも、老人には限界がある。


 丁度胸の辺りを見たところで、老人の左目は今一度大きく見開いた。


「その紋章は…!!」


 どうやら、左胸にある刺繍の事を言っているようだ。


「リオール王国の紋章ではないか!!!」


 リオール。

 どこかで聞いたことある名前に、姫は驚きを隠せなかった。

伏線の回収に入らせてもらいます。

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