第6話 商人
前世名・沙絵里は朝鮮王朝時代に転生するが、倒れたので治療を受けた。
青年とおばあさんが部屋を出て、やっと一息つくことができた。
それにしても、本当に転生してしまったのか。
だが、疑問点が多すぎる。
私はどうやってここに来たのか。
ここはどこなのか。
本当に朝鮮王朝時代なのだろうか。
ここでの名前は何だろうか。
日本語が通じないので、誰かに尋ねることもできない。
言葉の壁が、思った以上に高かった。
考えていても仕方がない。
さっきの薬のおかげか、体は驚くほど軽い。
外はどうなっているのか、見てみたいな。
でも、バスローブのような服で外を歩くのは、さすがに目立ちそうだ。
着替えがないか、いくつかの棚をあさった。
(勝手にごめんなさい)
だが、どれも薬草しか入っていなかった。
このまま出るしかないか。こっそり抜け出そう。
戸を少し開けて、外の様子を見た。
正面の庭で、おばあさんが洗濯をしていた。
こちらには気づいていないようだが、飛び出したら必ずバレるだろう。
しばらく待ったが、動く気配がない。
待っていても始まらない。
おばあさんが洗濯物に向き直った隙を狙って、戸を開け、そばにあった草履をつっかけて走り出した。
(体が軽い!バレないかも!)
すると、足音に気づいたおばあさんが、振り向いてしまった。
「아유, 얘야! 누워 있어! 아가씨!」
なにか言っているようだが、意味は分からない。
ごめんなさい!
心の中で謝りながら、私は建物が連なっている方へ走っていった。
商店街らしきところに出た。
瓦屋根の家々が並び、道行く人は皆、韓服を着ている。
店主が通行人にかける威勢の良い声、品を眺める人々。
活気に満ちている。
(本当に朝鮮王朝時代に転生したんだ!)
興奮して、走る速度が上がっていった。
「어이구! 부산 아가씨 아니야! 그 도현 총각 좀 잘 부탁해!」
大きな甕がいくつも並んだ店の前から、おじさんが話しかけてきた。
聞き取れたのは、「プサン」という響きだけだ。
意味は分からないが、私は手を振った。
するとおじさんも、振り返してくれた。
私はおじさんに気を取られ、前を向いていなかった。
ドンッ!
黒い帽子を被った大柄な男の人に、ぶつかってしまった。
帽子を被っているので、きっと宮廷で何らかの役職についている人に違いない。
失礼なことをしてしまった!
「すみません!」
深々と、90度のお辞儀をした。
周りの通行人が足を止め、ざわつき始めた。
え、私なにか悪いことした?
謝罪したよね?
帽子の男も、私を睨みつけている。
そこへ、一人の男が出てきて、私の肩を掴んだ。
「제 누이가 실례를 범했습니다. 정말 죄송합니다. 이거 얼마 안 되지만 받으십시오.」
男はそう言って、小さな袋を、帽子の男に投げた。
帽子の男が袋を掴むと、ずしりと重そうな音がした。
中身を手に出すと、銀塊が二つ、転がり出た。
帽子の男は満足したのか、立ち去っていった。
通行人も、また歩き始めた。
袋の男が、私に話しかけてきた。
「ちょっと、ついてきてください」
え?日本語?
ついに日本語が通じる人が現れた!
こんにちは、ヤサイローリングです。
前回の予告で転生先での名前が決まる、と書きましたが、次回以降になりそうです。
期待してくれた方、申し訳ありません。
やっと言葉の壁を越えられそうですが、一体どうなるのでしょうか。
次回をお楽しみに。
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それではまた次回。




