第4話 薬
注:第2話に一部改稿した部分があります。話の矛盾を防ぐために、ご迷惑をおかけしますが読み直しをよろしくお願いします。(10月8日以降に第2話を読んでここまで来た方は大丈夫です。)
沙絵里は転生できる薬があるというDMを信じ、東京某区の廃ビルにたどり着く。
「やぁ、よく来てくれたな」
そう言う男の態度に怖気づき、体は硬直した。
「転生したいんだったな、お前」
震えながら頷く。
男は近くにいた人に指図した。
「お前、例のものを持ってこい」
指図された男は部屋の奥に消えていった。
◇
しばらくして、その男は小瓶に入った紫色の液体を持ってきた。
気味悪く、飲もうという気にはなれない。
「おぉ、それだ。よくやった」
そしてボスらしき男はジャラジャラ鳴るポケットに手を突っ込んで、小銭を何枚か、薬を持ってきた男に投げた。
薬を持ってきた男は飢えた人のように金をかき集めた。
なんという格差。
ボスは薬の入った小さな瓶を手にした。
「これが...転生薬だ」
それでもここまで来たのだ。転生できるなら薬を飲んでやる。
「ではそれを...飲ませてください」
「いや、ただで飲ませることはできないぞ。こちらに利益がないとだめだと思わないか?」
それはそうだ。こんなこともあろうかと、出発前にコンビニをはしごして、貯金を全部おろして持ってきたのだ。
「大丈夫です。問題ありません」
強気を装って言った。
「なかなか度胸あるじゃないか」
「それでこいつの額だが...」
ボスは小瓶を軽く振りながら言った。
「30万で出してやる」
肩掛けバッグから財布を取り出した。
1万円札の枚数を数える。
しばらく、紙をはじく音だけが部屋に響いた。
…27、28、29…30。
足りた。
しかしぎりぎり。
正確に言うと小銭がいくつかあるが、それで一日生きていけるような額ではない。
帰りの電車賃にもならない。…まあ、帰る気もないのだけれど。
私はボスに歩み寄り、勢いよく30枚の紙幣を突き出した。
ボスの目が札束に吸い寄せられたが、すぐにこちらを見据えたまま、金を受け取った。
「それでは、ちゃんと払ったか枚数を数えるとしよう」
紙を弾く音、音、音。
「よし、30枚ある。意外と金持ってんじゃねぇか」
「ほらよ」
ボスは小瓶をこちらに渡した。
いざ瓶を手に取ると、指が震えた。
これを、飲むの?
すると急に、これまでの記憶が流れた。
死ぬ前に見るという、あれだろうか。
私は小瓶を握りしめた。
強く、強く。
「何してるんだ、転生したかったんじゃないのか。飲めよ、飲め。30万払って飲まないなんて、これ以上ダサいことなんてないぜ」
私はボスのその一言に背中を押されて、瓶の蓋を一気にねじ開けた。
瓶を口元に持ってきた。
つんとした匂いがこれまでの記憶をまた蘇らせた。
<ごめん、来週は絶対に外せない会議があるんだ。ごめんね、沙絵里>
<そう>
こんな世の中、おさらばだ。
そして私は、飲み干した。
ボスの口角が、ゆっくりと吊り上がった。
こんにちは、ヤサイローリングです。
次回から皆さんお待ちかねの転生です。
転生した沙絵里をどんな運命が待ち受けているのか、お楽しみに。
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それではまた次回。




