第2話 沙絵里
こんにちは、ヤサイローリングです。
第2話から「私」の回想が始まります。
「私」の名前も明らかになりますのでお楽しみに(序盤ですが)。
「私」の夢にはどんな裏があったのか。
それでは、どうぞ。
「おはようございます、沙絵里さん」
「あ、おはようございます。藤井さん」
私は藤井さんに挨拶し、自分のデスクに座った。
私の名前は中村沙絵里。23歳。
大企業の人事部に所属している。
そこそこ稼いでいるし、何不自由ない生活を送っている。
ただ、奨学金の返済があるので、貯金はそれほど多くない。
だが、私にはそれ以上にずっと抱えている悩みがある。
◇
今日もパソコンと向かい、面接予定の学生さんの履歴書を確認している。
まだまだ新人で、最低限の仕事をこなすので精一杯だ。
「あの、沙絵里さん」
藤井さんが話しかけてきた。
「はい」
私が振り向くと、藤井さんは肩をビクッとさせた。
「その肩の動き、いつもしますよね」
「あぁ...その何ていうか、急に振り向くなぁ、と思って」
「私、そんなに急に振り向いてます?」
「いや、そういう意味じゃなくて...」
藤井さんは少し困ったような顔をした。
「まあ、いいですけど。それで、何か用ですか?」
「あ、そうでした。午後の面接のことで。14時から会議室Cでいいですよね?」
「はい、お願いします」
そう言うと藤井さんは去っていった。
(今日も面接か)
思わずため息が出た。
◇
「無事に面接、終わりましたね」
藤井さんが言った。
「そうね、でもなかなか特筆するような人材がいないのが残念だけど」
「そうですねぇ。東北作文コンクールで銅賞を取ったあの子、部長に推してみますか」
「そうですね、お願いします」
◇
「ただいま」
そう言って家のドアを開けた。
返ってくる返事はない。
荷物をソファーに下ろして、とりあえず座り込む。
テレビをつけると、賑やかなバラエティ番組が流れていた。
「はぁ」
とりあえずお風呂に入って部屋着に着替えないと。
スーツをハンガーにかけて、脱衣所へ向かった。
◇
湯船に浸かっていると、学生時代の思い出が蘇ってきた。
<来週、文化祭で合唱するから見に来てね>
<ごめん、来週は絶対に外せない会議があるんだ。ごめんね、沙絵里>
父の声。
学校で。
<沙絵里ちゃんのお父さんお母さんは合唱見に来るの?>
<仕事で見に来れないんだって>
<そうなんだ...うちはね!お母さんが来るの。お母さんが〜...>
沙絵里は、それからの会話を覚えていない。
<スケッチで校長賞取ったよ>
私は、両親がどんな反応をするか分かっていた。
だから、素直には喜べなかった。
<そう>
母はパソコンに文章を打ちながら、とりあえず反応した。
友達はみんな、すごいね!、と喜んでくれたのに。
私の両親は、私が何をしてもあまり興味がない。
少なくとも、当時の私はそう思っていた。
そんな両親との会話ができたのは日曜日の夜だけ。
それ以外のときは、家に両親の姿などなかった。
孤独なんて大嫌い。
◇
翌日。
「おはようございます。あれ、なんか暗い顔してますけど大丈夫ですか」
「心配しなくて大丈夫」
実をいうと、昨日思い出したことをずっと引きずっていた。
「そうですか?」
「うん」
「…ならいいんですけど」
私はデスクに座って、いつものようにパソコンに向かった。
はぁ。
私なんて、誰にも愛されちゃいないんだ。
私はスマホを取り出した。
SNSを開く。
この感情を投稿したところで、どうせ誰にも相手にされないだろう。
だけど――。
私という存在を、誰かに知ってもらいたい。
私は文字を打ち込んだ。
「愛されないなら、いっそ転生してやりたい」
叶うはずのない願いだった。
少なくとも、このときの私はそう思っていた。
こんにちは。
第2話はいかがだったでしょうか。
沙絵里のSNS投稿はどう事態を動かしていくのか。
第3話をお楽しみに。
(3日以内には次回を更新できればよいかな、と思っています。よろしくお願いします。)
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それではまた次回。




