第13話 内医院
ウンソとドヒョンは、ギョングと別れ、内医院へ向かう。
「それじゃあ、内医院に行くか」
そうドヒョンが言って、私たちは歩き始めた。
宮廷で働いているたくさんの人とすれ違った。
赤や青の官服を着た官僚たちが、黒い帽子を揺らして、行き交っている。
ドラマで見た通りだ。
夢の中にいるみたいで、信じられなかった。
つい前を見ずに周りばかり見てしまう。
「おい、そんな歩き方じゃ、いつか王様にぶつかってしまうぞ」
「目に焼き付けておきたいんだよぉ」
「…しょうがない、俺が周りを見ておくよ」
「ありがと、ドヒョン」
ドヒョンの顔を見ると、りんごのように真っ赤だった。
「大丈夫?熱あるの?」
「いや、大丈夫だ。ちょっと緊張してるだけ」
「内医院に行くから?」
「ん?あぁ、いや。ん、まぁ、そんな感じ?」
「そう」
◇
何回か角を曲がると、内医院に着いた。
建物に近づくと、薬草の匂いが、ふわりと漂ってきた。
「ここが内医院かぁ」
「そうだ、ここに薬を納めるんだ。王様にも使ってもらっている」
「すごいね、でもここでは働かないんだ」
「うちの店を継ぐから、ここで働くところまでは、手が回らないんだ」
「なんか、それはそれでしっかりしてるね」
「そんなことないよ。さ、納めに行こう」
建物に入ると、医女たちが薬草をあちらこちらで調合していた。
その部屋の中には、50代半ばの白髭を生やした男性医官が、一人立っていた。
「あのソ医官様に渡しに行こう」
ドヒョンはそう言って、ソ医官に話しかけた。
「こんにちは、ソ医官様」
「おぉ、久しぶりだな。ドヒョンくん。いつも世話になってる」
そう言ってソ医官はドヒョンの肩を叩いた。
「ところで、隣の女の子は誰だい?」
「ウンソ、自己紹介して」
ドヒョンはそう言った。
私は少し緊張しながら、こう言った。
「ハジメマシテ」
するとドヒョンの目が大きな丸になった。
ソ医官は、一瞬、眉をひそめた。
「今のは…?」
「彼女は、釜山の倭館の近くで育ったので、倭語が、口癖でして」
ドヒョンが、慌てて、そう言った。
え?
もしかして?
あぁっ!!
日本語話しちゃった!!
冷や汗が止まらない。
どうしよう!
パニックになっていると、ドヒョンが耳元で囁いた。
「習ったことをちゃんと思い出して」
そうだ。
ギョングのスパルタ授業を無駄にしてはいけない。
あの9か月を、水の泡にするわけにはいかない。
「初めまして、パク・ウンソと申します」
ソ医官は大きく頷いた。
(うまくいった!)
私は胸をなでおろした。
「私は徐明済という。医官をしているんだ。よろしく、ウンソさん」
「…はい!」
「元気な子だね。それじゃあドヒョンくん、薬草を出してくれ」
「分かりました」
そう言ってドヒョンは背負い籠を下ろして、ソ医官に渡した。
ソ医官は背負い籠の薬草を机に全て出して、薬草の匂いを一つ一つ確認し始めた。
「ドヒョンくんの薬草は信頼できるんだ」
ソ医官はそう言いながら、薬草を検品していった。
検品も残りわずかとなった時、ソ医官が手を止めた。
入念に匂いを嗅いだり、観察している。
「ドヒョンくん、この薬草は、どこで仕入れたのかね」
「釜山の倭館です。母が、あの薬草を気に入ってしまって、定期的に頼まれているんです」
ドヒョンは、私の朝鮮語学習期間中も、釜山に旅に出ていた。
その薬草は、9か月前に私を起こすのに使ったらしく、またすぐに頼まれたそうだ。
するとドヒョンの言葉を聞いたソ医官の表情が曇った。
だが、すぐにもとの表情に戻った。
「どうかしたんですか?」
ドヒョンが聞いた。
「いや、君が気にすることじゃない。大丈夫だ」
面接で、嘘を見抜いてきた人事部の勘が、どこかざわついた。
◇
「一通り検品が終わったよ。今回も品質の良い薬草をありがとう、ドヒョンくん」
「はい!これからもよろしくお願いします」
ソ医官は深く頷いた。
そうして私たちは内医院を出た。
「うわ、すごい人混みだな」
内医院を出ると、道の両脇に、人が集まって、ひざまずいていた。
道の中央には、誰もいない。
「たぶん、王様が通られるんだろう。宮を出て、民の様子を見に行かれるのかもしれない」
「ねぇ、王様を見てみたいんだけど」
「見てみたい、なんて失礼なこと言うんじゃない。御姿を拝見したい、だろ」
すると、遠くから大吹打の音が聞こえてきた。
ドラマで聞いたことのある、笛と太鼓の音だ。
「ウンソ、ひざまずけ!」
私たちはひざまずいた。
「王様のお成り」
こんにちは、ヤサイローリングです。
余談ですが、大吹打に関するおすすめの曲を紹介します。
agustDの「daechwita」です。
BTS・SUGAさんのソロ曲で、韓国の伝統楽器が素晴らしいメロディーを奏でています。
過激な歌詞があるので苦手な方は聴かないほうがいいと思います。韓国語詞ですが。
問題のない方はぜひ聴いてみてください。
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それではまた次回。




