第10話 戸なんて突き破れ
ドヒョンがギョングの雑貨店に到着する。
ドヒョンはギョングの店の前に着いた。
店には着飾った女性が大勢いた。
どうせギョングに付け込みたいだけなんだろう。
「ちょっと、失礼しますよ」
そう言って俺は女性の間を抜けていった。
店の中は珍しい品ばかりだ。
俺はそういう趣味が嫌いだ。
水墨画を眺めているほうがよっぽどいい。
女性しかいない店に男が一人立っているのは異様な光景だったのか、店員がすごい形相でこちらを睨んでいる。
知るかそんなこと。
店を見渡していると、店員のみ立ち入れる戸があるのを見つけた。
ここに彼女がいるはずだ。
俺はその戸に向かって歩き始めた。
店員は事態を察したのか、こう言った。
「お客さん!そちらはいけません!」
俺は無視して戸を叩いた。
ドンドンドン!
返事はない。
だがしばらくすれば誰か出てくるだろう。
すると、戸の覗き窓が開いた。
出てきたのは、ギョングの顔だった。
(ギョング…!)
「ちょっと!白い服の娘さんはどこだ!」
そう怒鳴った。
すると、ギョングの後ろから彼女が覗いてきているのが見えた。
やはりここにいたのか。
無事らしいので安心した。
だが彼女の顔は怖がっている。
少し声が大きかったか。
するとギョングが話し始めた。
「ああ、その方なら、今、私と諺文の勉強をしています。関係のない方は、出ていっていただけますか」
諺文だって?
文字も読めないというのか?
すると俺の頭に、彼女が言った言葉が浮かんだ。
<ヨッシャア>
絶対に朝鮮語ではない。この国の人ではないのか?
だが、今はそんなことを考えている場合じゃない。
覗き窓は開いたのに、戸は開かない。
鍵がかかっているか、開ける気がないかのどちらかだ。
それならば。戸なんて、突き破ればいい。
俺は後ろに下がった。
助走をつけて、足を大きく振る!
ドゴォン!!
見事に木の戸が砕け散った。
部屋の中に入ると、ギョングと彼女は目を丸くしていた。
だが、ギョングはすぐに冷静な顔に戻った。
冷徹な仮面を被った悪徳商人め。
俺は彼女に向かって手を差し出した。
「どうしてこんなところにいらっしゃるのですか!早く戻りましょう!」
さっき怖い思いをさせてしまったので、変に丁寧に言ってしまった。
もしかして、嫌われたか!?
彼女は何も言わず、固まっている。
するとギョングが異国の言葉を話し始めた。
「コノヒトハドウシテコンナトコロニイラッシャルノデスカハヤクモドリマショウトイッテイマスコノヒトトメンシキガアルノデスカ」
つい2週間前にも、耳にした響きだ。
それに、彼女が口にした、あの言葉とも似ている。
2週間前、どこで聞いたんだ?
必死に思い出す。
そうだ、釜山に行ったんだ!
釜山には倭人が出入りする倭館がある。
そこで、倭の商人と貴重な薬草を取引したのだ。
その薬草は今日、母のきついお香に使われてしまったが。
もったいない使い方をしたな。
倭館では、倭語を嫌になるほど耳にした。
その倭語によく似ていた。
ギョングは、彼女に向かって話している。
通じると思って話しているのか?
つまり、彼女は倭人!?
何ということだ。
彼女は凄腕の密偵なのか?
いや、こんな美女がそんなわけない。
俺は彼女が密偵なのではないかという考えを振り払ってギョングに向き直った。
「とりあえず、戸を壊されたのですから、弁償していただかなくてはなりません、ドヒョンさん。商人の鉄則その2、損は最小限に、です」
鉄則だか何だか知らないが。
「知ったことか!」
そう怒鳴った。
「あなた、私が誰とつながっているかご存知ですか?私は両班の大臣たちと親しいのです。私が消してくれと一言いえば、本当に消せるのですよ」
何と言い返すこともできない。
宮廷にも薬を納めるお墨付きの薬屋とはいえ、大臣に立ち向かう力はない。
俺は歯を食いしばった。
するとギョングは何か思いついたようで、こう提案してきた。
「ドヒョンさん、賭け場で決着をつけませんか」
こんにちは、ヤサイローリングです。
今日は連続公開の日です。
今日18:00に第11話を公開します。
ちょうど家への帰り道の時間帯だと思うので、移動のお供にぜひ。
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それではまた次回。




