第八十六話 山羊の臭い
人頭山羊の捕獲です。
山側へ移動し、山羊を捕獲することにする。
他の家畜系草食魔物と違い、大きな群れで行動せず小規模な群れで活動している。
これは、山側で活動している影響もあるのだろう。それと人頭山羊も魔族領にのみ生息しているそうだ。
馬鹿スキルどもを使って、一番大きい群れの場所へ来た。
…だけど見た目が酷い。
根田 「山羊は禿げてますね。馬面のおっさんですが、山羊の髭じゃないですよ。角が大きいですね。地球の山羊のローヴ種みたいな角です。あれは、古くから飼われている種類で、南フランスの高原で飼育されていて、チーズの”ローブ・デ・ガリック”などが作られる種類ですけど、人頭山羊も同様のチーズができるのでしょうか?」
人頭山羊の頭は禿だけど、山羊の髭じゃない髭になってる。カイゼル髭、ドジョウ髭、ちょび髭、あご鬚(アメリカ合衆国大統領リンカーンのあご髭みたいなやつ)、ほお髭、ラウンド髭、無精髭で、所謂山羊の髭であごの下に長くあるやつじゃない。禿げ頭で髭が濃いって何だよ!
光華 「地球のローヴ種は、チーズで出てきた”ガリック”、南フランスのラングドック・ルション地方の石灰質乾燥地帯で飼われてますよね。乾いたやせた土地に生える丈夫なハーブをたくさん食べて育つ為、乳自体にハーブの香りがするんですよね?」
そうらしいけど、地球にいた時に食べたこと無いんだよね。
根田 「そうみたいですね。チーズもタイムやローズマリーのような強いハーブの匂いが、あるようですが、私も食べたこと無いんですよ。」
黒乃 「でも、ここの環境は、それほど乾燥してるわけじゃないから。」
玉樹 「山の麓は、普通の森ですからね。ハーブが多いと言えば多いですが、野草も普通に生えてます。」
竜 「空から見る感じだと、草が多いので、他の山羊の魔物のように木の皮は、食べていないです。」
麒麟 「草が少ない場所にいる山羊の魔物や鹿の魔物は、木の皮を食べますね。ここの人頭種は、それはしないです。髭も元は山羊の髭でしたが、魔素を拡散してから、変わりました。」
そうなのか。聞いた話だが、木の皮を山羊が食べると乳が苦くなって、味が落ちるそうだ。
魔物は、ハーブを避けるはずだが、魔族や人族に関係ない場所では、食べるようだ。今いる場所は、村や街から離れてるから。
髭は俺が原因か。
根田 「取り合えず、捕獲します。」
15匹ほどいたので、捕獲する。雌が10匹だ。
根田 「山羊は、大きくないですね。鑑定したら種別が、”魔物山羊(人頭山羊・トカラ)”で体高80cm、体重200kgと地球の山羊より一回り大きい程度です。これも1種類ですか。色は茶色ですね。毛は固いですが、角と皮は素材として良い物です。乳と肉は食用可能で、2級の魔物ですか。」
光華 「山羊って臭うのかと思いましたが、そんなこと無いですね。」
黒乃 「それって、肉食べる場合じゃない?」
玉樹 「獣の山羊は、発情期の雄とか酷いわよ。自分のおしっこを足とか顔に掛けたりするし。山羊は、捕食されないと増えすぎるから、森にとっては、調整対象なのよね。」
それ知ってる。山羊の雄は、発情期になると体臭が臭くなるんだよ。この臭いは、皮脂腺から分泌される脂肪酸で他にも足や顔におしっこをかけたりする。これは、雌に発情を促すフェロモンとしての働きがある。雌は、発情期になると落ち着きがなくなって、よく鳴くし。アレを説明するか。
根田 「地球の山羊の場合ですが、山羊の肉は、臭くは無いです。日本で臭いが強いと言われているのは、理由があるんですよ。肉として食用に回されるのは、基本的に雄です。これは、雌は子を産ませるのと乳を搾る為です。本来、食用として山羊を潰す時期が分かりますか?」
竜 「発情期に種付けが終わったらですか?」
良く分かったな。その通りだ。
根田 「そうです。それが一番効率的だからです。まあ、現在の地球では需要によって潰しもしますけど。発情期の雄は確かに臭いますが、山羊の臭いは、皮脂腺から分泌される脂肪酸です。ですので、皮を食べなければ、臭いは問題ありません。」
麒麟 「それならば、魔物は、臭わないかもしれません。皮を素材として使用しますので。」
光華 「でも、皮も食べれますよね?」
根田 「鑑定したら、食用可能ですね。食べるなら工夫が必要ですけど。それに長時間煮込んだりする必要がありますよ。」
黒乃 「別に皮食べなくても良い。」
玉樹 「そうですよ。鞄や靴などに使えば、良い物ができるようですし。」
竜 「太郎様、捕獲ロープのテストは、良いのですか?」
あ、忘れる所だった。
麒麟 「根田様、先にアイテムのテストしてから、試食しましょう!」
そうだね。他のと同様にテストして、山羊は小さいので、1,000匹確保した。
アイテムも問題無い。
根田 「まずは、乳から飲んでみましょう。」
そう言って、山羊に魔力を与える。
人頭山羊 「張って、張って、張りまくり!!乳が張って、痛いぞ!早く搾れ!」
分かった、分かった。急かすな。
根田 「搾りました。小さい割に40リットル搾れましたね。」
光華 「与える魔力量に影響されるのかもしれません。」
黒乃 「牛が倍搾れるのは、変換効率が高いのかも。」
そうかも知れない。
根田 「そうかも知れませんね。」
玉樹 「そう言えば、太郎様、とっくり草を魔物に試すのは、どうしますか?」
それもあったね。
根田 「そう言えばそうでした。後で確認しましょう。」
竜 「太郎様、乳を試飲しましょう!」
麒麟 「私も飲みたいです。」
そうだね。試飲しよう。
根田 「そうですね。試飲してみましょう。」
そう言って、試飲する。
…ゴク、ゴク、ゴク。
ふーむ。なるほど。
根田 「あっさりしてますね。独特の風味があります。木の実なども食べるのでしょう。ナッツの様な香ばしい感じがあります。ほんのりとハーブの香りもしますね。ローズマリーのような甘くほろ苦い香りがあります。独特ですが、美味しいですよ。」
そう言うと皆も試飲する。
光華 「あっさりしてますね。でも美味しいです。」
黒乃 「独特の風味だけど、美味しい。」
玉樹 「確かにハーブの香りがあります。美味しいです。」
竜 「羊はこってりしてましたが、山羊は、あっさりしてるので、飲みやすいです。」
麒麟 「美味しいです。私は、羊より山羊の乳のが、好みです。」
山羊は小さいから、人族でも従魔にして飼い易いかも知れない。
チーズも作ってみるか。
根田 「チーズも作ってみましょう。」
作ったチーズは、ローブ・デ・ガリックみたいな奴だ。
根田 「出来ました。試食します。…酸味が強く、ハーブの香りと相まって非常に爽やかな味です。熟成させてみましょう。表面に白カビが生えました。食べてみます。…味にコクが出てきました。美味しいですよ。ただ、熟成させすぎると干からびた感じになりそうです。」
光華 「美味しいです。これは、そのまま熟成させずに食べても良いのでは?」
黒乃 「美味しい。私も熟成させなくていい。」
玉樹 「美味しいです。確かに熟成度合いが難しいですね。」
竜 「美味しいです。爽やかな味です。」
麒麟 「美味しいです。熟成させるとピリッとした胡椒のような舌触りもありますね。」
このチーズは、白ワインとかに合いそうだね。それは、後で考えるとして、肉を食べてみよう。
根田 「次は肉を試食しましょう。」
肉を確認すると柔らかい。日本で一般的に食べられている物は、臭い、硬い、筋っぽいと言われるが、それは生後2,3年以上経過した山羊だからだ。
加齢により肉が固くなり、臭いも強くなる。しかし、神に生贄で捧げられるのが、山羊だったりするのは聖書などにあるので、地球において山羊を食肉とするのは、一般的なのは、読者さんも知っていると思う。
生贄にされるものが、他の物より味が落ちるとかは無い。実は、中近東、地中海沿岸では山羊は特別な料理として、振舞われるものだ。
それは、生後6カ月以内の子山羊を食用として調理するので、肉も柔らかく、コクがあり美味しいとされる。
しかし、俺は、日本にいた時、知り合いの母親が、子供の頃家で飼っていて(昭和初期)、種付けが終わると雄を潰したそうだが、当時は冷凍庫など無く、保存方法は、醤油で桶に漬け込んで保存していたそうだ。田舎で、その当時、自分の家で味噌は勿論、醤油も造っていたそうだが、成体になった雄でも臭くなく、固くもなく、普通に豚肉に似た感じだったと聞いている。もしかすると、もろみが混じっていて、麹で柔らかくなったり、臭いが分解されたのかもしれない。
俺も山羊は、ジャーキーしか食ったことが無い。あれは、臭いは無いが、干し肉なので固い!実は、山羊汁は高いので買わなかったんだ。
話がそれたな。
根田 「焼肉で食べてみましょう。」
そう言って、赤身を大蒜と醤油ベースのタレに漬け込み、焼いてみた。
山羊は、刺身もあるけど、それは後にする。
根田 「焼けました。食べてみます。…美味しいですよ!臭いも無く、柔らかいです。」
そう言うと皆も試食する。
光華 「美味しいです。臭くないですね!」
黒乃 「美味しい。パサつきも無い。」
玉樹 「美味しいです。肉の旨味を感じます。」
竜 「美味しいです。何かポカポカしますよ!」
あれ?強壮作用あるのか?
麒麟 「美味しいです。力が湧いてくる感じがあります。」
気になったので、鑑定してみた。…血行と魔力循環が良くなるようだな。血圧が上がるとかは無いので、安心だ。栄養価としては、高たんぱく低脂肪で鉄、亜鉛が豊富で、ビタミンB群が多いみたい。
根田 「これなら、山羊を従魔にするの良いと思います。餌でハーブを与える分には、食べるでしょうから。」
皆も同意したので、魔都に戻ることにした。
魔王さん達に聖獣が乳製品入手できるように、お願いしないとね。
ダンジョンボスの宝箱は、魔族に二個与えよう。聖獣との取引もあるからね。収納箱が無いと置き場所に困るだろうし。
色々考えながら、魔都に戻った。
カシミヤ山羊のように毛も使える設定にしようかと思いましたが、詰め込むのも何なので止めました。
作中に出てきた山羊の肉の保存は、作者の母が実家で行っていたものです。飼っていたのは、日本ザーネン種の無角山羊だったようです。発情期の雄は、柵につかまって、顔や足におしっこを掛けるのも母から聞いたものです。皮は食べなかったそうです。山羊汁を買えなかったのは作者です。貧乏なので。山羊のジャーキーは臭いは無く、固くて味が濃いです。興味があれば食べてみてください。




