第七十話 幻覚ナイフ
隠し部屋へ行きます。
ダンジョン内なので時間は分かりにくいのだが、夜が明けた。
自分達神族は、地上の管理者なので、自分のいる場所の時間などは分かる。
見習い達を起こさないというのもあったが、他に冒険者がいるので、夜間帯は念話で話した。
可能性ではあるのだが、ゲットしたアイテムが、21階層から先へ行くのに必要になるかもしれない。
勿論、自分達神族は、アイテムが無くても行けるが。
取り合えず、見習い達を起こして朝食にしよう。
根田 「皆さん、お早うございます。朝食にしましょう。」
見習い達 「根田様、お早うございます。」
ソコトラ 「お早うございます。根田様。問題はありましたでしょうか?」
根田 「特にありません。話は朝食後にしましょう。」
作り置きのサンドイッチに、オニオンスープ、飲み物はミルクにした。
朝食後、食休み中に幻覚を見せるナイフ(幻覚ナイフと呼ぶことにしよう。)を出してもらった。
他の冒険者には聞こえないように、遮音状態にする。
根田 「他の冒険者がいるので、詳しいことは言えませんが、このナイフは、ダンジョンの20階層で必要になる可能性があります。」
そう言うと見習い達と師匠さんが首をかしげる。
ソコトラ 「根田様、それはどういうことでしょうか?」
疑問はもっともだ。
根田 「ダンジョンには、隠し部屋などもありますが、見つけなければ当然入れません。それに、見つけるにはアイテムが必要になる場合もあります。又、入るのに特殊な鍵が必要など。」
ここまで言って、見習いも頷いた。
師匠さんも分かったようだな。
根田 「このナイフの効果は、攻撃などで使用するには微妙ですから、あくまで可能性です。他の冒険者もいますので、後は行ってから確認することにしましょう。」
そう言って、探索再開だ。ナイフは師匠さんに渡しておいた。
15階で宝箱がもう一つ出た。入っていたのは、幻覚ナイフ。
根田 「我々が一緒で、このナイフが出たということは、鍵になる可能性が高まりました。運気が上がっているのに、微妙な物が出るのは不自然ですから。」
皆頷いている。
探索は、問題なく進む。
出てきた魔物は、こんな感じだ。
16階 ブラックウルフ(3級)真っ黒な狼だ。集団で向かってくる。中型犬ぐらいの大きさだ。
宝箱は、2つ。ここでも幻覚ナイフが出た。もう一つは、毒無効の指輪が3個。
17階 バイオレント・エイプ(3級)見た目はニホンザルだ。大きさも同じ。集団で襲ってくる。素早いし力も結構ある。
宝箱は3つ。幻覚ナイフ、毒無効の指輪が2個、マジックバッグ中(麻袋大が200個入る。時間停止は無い。)が出た。これで幻覚ナイフが4つ。
18階 ゴブリン(4級)4級だが、人型で簡単な武器を使う。知能もある程度あるようだ。1メートルぐらいの背丈だが、薄汚れている。緑色の肌で禿げてる。蛙と猿の因子が基になってるようだ。目が雨蛙と同じだ。猿みたいに毛むくじゃらでは無い。耳が尖ってる。猫背だ。
ファンタジー的魔物をやっと見た感じだ。でも、かび臭いから感動とか無かった。
単体だとひ弱だが、部屋などでは、集団で襲ってくる。
宝箱は2つ。幻覚ナイフ、マジックバッグ中。これで、ナイフ5個だ。
19階 コボルト(4級)ゴブリンより少し強い。犬の頭を持つ人型の魔物だ。犬の特徴が強い。見た目は二足歩行の犬。足は犬だ。腕になってる前足は、人と同じ5本指だが、全身犬の毛が生えてる。集団で襲ってくる。武器としてナイフ持ってる。こいつら噛みつく。犬臭い。
宝箱は2つ。マジックバッグ中、万能解毒薬が10本。万能解毒薬は、毒ならすべてのタイプを治す。
根田 「20階層です。注意していきましょう。毒関係のアイテムが出てますから、何かあるかもしれません。」
20階層に来るまでに罠もあったけど、簡単な落とし穴程度ですぐわかる。見習い達も簡単に避けてた。
あ、そうだ。確認しておこう。
根田 「そう言えば、確認していませんでしたが、魔物の数はどうでしょう?」
ソコトラ 「確かに増えています。通常の倍程度です。」
増えていたのか。まあ、間引いたので、今は通常に戻ってるな。
根田 「なるほど。風魔法で確認しましたが、我々が間引いたので、現状は元に戻ったようです。」
そう言って、20階を探索した。ここも罠は、簡単な落とし穴だけだ。ゴブリンとコボルトが一緒に出てくる。下層への隠し部屋がある部屋まで来た。ここまで、宝箱は1つ。マジックバッグ大(麻袋大が300個入る。時間停止無し。)が入ってた。
根田 「ここが、この階で最後です。最後なので、私がやりましょうか?」
ソコトラ 「いえ、大丈夫です。お前たち、疲労や魔力は問題ありませんね?」
見習い達 「全然、大丈夫です!」
鑑定したけど、問題ない。じゃあ、やってもらうとしよう。
そう言って、部屋へ入っていく。
魔物は、ゴブリンとコボルト、それと大きいのが10体いるな。鑑定したら、ホブゴブリン(3級)とホブコボルト(3級)だって。上位種だな。
見習い達もレベルアップしてるから、簡単に倒した。あ、宝箱出た。中身はマジックバッグ大だ。
ここからは、俺の仕事だ。
根田 「ここからは、私の仕事です。隠し部屋は、あそこから入ります。」
そう言って、壁の天井付近を指さす。
ソコトラ 「何もないようですが。」
根田 「一度、私が開けないと他の者は、入れません。」
20階層には、他に冒険者等はいないが、部屋に立入禁止と遮音を掛けて説明する。
見習いにも言わないとね。
根田 「見習いの皆さんには言ってませんでしたが、このダンジョンは、上級ダンジョンになっています。私に原因があります。これから話すことは、他言無用でお願いします。申し訳ありませんが、行動制限と情報統制を掛けさせてもらいます。」
そう言うと、見習い達は了承したので、説明する。正体を明かすわけでは無いが。
根田 「皆神殿の者ですので、創造神エレー様が、この世界を作る前に、異世界である日本の神界”高天原”で学んだことは知っていると思います。私の一族が守る聖地は、この世界の神界”万年青”の神々を祀ってはいません。エレー様が学ばれた”高天原”の神々に感謝を示す為、”高天原”の八百万の神々を祀っています。私は聖地の責任者です。聖獣を僕としているので、気付いた方もいるかもしれませんが、私は、精霊と同様に”万年青”から、地上の管理者としての資格を得ています。立場は、大精霊達の上司になります。神託で人族の活動域の見聞に来ましたが、”高天原”の神々から、神器を授かったのです。授かった神器を光の大神殿で確認した所、魔素が大量に発生したのです。”万年青”に連絡し、世界に影響が無いよう、発生した魔素は拡散し、希釈しましたが、ここのダンジョンが少し吸収したようなのです。異世界の神々の神力で発生した魔素の為、”高天原”の神の祝福を受けている私が、一度解放しないと他の者は、21階層から下層へはいけません。あの隠し部屋の入口も私が、一度解放する必要があります。」
説明すると見習い達が驚いている。
まあ、そうだよな。信仰対象の上司なんだから。
根田 「立場は、大精霊の上司ですが、神ではなく仙人です。それに自分は聖地にいたので、精霊達に教えを乞う立場です。田舎者のおっさんなのは、変わりませんから畏まらないでくださいね。皆さんに余所余所しくされたら、泣いちゃいますよ。」
見習いに正体を明かすのは、見習い達の負担になるからね。そう言って苦笑した。
皆笑ってる。
根田 「皆さんには、ご迷惑を掛けますが、最下層まで付き合ってください。私が妄想した魔物が、具現化しているかもしれません。具現化していたら、ドロップ品は、食材か植物の種などでしょう。いたら嫌な魔物というのをイメージしたことがあるので、それが出てくると2級以上の魔物になります。魔物の対応は私がしますので、心配いりません。」
皆、嫌な顔をせず付き合ってくれるそうだ。それどころか食材が楽しみとか言ってる。
じゃあ、隠し部屋を開けますかね。
根田 「それでは、隠し部屋を開けてきます。」
皆に見守られながら、浮き上がり、隠し部屋の壁に触れる。神力が共鳴し、壁が実体から幻影になった。壁に触れたことで、情報を分析できた。
一度戻って、説明だ。空中に浮いても不思議に思われない。精霊の上司って説明したから。
根田 「入口は開きました。やはり、幻覚ナイフ(呼び方は共有した。)は、ここの鍵です。私と違って、普通は飛べませんから。幻覚ナイフを貸してください。これは、こう使います。」
ナイフに魔力を込め、壁に向かって一振りする。幻影の階段が現れる。
ナイフを返して、説明する。
根田 「この階段を上ります。私と従者は飛べますので、問題ありません。聖竜王は光龍なので、当然飛べます。」
そう言うと見習い達が、困惑している。
ソコトラ 「根田様、この階段は幻影では?」
そうだよ。説明足りなかったね。
根田 「ナイフに軽く魔力を込めて、階段に乗ってみてください。そのナイフは、魔力を込めていると幻影に乗ることができます。私が創ったブーツもあの程度の高さなら、ジャンプすれば届きますが、気を付けないと天井に頭をぶつけますから。」
そう言うと見習いが、そうっと階段に乗った。落ちるギャグは無い。
全員隠し部屋へ着いた。隠し部屋というより、通路だが。幻影の階段は消えた。
根田 「皆さん、毒無効の指輪を装備してください。聖地の者には、毒は効きません。」
見習い達が指輪を装備する。まあ、俺の創った装備で状態異常は無効化するけどね。
ソコトラ 「根田様、毒の罠があるのですか?」
あるよ。通路の一部が毒床だ。天井からも垂れてくる。下層への階段まで、一本道で毒床を踏まないと行けないようになってる。
根田 「あります。私が創った装備で状態異常は無効化しますので無くても大丈夫ですが、装備した方が良いでしょう。冒険者ギルドへは、詳細まで説明しなくていいです。上級ダンジョンになっているのを教えれば、危険は分かるはずです。冒険者は自己責任ですから、情報をすべて提供する必要は無いでしょう。隠し部屋は、自分で発見すれば良いです。見つけられないのは、力不足です。新種の魔物がいたら、それだけ教えれば十分です。」
そう言うと皆納得した。
情報はノウハウだから、タダじゃない。
俺も入場手続きで情報貰ってないからな。金儲けなら、情報料は必要経費だ。
根田 「ここからは、私が先頭で行きます。」
そう言って、進んでいく。
毒床で演技するのは忘れない。お約束だしな。
根田 「ぎゃあ!毒床だー。ノーダメージ!(ここまで、棒読み。)冷たい!天井から垂れてるので、フード被ってください。」
わざと毒の雫は受けた。皆に白い目で見られた。
止めて!お約束しただけだから。
毒床は5mほどあった。皆普通に歩く。当然ノーダメージ。
根田 「皆さん、怒らないで下さいよ。私の創った装備なら、大丈夫ですから。」
光華 「太郎様、演技するなら床で滑って、こけないと!」
ボケが足りんかったか?
黒乃 「階段まで魔物いないし、スキップして、転ぶとか必要!」
リアクションが足りないか?
玉樹 「太郎様、普通に行きましょう。悪影響です。」
竜 「太郎様、普通に行っても誰も怒りません。」
二人はボケが足りない。二人は悪影響と言う。
見習い達を見ると苦笑している。
ソコトラ 「根田様、ダンジョンなので、余りふざけるのは。根田様と一緒なので危険が無いのは、分かりますが。」
師匠さんも苦笑している。
そんな感じで緊張せずに、21階層へ降りていく。
下りた先は、セーフエリアで、広い部屋だ。教室ぐらいある。
ここで、昼食にして、一休みしたら探索だ。
何が出るかなあ。
無理やりギャグ入れました。
21階層から先を入れると長すぎるので、分けました。




