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外の子  作者: 山田太郎
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 電車に乗り込んだ金山正夫は、ドアの前にぴったりとへばりつくように立っていた。車内の様子には目もくれず、じっと窓の外を見つめながら物思いに耽っていた。

(格好悪い自分を隠す行為が格好悪いのだ。格好悪い己を隠さずに堂々とさらけ出すことは、逆にかっこいい行為なのだ……)

 ぼんやりと彼は思っていた。

 みじめな自分。汚い自分。弱い自分。

 そんな自分を隠さずに堂々とさらけ出すこと。有りのままの自分自身であること。今の自分自身とは違う自分でありたいとは思わないこと。

 金山は黙々と考えていた。

 昔、彼は友達を作ろうと頑張っていた時期があった。そしてそれは結局、挫折した。

(なぜなのだろう……)

 一時期、確かに彼は友達をたくさん作ろうと思って、色々と考えて、行動していた。そしてそれがうまくいっていた時期もあった。友達が実際に何人かいた時期もあった。それも誠実な、良い友達であった。

 しかし、その友達は彼から離れていった。それはおそらく、彼自身が変わってしまったせいだと思われた。

 一時期、金山は世界中の全員と友達になろうとした。すべての他者と友達になろうとした。他者のすべての欠点を許そうとした。

 しかし、出来なかった。

 彼はその時期に自分よりもはるかに年下の男から暴力行為を受けた。そして彼は恐怖した。はるかに年下の男を恐れた。彼は恐れて、相手のいいなりになった。

 そして、相手を憎んだ。殺したいとまで思った。

 そして、彼の巨大な夢は終わった。世界中の人間全員と友達になること。それは、出来ないことだった。

(暴力だ……いつも暴力でつまずくのだ。いつも暴力で挫折するのだ。俺は暴力で卑屈な人間に変えられて、そして暴力で憎しみのかたまりみたいな人間になったのだ。そしてことによるとまだそこから抜けられていないのかも知れないし、そもそも抜けることは出来ないのかもしれない。あれから俺はめっきり心の狭い人間になったのだ。とにかく、そんなことよりも今は金を稼ぐことが先決だ。なんでこんなどうでもいいことばかり考えるのだろう? そもそも学生時代からちゃんと勉強してこなかったからこんなことになったのだ。ちゃんと金になる勉強をするべきだったのだ。コンピューターとか経済とか法律とか、そんな感じの勉強をしてくれば良かったのだ。でもみんなそんな風に大人になってから、もっと勉強すれば良かったと思うものなんだろうな……)

 彼の考えごとは尽きることがなかった。

 電車はいくつかの駅を経て、彼が岡本圭介と待ち合わせをしている終点の駅に到着した。金山はずぶぬれの己の姿を束の間忘れて、ぶつぶつ呟きながらうつむいて、ホームに降り立った。


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