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外の子  作者: 山田太郎
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 早朝の外へと飛び出した金山正夫は、待ち合わせの駅に向かって歩き始めた。自分のアパートの最寄りの駅から電車に乗れば、早く着きすぎてしまうだろう。だから歩いていこうと考えた。しかし歩くには遠すぎる距離だ。しかし彼はそれを全然考えようとはしなかった。

 原始人のように、目的地があれば、そこに向かって歩いていく。急ぐなら、走る。常にシンプルでありたいと、彼は思う。

 歩いていくうちに、ぽつりぽつりと小雨が降ってきた。彼は気にせず歩き続けた。そしてだんだんと雨は激しくなってきた。それでも頑固にそのまま歩き続けた。

 金山は、雨に濡れることは平気だった。彼は昔、陸上競技をやっていた。その練習や試合は雨など関係なしに行われていた。

(だがしかし、びしょ濡れの姿は不自然だ。変人だと思われてしまう。それに風邪をひくし、濡れると気持ち悪い。だから仕方ない。傘を買うか……)

 すでにびしょ濡れになってしまった金山は、ようやくコンビニに入って、大きめの千円の傘を購入した。そしてようやく、待ち合わせの駅まで徒歩でいくのは、あまりにも遠すぎることに気づき、電車に乗るべく、そこから一番近くの駅に向かって歩き始めた。

(すっかり濡れてしまった……気分が悪い。今日はやっぱり家に帰ったほうがいいのではないか? やっぱり約束はすっぽかして、家でちゃんと寝たほうがいいのではないか? こんなに濡れてしまったんだから……)

 足取り重く、とぼとぼと歩いていた。

 天をうらんだ。

(なんで雨なんか降るんだ。よりによってこんな時に! なんでもっと早く傘を買わなかったんだ! すぐに買っていればこんなに濡れることはなかったんだ! まったく俺は、なんてマヌケなんだ。そもそもテレビで天気予報でも見ればすむ話だったんだ。そうだ、俺が馬鹿なんだ。天が悪いんじゃない。天は俺を虐めるために雨を降らしたわけじゃない。もっと冷静にならないと……)

 濡れた男はぶつぶつと呟きながら下を向いて、とぼとぼと歩いていた。雨はすぐにやむかも知れないと思って、なかなか傘を買わなかった。コンビニの店員と接したくなかったので、なかなか傘を買わなかった。

 駅に到着した金山は切符を購入し、ホームに向かった。

 彼は、びしょ濡れになってしまった姿や禿げ上がった頭髪を極度に恥じながら、不自然にコソコソと歩いていた。誰かを見かけるたびに、ビクリと身を震わせた。

 ホームに到着した彼は一番端っこの場所まで歩き、まるでゴキブリか何かのように、その場所からピクリとも動かず、ひらすら電車を待った。

 誰か知り合いと出くわすことを極度に恐れていた。

 いつも以上に自分がみじめに思えた。完全に欠陥人間のように思えた。

 ホームには老人や中年女性など、四人程度しかいなかった。この線を走る電車は一時間に三本程度だった。線路が一つのせいだろう。ほとんどの場合、上り下りの電車はほぼ同時に到着し、一方が出発してから、もう一方が出発するというふうになっていた。

(今日は帰った方がいいかもしれない……)

 金山は迷っていた。どちらの電車に乗るべきか。帰る方か、進む方か。

 進む方の電車が到着した。そして戻る方の電車が到着するのを待っていた。戻る方の電車が到着した。やがて両方の電車が出発した。

 金山は電車に乗らずに、相変わらずホームに佇んでいた。そして誰もいなくなったホームをふらふらと歩いた。

 自動販売機でホットのお茶を購入し、ベンチに腰かけてチビチビと飲み始めた。彼は首をゆっくりとまわし、駅に隣接している墓地をじっと眺めていた。

 また改札口から人が何人か入って来た。今度はあまり気にならなかった。

 なぜこんなにも自分のことを汚く、みじめに感じる必要があるのか?

 こんなにもいたたまれない気分になる必要がどこにある?

 たかが雨に濡れたくらいなんだろう。考えすぎるからこんなことになるのだ。意識しすぎだ。

 もっと純粋に、シンプルに、本能のまま、感じるままに生きていく。野生動物のように、単純に生きていくほうが良いのだ。その方が健康的だ。

 そんな風なことを彼は考えていた。

(がおー、がおー。野生動物! 原始人! がおー、がおー)

 金山はそう呟いて、クスリと笑った。

 電車が到着した。

 彼は、進む方の電車に乗り込んだ。


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