有名人?
ファービレジのギルドから自宅へ帰り、しばらく休憩をして、次はサドタの街のギルドへ移動した。
デスワームの件を、ギルド長のレクターに確認するためである。
いつものように受け付けには寄らず、そのまま買取倉庫へ移動して直接レクターに話しかける。
「こんにちは、レクターさん」
「よう、にーちゃん久しぶりじゃないか。
1ヶ月も姿が見えなかったんで心配したぞ」
「あぁ、それはセカンタの町の新施設の建設が忙しくて、そっちやってました」
「どんな、施設なんだ?」
「お風呂って、わかります?」
「風呂くらいわかるわい、焼いた石に水をかけて蒸気を出すやつだよな?」
「それじゃなく、湯浴みの方です」
「馬鹿みたいに、費用がかかるだろうそれは?
貴族位しかそんなことしないぞ」
「それを一般向けの、大衆浴場作ったんですよ。
来月オープンします」
「相変わらず規模のデカい事をするのぉ。
ところで今日は何の用じゃ?」
「あぁ、そうでした。
レクターさん、デスワームってご存知ですか?」
「あぁ、昼間の砂漠に出没するボスモンスターだろ」
「えっ? 知ってるんなら教えてくださいよ。
出くわす羽目になったじゃないですか」
「無事な所を見ると、うまく逃げれたようじゃな……」
「ちょっと、買取倉庫の人払いお願いしても良いですか」
「なんじゃ、急に……」
「そのデスワームを討伐してきてます。
サイズが桁違いすぎて、ここの倉庫の長さをフルで使う羽目になります。
騒動が目に見えてるので人払いを……」
「にーちゃんがそういうのなら、そうしておこう。
少し待っていろ」
レクターさんが、ギルド職員に命じて買取倉庫を関係者以外立ち入り禁止にした。
一般の人間はいなくなったが、代わりにギルド職員が次々と見学に来た。
「にーちゃん、待たせたな。それじゃモンスターを出してくれ」
建物で、一番長さが取れるスペースにデスワームを取り出した。
地面に、落ちる際、ズシンと音がして、地面が揺れた……。
「なぁ、にーちゃん。
これを、ギルドにどうしろというんだ?」
「魔石は当然のごとく、高価すぎて買取不可だ。
ラッキーインセクトの更に上位仕様だ」
「それなら、魔石は持っておくしかないですね。
デスワームの本体は、何かに使えませんかね?」
「ワシがギルド長を務めて以来、デスワームを討伐した奴はいないからな。
とりあえず、解体してみないと用途が決めれない」
「そしたら、魔石は私が引き取りますんで。
解体をお願いして良いですか? 代金は解体した後貰うということにしましょう」
「魔石はギルドが責任を持って、にーちゃんに渡すので解体が終わるまで1〜2日待ってくれ。
解体しないと、魔石がどこにあるかわからないからな……」
「えっ、そうです?」
[魔力視]で、デスワームを確認すると。
魔力を発している魔石を、デスワームの体の中程に見つけた。
「レクターさん、魔石そこにあるんで」と指を指して指示を出した。
ギルド職員が、指定した場所を解体して確認すると魔石があった。
「ギルド長、魔石がありました!!」
「お、おう……」
レクターさんから、魔石を渡された。
「なぁ、この魔石売るつもりはないか?」
「いや、さっきギルドで高額すぎて買い取れないって言ったじゃないですか。
なにかの商談にでも使いますよ。多分ね……」
「そうだな。ワシ達はこの解体分を片付けるとするよ」
「他の砂漠産のモンスターの買取も、お願いしたいんだけど?」
「この状態で、できると思うか?にーちゃん」
「デスヨネー、日を改めます」と言って、ギルドを後にした。
ギルドから出る際、やけに注目を受けていたが……気のせいだろう。
[転送魔法]で、自宅へ帰ってきた。[クリア]の魔法を使ってから自宅へ入る。
エミリーに服の件で、お礼を言わないとな。
「ただいま」「「おかえりなさい」」と、いつものように二人におかえりと言ってもらった。
「エミリーに作ってもらった服なんだけど、すごく良かったよありがとね」
「ハジメさんに、喜んでもらえてよかったです」
軽く二人の世界に入りそうになったのを見て、「むー」と言いながらシェリーがむくれてる。
「シェリーの料理も美味しかったからね」と言って、むくれるシェリーを撫でた。
「えへへー」と照れながら、シェリーは俺に抱きついてきた。
今日の出来事は、二人には黙っておこう。
ボスモンスターと、戦う羽目になったとかいうと心配されるだろうし。
「ハジメさん、シェリー、食事の用意出来てるからテーブルに着きましょ」
「「はーい」」
三人で食事のを終え、まったりと過ごしていた。
「そう言えば、エミリー大きな壺か甕とかはどこに行けば買えるのかな?」
「食器屋で、注文すればオーダーできると思いますよ」
「それなら何度か、行ったことあるな」
「何に使うつもりなんです?
この前お風呂で石鹸とかシャンプー使ったでしょ、アレを大量生産しようと思ってね。
かといって保存してないと劣化しちゃうからね、元が調味料だったりするし。
冷蔵庫のあるテナントのスペースを一つ使って、そこで製作と保存しようと思ってね。
場合によったら、シャンプーとリンスを売るのもアリだし……」
「ハジメさん、石鹸は売らないんですか?」
「石鹸を直接売っても利益少ないしね。
手間を加えないとね」
「それが、良いと思います。
石鹸は高級品ですし、国が製造方法を秘匿してるんで……」
「そうなんだ……。
お風呂で石鹸使うのまずいかな?」
「売るわけではないですし。
誰のお店か理解さえすれば国も文句言えないと思いますよ」
「あはは、国が文句言えないか知らない間に有名人になったみたいだ」
「少なくとも、[教会]と[ギルド]は把握してるみたいですよ」
「王都というより、フォース城の国王は教会の意見を聞き入れる方なので、ハジメさんの存在はすでに国王の耳に入ってると思いますよ」
「……そっか。
余計な事考えても進まないし、明日は食器屋へ行くこれで決まりだ」
……。
…………。
その日はそのまま休み。翌日に、食器屋へ向かった。
食器屋へ入ると、すぐに挨拶がきた。
「いらっしゃい今日は何を探してるんだいお客さん」
「かなりの量が入る保存用の壺が、複数欲しいんだが……。
今、お店に在庫はあるかい?」
「複数ねぇ、あるにはあるよ見ていくかい?」
「あぁ、頼む」
「それじゃ、ついてきな」と言われ、誘導されるがまま、ついていった。
「ここだよ。欲しいものがあるなら、言ってくれ。
どれも、一つ100ゴールドだ」
同じような形で、丁度いいサイズの壺が5つほど固まっていたので。
「あそこにある、5つの壺全て買います」と言って、500ゴールドを店主に渡した。
「配送は?」
「しなくて大丈夫」
バッグを叩いてから「これに入るから」と、答えた。
「それじゃ、世話になった。
壺が足りなくなったら、また来ます。そのときはよろしく」
「あぁ、また来てくれよ」と話をして、食器屋を後にした。
町で色々と見て回り、使えそうなハーブを大量買い付けして新施設へ移動した。
施設のテナントは、各店舗が忙しそうに営業開始をするための準備を始めていた。
イマイチ人気がなかった。余ったテナントスペースで、石鹸の製造スペースを作ることにした。
まぁ、必要なものは、水の魔道具と、桶と調味料とハーブと石鹸くらいか。
排水溝のある真上に水の魔道具を設置して、ひたすら石鹸シャンプーと酢リンスの製作を続けた。
うーん、簡単だな。
この作業と施設の運営業務を誰か、やってくれる人いないかな?
風呂が好きで、この施設を喜びそうな人……。一人心当たりがいるな。
今日は、キャリーはお店に来てたよな。仕事終わる前に話してみるか。




