第99話 蒼銀の翼
「……これ全部持って帰れねぇな」
バルトが巨大骨を見ながら呟く。
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アースドラゴン。
巨大。
素材量も異常だった。
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「皮だけでも重すぎる……」
リリスが息を吐く。
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マジックバッグへ詰め込む。
だが。
すぐ限界が来た。
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「もう入らない」
セイルが言う。
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「オーク一頭分じゃ無理よこれ……」
レナも苦笑する。
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現在回収済み。
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・魔石
・爪
・牙
・肉一部
・鱗一部
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だが。
まだ大量に残っている。
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骨。
肉。
巨大皮。
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「もったいなぁ……」
リナがドラゴンを見上げた。
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その時。
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カツン。
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通路奥。
足音。
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全員が止まる。
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「誰か来る」
セイルが呟く。
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直後。
白い光が近づいてきた。
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「ライト」
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松明ではない。
光球。
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現れたのは四人。
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青銀色の装備。
洗練された動き。
空気が違う。
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先頭。
長剣の男が止まる。
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そして。
周囲を見る。
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崩れた通路。
蒸気で削れた壁。
焼け焦げ。
凍結跡。
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最後に。
倒れたアースドラゴン。
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数秒沈黙。
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「……お前らがやったのか?」
男が静かに聞いた。
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「まぁ……はい」
リナが少し困った顔で答える。
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後ろの魔法使いの女性が、
戦場跡を見る。
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「火と風……
それに氷」
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「複合魔法……?」
小さく呟いた。
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大盾の男が、
ドラゴン死体を見て笑う。
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「ははっ……
C級って聞いてたんだが?」
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「やるじゃねぇか」
素直な声だった。
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神官の女性は、
バルトを見る。
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傷だらけ。
凹んだ鎧。
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「前衛が止めたんですね」
優しい声だった。
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バルトが少し照れる。
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「まぁ……
死ぬかと思ったけどな」
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その時。
剣士の男が名乗った。
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「俺はヴァルク」
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「蒼銀の翼だ」
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王都Bランクパーティ。
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空気が少し変わった。
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リナが小さく呟く。
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「Bランク……」
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ヴァルクは、
もう一度戦場を見る。
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「この規模の跡を作るC級は、
初めて見た」
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「かなり無茶しただろ」
見抜かれていた。
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セイルは少しだけ苦笑する。
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否定できなかった。
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その時。
ゴルドがドラゴン素材を見る。
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「お?
持って帰らねぇのか?」
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「もう入らなくて」
リリスが苦笑する。
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マジックバッグを軽く叩く。
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「容量限界」
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「なるほどな」
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ヴァルクが頷く。
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「まぁ、
アースドラゴンはデカいからな」
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「普通のバッグじゃ無理だ」
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レナが少し驚く。
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「Bランクでも?」
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「俺達はスキルバッグ使ってる」
フィリアが自然に答えた。
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「スキルバッグ?」
リナが反応する。
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その時。
ルシアが空間へ手をかざす。
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「スキルバッグ」
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空間が歪む。
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次の瞬間。
巨大なドラゴン素材が、
吸い込まれるように消えた。
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「えっ!?」
リリスが目を丸くする。
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「便利……」
セイルが思わず呟く。
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ヴァルクが笑った。
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「王都だと割と定番だぞ」
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「便利系スキルは高いけどな」
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ゴルドが巨大骨を担ぐ。
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「残りは俺達が回収しとく」
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「このままだと、
ダンジョンに吸収されちまうしな」
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「いいんですか?」
リナが聞く。
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「むしろ助かる」
ゴルドが笑う。
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「ドラゴン素材は何個あっても困らねぇ」
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「じゃあお願いします」
レナが頭を下げる。
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蒼銀の翼は、
手際よく素材回収を始める。
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その時。
ルシアが再び空間へ手をかざした。
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「スキルバッグ」
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巨大素材が、
次々と消えていく。
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その瞬間。
セイルの視界にだけ、
文字が浮かんだ。
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【スキルバッグのレシピを取得可能です】
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【取得しますか?】
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セイルは一瞬だけ止まり——
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(いる)
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【スキルバッグのレシピを取得しました】
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だが。
表情は変えない。
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何事もなかったように、
素材回収を続けた。
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やがて。
回収を終えた蒼銀の翼が立ち上がる。
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「また会うかもな」
ヴァルクが言う。
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「次はもう少し余裕持って戦えよ」
少し笑っていた。
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「はい」
レナが答える。
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そして。
蒼銀の翼は、
ライトの光と共に去っていった。
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静寂。
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数秒後。
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「すごかったねぇ……」
リナが息を吐く。
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「Bランクって感じだった」
リリスも頷く。
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その時。
セイルが小さく口を開いた。
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「……スキルバッグのレシピ取った」
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全員止まる。
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「えっ」
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「マジかよ!?」
バルトが叫ぶ。
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「見ただけで!?」
リリスも驚く。
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レナだけが、
少し冷静だった。
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「だから黙ってたのね」
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「初対面だし」
セイルが短く答える。
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リナが笑い出す。
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「便利系大好きすぎるでしょ!」
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否定はできなかった。




