第100話 見て覚える
蒼銀の翼が去った後。
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第三層。
静寂。
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アースドラゴンの残骸だけが、
戦闘の激しさを残していた。
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「すごかったねぇ……」
リナが息を吐く。
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「Bランクって感じだった」
リリスも頷く。
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その時。
セイルが小さく口を開いた。
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「……スキルバッグのレシピ取った」
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全員止まる。
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「えっ」
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「マジかよ!?」
バルトが叫ぶ。
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「見ただけで!?」
リリスも驚く。
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レナだけが、
少し冷静だった。
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「だから黙ってたのね」
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「初対面だし」
セイルが短く答える。
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リナが笑い出す。
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「便利系大好きすぎるでしょ!」
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否定はできなかった。
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だが。
その直後。
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バルトが急に止まる。
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「……あれ?」
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「ん?」
リナが首を傾げる。
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バルトが、
ゆっくりセイルを見る。
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「もしかしてお前の強撃って……」
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「俺から取った?」
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沈黙。
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セイルは普通に頷いた。
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「最初に見た」
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「やっぱ盗ってるじゃねぇか!!」
バルトが叫ぶ。
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リナが吹き出した。
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「えっ?
気付いてなかったの?」
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「お前知ってたのか!?」
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「最初からだけど?」
通常運転だった。
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バルト絶句。
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レナが小さくため息を吐く。
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「言ってなかったの?」
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「言ったと思ってた」
セイルが答える。
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「絶対言ってないわよ」
即否定。
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リリスが、
今さら納得した顔をする。
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「あー……
だから人の戦いずっと見てたんだ」
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「あと新しい技好きだったし」
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「便利そうだったから」
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「そこなんだ……」
リリスが苦笑する。
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バルトはまだ混乱していた。
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「待て……
じゃあスマッシュもか?」
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「いや、
あれは取ってない」
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「え?」
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「遠距離攻撃は魔法いっぱいあるから」
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「ラックに変えた方がいいかなって」
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沈黙。
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「……は?」
バルト停止。
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リナも止まる。
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「えっ?
ラックに変えるってなに?」
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セイルは普通に答えた。
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「レシピ拒否すると、
ラックが上がる」
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数秒沈黙。
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「意味わかんねーーーー!!」
バルト絶叫。
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リリスも若干引いていた。
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「なにそのスキル……」
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レナが小さく息を吐く。
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「本当に規格外ね……」
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セイルは真顔だった。
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「便利」
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「便利で済ますな!!」
バルトが再び叫ぶ。
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リナは笑い転げている。
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だが。
少し笑った後。
バルトがふと呟く。
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「……ってことは」
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「俺の強撃、
今も使われてんのか」
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セイルは即答した。
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「かなり使ってる」
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「強いし」
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沈黙。
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バルトが少しだけ視線を逸らす。
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「……そ、そうかよ」
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ちょっと嬉しそうだった。
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リリスが笑う。
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「なんか師匠みたい」
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「いや教えてねぇ!」
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「勝手に盗られてただけだ!」
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「言い方!」
リナがまた笑う。
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レナはそんなやり取りを見ながら、
小さく息を吐いた。
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「まぁ、
セイルの能力は便利だけど」
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「他人に知られすぎると危険ね」
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空気が少し変わる。
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セイルも頷いた。
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「だから初対面には隠す」
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王都。
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強者も多い。
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利用しようとする者も、
きっといる。
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だからこそ。
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フォーチュンスターだけが、
この秘密を共有していた。




